執筆陣
『美空ひばり/ナット・キング・コールをしのんで~ひばりジャズを歌う』LP 2枚組 45回転 180g重量盤/ステレオサウンド オリジナルソフトの魅力を語る62
昭和を代表する大歌手・美空ひばり。黄金期の天才歌手の妙技がリアルに甦る
昭和を代表するいちばんの大歌手、歌謡曲の女王といったら、このひとに相違ないだろう------美空ひばり。
ひばりは1937年、横浜の生まれだ。江戸っ子三代・浜っ子三日、などと首都東京にたいする港神奈川=横浜の気安さ、敷居の低さを愛でる土地柄もあるけれど、10歳になるかならないかの小学生でデビューしたひばりの歌声はたちまち庶民の心を掴み、あれよあれよの天才少女階段を駆け上りながら日本全国津々浦々でスーパーアイドルに育っていった。そして1964年、27歳の年に「柔」を歌って日本レコード大賞最高の栄誉となる大賞を獲得。みず...
執筆陣
『越路吹雪:コシジ・イン・ベラミ−ナイトクラブの越路吹雪−』SACD/CDハイブリッド盤/ステレオサウンド オリジナルソフトの魅力を語る58
みずみずしく、すこぶる居心地のいい楽曲群。時とともに忘れ去られてしまった極上級の魅力作
広くは知られざる、そうでなければ時とともに忘れ去られてしまった逸品傑物の類が、世の中にはあって、どこかで眠っているものだ。そう思わずにいられない、極上級の魅力作がここに登場。覚醒した。
それは遥か遠い1967年11月のライヴ録音『コシジ・イン・ベラミ−ナイトクラブの越路吹雪−』。SACD/CDハイブリッド仕様によるSSリファレンスレコード・デビューだけれど、オリジナルはもちろんアナログ記録。初のSACD化にあたって今回使用された音源も、アナログのマスターテープである。
1967年といえば、日本は高度成...
執筆陣
上位機の進化点を踏襲したエントリー〜ミドルクラスの雄。デノン CDプレーヤー「DCD-900NE」/プリメインアンプ「PMA-900HNE」「PMA-1700NE」
HiVi6月号・2022年夏のベストバイでは、どうやらひと休み状態で格別おおきな動きがみられなかったAVセンターに対して、オーディオコンポーネント全般の動きはけっこう活発だった。とりわけ目立って印象的なのが、デノン製品の躍進ぶりだ。これから市場に出てくる最新モデル3機種がいきなり得票上位にランクインしている。しかもCDプレーヤーDCD-900NEとプリメインアンプPMA-1700NEは、それぞれの部門第1位なのだからちょっと驚いてしまう。
残るPMA-900HNEだけは第5位にとどまったがここはやむを得ないと思う。なぜなら、第1位に収まったPMA-1700NEと同一価格帯の同一部門に属し...
執筆陣
名盤ソフト 聴きどころ紹介32/『テレサ・テン ファーストコンサート』Stereo Sound REFERENCE RECORD
ステレオサウンドオリジナルセレクション・シリーズに、テレサ・テンの稀少盤が加わった。1977(昭和52)年の春、東京・新橋のヤクルトホール(当時)で催されたファーストコンサート。アナログのテープ音源をデジタルコンバートして、SACD+CDの2枚組ディスクにまとめたアルバムだ。このシリーズのお約束どおり、SACDはシングルレイヤーの独立ディスクで、新たに起こしたDSDマスターによって全曲を1枚に収録。CDについては、別のA/Dコンバーターを通し、SACDと同一内容のPCM音源を直接制作した。
熱心なテレサ・ファンの読者諸氏だったら先刻ご承知かもしれないが、ひと月ほど前におなじタイトルのアナ...
執筆陣
柔軟に伸びていく音が快感 NS-5000の弟分が登場 YAMAHA NS-3000
フラッグシップの5000シリーズをはじめとして、このところ純オーディオのコンポーネント全般に注力しているヤマハから、プレミアムグレードといっていいコンパクトスピーカーが登場した。本体の背丈、およそ40㎝。6面ピアノブラック塗装のエンクロージャーがひときわ精緻な光沢を放つブックシェルフシステム、NS-3000である。リアバスレフ型で、入力端子はシングル接続専用。160㎜径コンケーブ(凹形)コーンウーファーと30㎜径ソフトドームトゥイーターによる簡潔な2ウェイ構成だけれど、NS-5000に続く高級機であることは一目瞭然だろう。
ウーファーもトゥイーターも、振動板はZYLON(ザイロン)織布。...
執筆陣
大型直熱管211と845のコンパチブルアンプは独エルログ製の現行出力管を搭載する。 サンバレー SV-S1628D ELROG ER845ver. SV-S1628D ELROG ER211ver.
ELROG(エルログ)は真空管のブランド名でドイツの産。それも過去の話ではなく、2016年に設立された新しいメーカーの製品である。それ以前には、別組織で軍用真空管やCRTを手がけた時代もあるとのことで、現在はハイエンド需要に見合った古典球のリメイクに注力しているようだ。ただし単なる復刻生産でないことは球の外観が示唆するとおり。中にはびっくり、トリタン(トリエーテッドタングステン)版300Bといった前代未聞の変り種も含まれる。
サンバレーのSV-S1628Dは、直熱3極管ファン向きの組立キットとして企画されたステレオパワーアンプである。組立代行による完成品も用意される。技術内容はたいへんめ...
執筆陣
テレフンケン製3極出力管RV258シングル。 特注カットコア出力トランス採用で無帰還動作。 カトレア ハイドンⅢ
長いあいだオーディオ用真空管の王様などといわれたWE300Bの流通が厳しさを増し、米国での再生産の見通しについても相変わらず透明度を欠いたままのためだろうか。ヨーロッパ産の古典的な3極出力管をつかったハイエンドクラスのアンプがぼつぼつ現れているようだ。当機もその仲間で、終段にテレフンケン銘のRV258を使用し、出力真空管無しヴァージョンも用意される。
往年の欧州球はほとんどが日本ではあまり知られておらず、元来稀少な存在なので、わずかなチャンスを逃せば雲上のマボロシで終ることにもなりかねない。好事家向きのアンプが少数供給されるだけでもけっこう。出所不明な真空管単体を購入するとしたら、それな...
執筆陣
カートリッジ/レガ Ania Pro。1973年以来の歴史を持つ英国ブランド。ガラス繊維・強化樹脂ボディのMC型Planar10では音像が迫り出し、豊かな響きで抜群の好相性
「管球王国」91号(2019年1月発行)でMCカートリッジApheta2とプレーヤーシステムPlanar 8を紹介した英国のレガ。1973年以来の歴史をもつアナログオーディオ専門メーカーだ。
今回聴いたAnia ProはMCカートリッジ。Apheta 2に準じた設計思想と機構設計を受け継ぐという、その下位モデルである。アルミ削り出しだったプラットフォームをガラス繊維の強化樹脂に変えたことが基本的な相違点のようだ。輸入元のホームページの製品写真でカンチレバー回りを覆っているコの字状の部材は、指先で脱着できる付属の針先カバー。
レガのMCはオルトフォンタイプの発展形ともいえるが、たいへんにユ...
執筆陣
ZYX 100シリーズのもっとも洗練された到達点、Ultimate 100S。精緻な音像と深い音場の流麗な表現力を聴かせる。
ZYX(ジックス)は、1986年以来MCカートリッジをつくりつづけてきたアナログ専門ブランド。長い実績を踏まえた理論解析がとてもユニークで、そのMCは基本的にオルトフォンタイプなのだが縦横無尽な独自性に満ちている。わけてもの定番トップセラー製品が100シリーズだ。
当機Ultimate100Sは、同100の発電コイル素材=6NOFCを5N銀線に変更した最新ヴァージョン。ポリカーボネートの樹脂ボディも、内部構造が見直されているということだ。
今回は、本誌リファレンスのフェーズメーションPP2000を含めて3種類のMCカートリッジを聴いた。同一条件で各々異なる個性、持ち味のちがいを比較対照で...
執筆陣
デビュー・シリーズを刷新した2ウェイモデル 弦楽楽器や木管を優しく、しなやかな音色で表現する エラック「DBR 62」
克明優美な音色表現に思わず驚く
エラックの新製品で、Debut B6.2(本邦では未発売)をベースにしたスペシャルヴァージョン。ただし台数限定などではないレギュラーモデルである。Debut(デビュー)シリーズは、名称どおりホームオーディオ向けエラック・スピーカーの入門機だ。
スペシャルヴァージョンというと、なにか付加価値をつけたヴァージョンアップ版が思い浮かぶかもしれないが、当機はそうでなく、各部の設計をつぶさに見直した別の製品になっている。共通項は16.5㎝径ウーファーと2.5㎝径ソフトドームトゥイーターによる2ウェイということだけで、それらの仕様もエンクロージュアも異なる新設計。
い...
執筆陣
マッキントッシュMA352は管球式プリ+半導体パワーのハイブリッド機。颯爽と華やかで豊麗な色彩感が聴ける。
米マッキントッシュのアンプは、パワーアンプの場合、型番が定格出力を表す。たとえばMC352なら350W×2になるわけだが、プリメインアンプにその決まりはないようだ。当機MA352は200W×2(8Ω負荷)のハイブリッドアンプで、既発売のMA252を土台にしながら大幅なパワーアップと機能の強化をはかった上位モデルである。プリアンプ部はアナログ入力専用で、12AX7と12AT7による真空管増幅。パワーアンプ部がバイポーラ・トランジスター出力のソリッドステート構成になっている。スピーカー出力はオートフォーマーを経由しない通常のダイレクトカップリングだ。
プリアンプ部はMM対応のフォノイコライザ...
執筆陣
スケールの大きな居室空間用の英国モデル 陽春の大河のような、柔らかな空気感を漂わせて聴かせる モニターオーディオ「Monitor300」
おおらかだけれど雑把にあらず。スケールの大きいサウンド
Monitorシリーズは、Platinumをはじめとするホームオーディオ向けモニターオーディオ・スピーカーの新規エントリー製品。そのトップエンドに位置する代表作が当機、Monitor300である。背丈がほぼ1mもあるリアバスレフ型エンクロージュアに、16.5㎝径のダブルウーファーと同径ミッドバス、および2.5㎝口径のC-CAMハードドームトゥイーターを組込んだ大掛かりな2.5ウェイシステムだ。
ウーファーとミッドバスの逆ドーム状コーンは金属粒子を混ぜ込んだポリプロピレンで、オレンジ色に着色されて独自の存在感を放つ。C-CAMトゥイー...