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柔軟に伸びていく音が快感 NS-5000の弟分が登場 YAMAHA NS-3000
フラッグシップの5000シリーズをはじめとして、このところ純オーディオのコンポーネント全般に注力しているヤマハから、プレミアムグレードといっていいコンパクトスピーカーが登場した。本体の背丈、およそ40㎝。6面ピアノブラック塗装のエンクロージャーがひときわ精緻な光沢を放つブックシェルフシステム、NS-3000である。リアバスレフ型で、入力端子はシングル接続専用。160㎜径コンケーブ(凹形)コーンウーファーと30㎜径ソフトドームトゥイーターによる簡潔な2ウェイ構成だけれど、NS-5000に続く高級機であることは一目瞭然だろう。
ウーファーもトゥイーターも、振動板はZYLON(ザイロン)織布。...
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大型直熱管211と845のコンパチブルアンプは独エルログ製の現行出力管を搭載する。 サンバレー SV-S1628D ELROG ER845ver. SV-S1628D ELROG ER211ver.
ELROG(エルログ)は真空管のブランド名でドイツの産。それも過去の話ではなく、2016年に設立された新しいメーカーの製品である。それ以前には、別組織で軍用真空管やCRTを手がけた時代もあるとのことで、現在はハイエンド需要に見合った古典球のリメイクに注力しているようだ。ただし単なる復刻生産でないことは球の外観が示唆するとおり。中にはびっくり、トリタン(トリエーテッドタングステン)版300Bといった前代未聞の変り種も含まれる。
サンバレーのSV-S1628Dは、直熱3極管ファン向きの組立キットとして企画されたステレオパワーアンプである。組立代行による完成品も用意される。技術内容はたいへんめ...
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テレフンケン製3極出力管RV258シングル。 特注カットコア出力トランス採用で無帰還動作。 カトレア ハイドンⅢ
長いあいだオーディオ用真空管の王様などといわれたWE300Bの流通が厳しさを増し、米国での再生産の見通しについても相変わらず透明度を欠いたままのためだろうか。ヨーロッパ産の古典的な3極出力管をつかったハイエンドクラスのアンプがぼつぼつ現れているようだ。当機もその仲間で、終段にテレフンケン銘のRV258を使用し、出力真空管無しヴァージョンも用意される。
往年の欧州球はほとんどが日本ではあまり知られておらず、元来稀少な存在なので、わずかなチャンスを逃せば雲上のマボロシで終ることにもなりかねない。好事家向きのアンプが少数供給されるだけでもけっこう。出所不明な真空管単体を購入するとしたら、それな...
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カートリッジ/レガ Ania Pro。1973年以来の歴史を持つ英国ブランド。ガラス繊維・強化樹脂ボディのMC型Planar10では音像が迫り出し、豊かな響きで抜群の好相性
「管球王国」91号(2019年1月発行)でMCカートリッジApheta2とプレーヤーシステムPlanar 8を紹介した英国のレガ。1973年以来の歴史をもつアナログオーディオ専門メーカーだ。
今回聴いたAnia ProはMCカートリッジ。Apheta 2に準じた設計思想と機構設計を受け継ぐという、その下位モデルである。アルミ削り出しだったプラットフォームをガラス繊維の強化樹脂に変えたことが基本的な相違点のようだ。輸入元のホームページの製品写真でカンチレバー回りを覆っているコの字状の部材は、指先で脱着できる付属の針先カバー。
レガのMCはオルトフォンタイプの発展形ともいえるが、たいへんにユ...
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ZYX 100シリーズのもっとも洗練された到達点、Ultimate 100S。精緻な音像と深い音場の流麗な表現力を聴かせる。
ZYX(ジックス)は、1986年以来MCカートリッジをつくりつづけてきたアナログ専門ブランド。長い実績を踏まえた理論解析がとてもユニークで、そのMCは基本的にオルトフォンタイプなのだが縦横無尽な独自性に満ちている。わけてもの定番トップセラー製品が100シリーズだ。
当機Ultimate100Sは、同100の発電コイル素材=6NOFCを5N銀線に変更した最新ヴァージョン。ポリカーボネートの樹脂ボディも、内部構造が見直されているということだ。
今回は、本誌リファレンスのフェーズメーションPP2000を含めて3種類のMCカートリッジを聴いた。同一条件で各々異なる個性、持ち味のちがいを比較対照で...
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デビュー・シリーズを刷新した2ウェイモデル 弦楽楽器や木管を優しく、しなやかな音色で表現する エラック「DBR 62」
克明優美な音色表現に思わず驚く
エラックの新製品で、Debut B6.2(本邦では未発売)をベースにしたスペシャルヴァージョン。ただし台数限定などではないレギュラーモデルである。Debut(デビュー)シリーズは、名称どおりホームオーディオ向けエラック・スピーカーの入門機だ。
スペシャルヴァージョンというと、なにか付加価値をつけたヴァージョンアップ版が思い浮かぶかもしれないが、当機はそうでなく、各部の設計をつぶさに見直した別の製品になっている。共通項は16.5㎝径ウーファーと2.5㎝径ソフトドームトゥイーターによる2ウェイということだけで、それらの仕様もエンクロージュアも異なる新設計。
い...
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マッキントッシュMA352は管球式プリ+半導体パワーのハイブリッド機。颯爽と華やかで豊麗な色彩感が聴ける。
米マッキントッシュのアンプは、パワーアンプの場合、型番が定格出力を表す。たとえばMC352なら350W×2になるわけだが、プリメインアンプにその決まりはないようだ。当機MA352は200W×2(8Ω負荷)のハイブリッドアンプで、既発売のMA252を土台にしながら大幅なパワーアップと機能の強化をはかった上位モデルである。プリアンプ部はアナログ入力専用で、12AX7と12AT7による真空管増幅。パワーアンプ部がバイポーラ・トランジスター出力のソリッドステート構成になっている。スピーカー出力はオートフォーマーを経由しない通常のダイレクトカップリングだ。
プリアンプ部はMM対応のフォノイコライザ...
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スケールの大きな居室空間用の英国モデル 陽春の大河のような、柔らかな空気感を漂わせて聴かせる モニターオーディオ「Monitor300」
おおらかだけれど雑把にあらず。スケールの大きいサウンド
Monitorシリーズは、Platinumをはじめとするホームオーディオ向けモニターオーディオ・スピーカーの新規エントリー製品。そのトップエンドに位置する代表作が当機、Monitor300である。背丈がほぼ1mもあるリアバスレフ型エンクロージュアに、16.5㎝径のダブルウーファーと同径ミッドバス、および2.5㎝口径のC-CAMハードドームトゥイーターを組込んだ大掛かりな2.5ウェイシステムだ。
ウーファーとミッドバスの逆ドーム状コーンは金属粒子を混ぜ込んだポリプロピレンで、オレンジ色に着色されて独自の存在感を放つ。C-CAMトゥイー...
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中域の音の分離が聴きどころ シリーズ最大のブックシェルフ Q Acoustics SPEAKER SYSTEM 3030i
Qアコースティクスは2006年に創立された英国の新進スピーカーメーカー。傘下にゴールドリングやQED、グラド等、ディープなオーディオブランドが名を連ねるアーマー・ホームエレクトロニクス・グループの一員だ。日本には今から数年前に紹介された。
3030iはQアコースティクス製品の中核を担う3000iシリーズの最近作。先行発売されている3050i/3020i/3010iの3モデルに追加するかたちで、今春登場したコンパクトシステムである。合計4モデルのうち、トップエンドの3050iだけフロアスタンディング型なので、価格がそれに次ぐ当機はブックシェルフ型の新たな代表選手という位置づけになる。
コン...
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音楽表現はプロ級の貫禄。MC型カートリッジ・EMT JSD Pure Black
JSD Pure Blackは、『管球王国』80号でリポートしたJSD S75の後継機である。後継機といってもマイナーチェンジ版と発表されていて、価格は据え置き。スペックも、ボディ構造の強化にともない自重が2g増したくらいで同等だ。実機をよくよく観察して発見したのは、カンチレバーとSFLスタイラスの結合法が変わったことである。旧タイプのそれを、筆者はまるで魔法のようと記した。新しいPure Blackはむしろオーソドックス。ホワイトサファイアのカンチレバー先端に孔をあけ、針先を深く植え込んである。振動質量がすこし増えたかもしれないが、感覚的には手堅く安心だ。
今回の試聴では待望の昇圧トラ...
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針先形状の異なる入門用VM型カートリッジが登場。 オーディオテクニカ VM型カートリッジAT-VM95シリーズ
オーディオテクニカから、VM型カートリッジAT-VM95シリーズのニューモデルが合計6種類登場した。これらの中にはヘッドシェル付きやSP再生専用タイプも含まれるが、今回実際に聴いたのは4機種。いずれも通常のステレオLP仕様である。
既発売のVM700シリーズ等と同様、AT-VM95シリーズのもっとも大きな特徴は交換針の互換性が保証されていること。上位モデルの交換針を装着すれば、簡単にアップグレードが愉しめることになる。4機種の価格はというと、8千円から3万3千円までけっこうな差がついている。けれど交換針部を除く本体の仕様はまったくイコールなのだ。ただし、実機の銘板にはそれぞれの型名がきち...
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名盤ソフト 聴きどころ紹介14/『美空ひばり』 Stereo Sound REFERENCE RECORD
美空ひばりは、いわゆる歌謡曲の黄金時代を2段ステップで駆け登り、頂点を極めた昭和の一大流行歌手である。
2段ステップという意味は、筆者の耳の勝手な判断によればの話だけれど、ひばりの歌にはふたつの時代があったと思うからだ。
ひとつ目は、昭和24年の「河童ブギウギ」から同32年「港町十三番地」に至る天才少女時代。ふたつ目が昭和40年のレコード大賞受賞曲「柔」や、翌年の「悲しい酒」で不動の評価を確立して以後、女王の座を保持し続けた堂々たる大人の時代。そしてふたつの時代を結ぶ過渡期、といったら礼を失するかもしれないが、昭和35年には「哀愁波止場」でレコード大賞の歌唱賞を獲得したり、同37年に日活...