執筆陣
シリーズを刷新の米国製MI型カートリッジ。 グラド Opus3,Prestige Red3
米国ニューヨーク州ブルックリンにあるグラドは、3世代にわたるフォノカートリッジの名門ブランド。ティファニーの時計技師だったジョセフ・グラド氏が自分でフォノカートリッジを製作し、1953年にグラド・ラボラトリーズを設立したのがスタートだ。
今回はTimbreという中級クラスのオーパス3と、安価なプレステージ・レッド3を聴いた。ともに発電方式はMI(ムービングアイアン)型に分類されるが、磁性材の軽量円盤を動かすというグラド独自の構造。銅線が巻かれた、左右合計4本のポールで発電するという仕組みである。
オーパス3はメープル材ハウジングを採用し、ここで聴いたのは4mVの高出力タイプ。他にインダン...
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オーディオテクニカのヘッドホンアンプ「AT-BHA100」とD/Aコンバーター「AT-DAC100」は、小型ながらも鮮度が高く上品な音色が特徴
オーディオテクニカから真空管を搭載したバランス対応ヘッドフォンアンプのAT-BHA100と、高性能DAC素子を採用するD/AコンバーターのAT-DAC100が登場。同社は超弩級のAT-HA5050H(国内未発売)や小型のAT-HA22TUBE(生産完了)で真空管を扱うノウハウを蓄積してきた。
Headphone Amplifier
オーディオテクニカ
AT-BHA100
オープン価格(実勢価格12万円前後)
●ヘッドフォン出力:4系統(Φ6.3mm標準フォーン×2、XLR、Φ4.4mmバランス)
●LINE出力:1系統(RCAアンバランス)
●LINE入力:2系統(RCAアンバランス、X...
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デノン「DL-A110」 DL-103+放送局用再現シェルの記念モデル。 厚い音調とノスタルジックな外観で安堵させる
驚異的ロングセラーを忠実に復刻
昨年、デノンは創立110周年を迎えたという。のちに日本コロムビアとなる日本蓄音機商会が誕生した、明治43年(1910年)を起点に数えた年数である。
ここで紹介するのは、記念モデルとなるDL-A110。日本コロムビアがNHKの協力を得て開発した放送局用フォノカートリッジであるDL-103を、往年の放送局用トーンアームのヘッドシェル(復刻)と組み合わせたもの。DL-103がコンシューマー市場に発売されたのは1970年。ステレオの国産MC型フォノカートリッジの標準原器というべき、驚異的ロングセラー製品である。
DL-103は単売品と同じなので、ヘッドシェルを観察...
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フルバランス伝送対応のデュアルモノ半導体プリ。 オーロラサウンド PREDAⅢ
オーロラサウンドを主宰する唐木志延夫氏は、楽器を創る職人のように素子と回路にこだわってデザインする人物。オール半導体プリアンプのPREDA(プレダ)は、新設計の3世代目となるPREDAⅢへと進化した。300B真空管をプッシュプルで駆動するPADA300B(2019年)が奏でる美音が、唐木氏に新型プリアンプの開発を促したに違いない。
PREDAⅢでは音量調整にアルプス製の最高級品を奢った。しかも、フルバランス伝送のために最大規模の4連構成を採用。この真鍮削り出しの大型可変抵抗器は、音質の良さとともに操作感の好ましさで世界的に定評がある。ちなみに、本誌リファレンスのエアータイトATC5は同型...
執筆陣
VPI Prime Signature 重量級設計に高感度アーム搭載の米国モデル。 ダイレクト盤では見事な臨場感で鬼気迫る再生
米国製アナログプレーヤーの老舗的存在
VPIインダストリーズ社は、家族経営を貫く米国製アナログプレーヤーの老舗的な存在。紹介するプライム・シグネチュアはプライムシリーズの最高峰で、インバーテッドベアリング構造のスピンドルシャフトが与えられた重厚長大指向の新製品。9kgのアルミニウム製プラッターはステンレススチール材と組み合わせて振動モードを分散している。キャビネットは厚いアルミニウム板を樹脂ラッピングした2枚のMDF材で挟む構造。剛性と内部損失をともに高めている。同社伝統といえるワンポイント支持のJMW10-3Dトーンアームは、可動部分のアームワンドが3Dプリンター技術による一体化製造。...
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マーティン・ローガン「ElectroMotion ESL X」 一世を風靡した米国発祥の静電型スピーカーが再上陸。 優れた応答性と透明感は軽量振動板ならでは
超軽量振動板(振動幕)ならではの応答性に優れた透明感のあるサウンド
久しぶりの静電型である。マーティン・ローガンは、スピーカーらしからぬルックスと水平指向性の広い静電パネルで一世を風靡した米国発祥のブランド。金属コーティングを施した透明振動幕を縦方向に張ることで湾曲面を構築している、ひじょうに巧妙な設計だ。現在は研究開発を米国で行ない、カナダで生産されている。ここで紹介するEM-ESL Xはスリムな静電パネルが特徴で、前後に配した約20㎝口径のダイナミック型ウーファーが400Hz以下の低音域を担当する、ハイブリッド構成となっている。管球王国試聴室で音を鳴らしてみた。
超軽量振動板(振動幕...
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MASTAZオーディオプロジェクトの「MCB5040L-TK」はラックスマンPD171A専用のダブルアーム・ベース。MDF製で安定性に優れ、高級カートリッジの実力を存分に引き出す
フォノカートリッジがいくつかあると、音楽ジャンルや音質傾向を考えて使い分けたくなる。そんなときはダブルアーム仕様のアナログプレーヤーが便利なのだが、市販製品はシングル構成がほとんど。そこで考えられたのが、簡単にダブルアーム環境を実現できるMASTAZ(マスタツ)のコネクションベースセットだ。ここで紹介するのは、ラックスマンのPD171Aにジャストフィットする専用設計のMCB5040L-TKである。定評あるイケダのダイナックバランス型IT407CR1ロングアームを装着して、その音を本誌試聴室で検証してみた。
MCB5040L-TKは、厚いMDF製ベースにアームベースのユニットを連結させた構...
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磁気回路が刷新されたMC型のARTシリーズ。 オーディオテクニカ AT-ART9XI,AT-ART9XA 2機種同時に発売
オーディオテクニカは、MC型フォノカートリッジの最高級ラインにARTの名称を冠している。本年6月に同社は2機種のARTを同時に発売した。両機ともART9Xのネーミングが共通で価格も15万円と同一。AT-ART9XIは従来のART9から刷新した鉄芯タイプのフラッグシップ機。型番末尾のIはアイアン=鉄芯を意味している。いっぽうのAT-ART9XAは、ART7からの大幅改良モデル。型番末尾のAはエアー(空気)で空芯を意味しており、非磁性のポリマーを巻き枠にしている。0.12mVの出力電圧だったART7に対して、ART9XAでは巻き枠を大型化することで0.2mVと大幅アップを実現。
両機とも発電...
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堅実な物作りで定評があるPro-Jectのレコードプレーヤー「X2」は力強く厚手の音を聴かせる。同時期発売のMC型フォノカートリッジ「PICK IT DS2 MC」は音の立ち上がりが俊敏だ
音楽の都ウィーンに本社を構えるプロジェクト・オーディオシステムズ社(1991年創業)は、質実剛健かつリーズナブルな価格設定のオーディオ機器を製造している。なかでもアナログプレーヤーは得意分野で、ここで紹介する新製品のX2はMM型フォノカートリッジを付属しながら17万円という、お買い得なベルトドライブ機だ。
フォノカートリッジはデンマークのオルトフォンとの協業で、音決めはプロジェクトが行なっている。本機のベースは2Mらしく、楕円針と丈夫なDJ用カンチレバーを組み合わせたもの。出力は7mVもある。トーンアームはカーボン/アルミの2重構造で共振を減らしており、9インチ長。軽量で高感度なストレー...
執筆陣
ブリンクマンのフォノイコライザーアンプ第2世代機「Edison MkⅡ」は、声色の生々しさが印象的で立体感も豊か
独ブリンクマンを主宰するヘルムート・ブリンクマン氏は、真空管と半導体それぞれのよさを知り尽くしている。ここで紹介するエジソンMkⅡは、同社フォノイコライザーアンプの第2世代機。3系統ある入力のうち2系統はバランス/アンバランスが選択でき、合計4本のテレフンケン製(NOS)PCF803を搭載する、バイポーラ・トランジスターとのハイブリッド増幅回路が特徴である。ガラス天板からは、整然と並ぶ良質の素子が窺える。出力はXLR端子が1系統のみだ。
本誌試聴室のリファレンス・プリアンプはエアータイトATC5でアンバランス入力である。そこでXLR→RCAアダプター(3番コールドは非接続)を用意して音を...
執筆陣
MCヘッドアンプをバイポーラ型で新設計して バランス入力に対応する半導体式フォノEQ。 アキュフェーズ C47 登場
アキュフェーズから新型のフォノイコライザーアンプC47が登場した。オリジナルのC27(2008年)、そしてC37(2014年)の後継機として設計されたこのC47は、同社初のバランス増幅フォノイコライザーアンプ。デュアルモノの構成で、増幅回路には配線パターンに金メッキ処理を施したガラス布フッ素樹脂基板が使われている。
MM型の回路から見ていこう。興味深いことに、入力信号は最初にJFET素子による専用設計のヘッドアンプ回路(20dB)を経由する。主たる目的は後続の増幅回路へのバランス信号変換で、キャパシタンス値は未公表だが固定されているようだ。入力負荷は、1kΩ/47kΩ/100kΩから選択...
執筆陣
ブリンクマン「Taurus」自社製モーターでDD駆動し、抜群のS/N感で高精細な音に。
私はダイレクトドライブ(DD)方式ターンテーブルを支持するオーディオファイルだが、今ではモーターを自社開発できるメーカーが少ないことを嘆いている。本格派のDDモーターといえるのは、世界中を見渡しても日本のテクニクスとドイツのブリンクマン、そして同じくドイツのSTSTくらいだ。
ここで紹介するブリンクマンのトーラスは、同社バルドの上級機にあたるスケルトンタイプのターンテーブル。慣性質量を重視した形状のプラッターは10㎏で、アナログ盤との接地面は平面性の高いガラス製だ。中心部分で盤を浮かせてクランパーで押し付けることにより、面ブレの少ない平面状態を得ている。同社には2機種のDD方式ターンテー...