執筆陣
ソナス・ファベール「MINIMA AMATOR Ⅱ」木質感溢れる意匠に相応しい、親しみ深い音調のバスレフ型2ウェイ2スピーカー。
ソナス・ファベールを創業したフランコ・セルブリン氏は、一度だけ日本を訪れている。そのときに会った私は「小型機のミニマが奏でる音が一番好きです」と告げたところ、彼は「実は私もそうなんだ」と微笑んだ。
ここに登場するミニマ・アマトールⅡは、ミニマより僅かに大きいオリジナル機の雰囲気を忠実に醸し出している注目機。一足先に発売されているエレクタ・アマトールⅢはボトムが白い大理石製であるが、本機は4面すべてがウォールナット材になっている。
適合するスタンドは2種類あり、ここでは「Carrara Stand」を使って聴いた。本誌試聴室で鳴らしたミニマ・アマトールⅡは、キビキビと反応の良い美音を奏でて...
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一体型管球プリアンプ、マッキントッシュC2700。丁寧な質感描写に加え、なによりもマッキントッシュらしい風格が漂う
マッキントッシュのC2700は、人気の高かったC2600をブラッシュアップした新しい管球式プリアンプだ。使われている真空管はC2600と同じく、12AX7Aが5本に加えて12AT7が1本。両機のスペックを比較するとMM/MC対応のフォノイコライザー回路のS/N比が5dB以上も改善されており、DA2と呼ばれるDAC回路がアップグレード対応のモジュールになっているのが大きな相違点である。DA2はUSB入力で22.4MHzまでのDSDと384kHz/32ビットまでのPCMを再生できる、きわめてハイスペックな内容。2系統の同軸と光のデジタル入力端子があり、同社製SACDトランスポートと接続できる...
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筐体強化と音質チューニングが施された1ビット・ディスクリートDAC搭載の特別仕様。 マランツ SA12 OSE
アンプやデジタルプレーヤーなどの主力機種に音質向上策を講じたSE(スペシャル・エディション)という特別仕様は、多くのオーディオメーカーが手掛けている。その先駆けとなったのは、マランツが30年前の1990年に発売したインテグレーテッドアンプのPM80SEとCDプレーヤーのCD66SEだったいう。さきごろマランツはSEの先駆者という主張を込めて、OSE(オリジナル・スペシャル・エディション)と名付けたインテグレーテッドアンプのPM12 OSEとSACDプレーヤーのSA12 OSEを発売した。ここではSA12 OSEの試聴リポートをお届けする。
ベースとなったSA12は、MMM(マランツ・ミュ...
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堅牢な密閉型エンクロージュアと高剛性振動板、米国マジコ流儀を凝縮させた小型2ウェイ機「A1」。 濃密かつ解像感に優れ、声色の自然さが見事
声色の自然さは見事、小型機とは思えないほどの臨場感で愉しませる
米国マジコのM3を愛用している私にとって、リーズナブルな価格帯で登場したAシリーズは嬉しい驚きだった。堅牢な完全密閉型エンクロージュアと多層構造の軽量かつ高剛性の振動板、そしてベリリウム振動板のドーム型トゥイーターといった各部の特徴と、解像感に優れた濃密な音の語り口など、いずれもマジコらしい特徴を備えていたからだ。
2ウェイ・ブックシェルフのA1は、製造完了になって久しい高級機Q1と似たようなプロポーションであるが、Q1のようなスタンド固定ではなく、置き方の自由度をアピールしている。本機の試聴にはマジコが推奨する米国サウンド...
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超弩級オールホーン型スピーカー、エアーパルス3.1設計者の最新小型機 『A80』【Stereo Sound・SOUND SCOPE】
フィル・ジョーンズ氏によるハイレゾ対応アクティヴスピーカー、A80が登場した。彼の名前とブランドで、ピンとくる本誌読者も多いのではないだろうか? そう、伝説的なアコースティックエナジーAE1の設計者にしてステレオサウンドの表紙を飾った巨大なホーン型スピーカー、Air Pulse 3.1を造りあげた、サウンドデザイナーのフィル・ジョーンズ氏だ。ベース奏者としても知られる彼は、PJB(フィル・ジョーンズ・ベース)というベースアンプ群を展開して楽器業界でも成功を収めている。もちろん、オーディオの世界を忘れたわけではなく、自身が得意とする小型モニタースピーカー中心に開発を続けてきた。
ここで紹介...
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ZYXカートリッジ Ultimate天空X、映像感覚の鮮明な音が印象的
ZYX(ジックス)を主宰する中塚久義氏は、オルトフォンのMC20を設計した技術者としても知られる人物。このアルティメイト・天空(アストロと読む)は最高峰MC型フォノカートリッジである。配線材はモデルによって6N無酸素銅線と5N純銀線、24k純金線の3種がある。試聴機として用意されたのは6N無酸素銅線仕様のXだ。
発電コイルの後方にダンパーがあるのが一般的な構造だが、本機は両側にダンパーを置いたシンメトリー構造がユニーク。マイクロリッジ針にC1000カーボン複合材カンチレバーを採用するなど、多岐にわたるZYXの独自技術を結集させた特徴の多いハイエンド機だ。前方に置かれた石球はラピスラズリ製...
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チタン製スケルトンボディのモノ専用カートリッジとルンダール製トランス採用のMC昇圧トランス。先鋭的モノーラル再生 オルトフォン MC A Mono,ST-70
モノーラル用フォノカートリッジには2種類がある。ひとつはモノーラル装置で聴く1回路出力の製品だ。現行機ではデノンDL102がそれにあたる。もうひとつは、ステレオ装置で再生する2回路の独立出力を備えた製品。ここで紹介するオルトフォンのMC A Monoは後者の新製品である。
情報量の豊かさが印象的な、新鮮で現代的な音を聴かせる製品だ。無垢ダイア針は独自の「レプリカント100」。標準的な丸針とは対照的な、攻めている設計といえよう。カンチレバー素材はボロンで、配線材は6N高純度銅線に金メッキを施したオーキュラム(Aucur-um)である。筐体は精密な3D金属プリンターでチタニウム粉末から成型(...
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英国の老舗オーディオ専業メーカーレガによるスケルトン・ボディのトップグレード機。 レガ Planar 10 with Apheta 3
小粋でコンパクトなオーディオ機器を作らせたら、英国の老舗はピカイチの存在だ。ここで紹介するレガは、1970年代からあるオーディオ専業メーカー。創業者のロイ・ガンディ氏が現在も牽引している稀有な英国企業である。レガの存在を一躍有名にしたアナログプレーヤーのプラナー3は1976年に登場した。私は学生時分に秋葉原のオーディオ販売店で見かけたことがある。息の長いオーディオメーカーのひとつである。
ベルト駆動方式のプラナー10は同社最高級機で、専用の電源部を備えている。本機は2018年に発表された究極のナイアッド(Naiad)というプロダクトを発展させた製品のようで、抜群の工作精度で仕上げた高剛性...
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伝統のGT思想を復活させたアナログ新鋭機。 YAMAHA「GT-5000」 重量級大径プラッターを正弦波で正確に駆動、荘厳かつ高品位で盤石の鮮やかさを表現する
復活が期待されていたヤマハ「GTシリーズ」
かつてのGT-2000がクォーツロックのDD方式だったのに対して、新しいGT-5000はサーボ回路と決別した、ACシンクロナスモーターによるベルトドライブ機として登場。正反対というべき大きな設計の転換は、荘厳かつ高品位な音として結実している。
2重構造の大型プラッターは、慣性モーメント(慣性質量=イナーシャ)が0.92t/㎠、強大な値を実現しているという。それによる安定した回転を維持するために、24極2相の小型ACシンクロナスモーターに供給する交流電源は水晶発振に基づく正確な正弦波で作り出され、回転数を算出して供給電源を制御するサーボ回路は持っ...
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フェーズメーションEA550 & T1000試聴。モノーラル筐体らしい深遠な音場空間に、立体的な音像が浮かぶ
フェーズメーションはアナログ再生機器に注力しているオーディオメーカーだ。新製品のフォノイコライザーEA550と昇圧トランスT1000は、ともに同社の最高級機で確立したモノーラル筐体構造を採用している。グラウンド線の接続が必要になるけれども、ステレオ音場の拡がりとセパレーション感など筐体を左右独立とした利点は大きい。背面にある端子群は結線のしやすさを考えた配列で、単純なモノーラル筐体ではないというコダワリが見て取れる。
本誌試聴室のシステムはエアータイトのATC5プリアンプとATM3パワーアンプ、そしてB&W800D3モニタースピーカーである。それにテクニクスSL1000Rアナログプレーヤ...
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ラックスマン CL1000 滑らかで浸透力がある深い音場感を再現
かねてから開発中と囁かれていた、ラックスマンのフラッグシップ真空管プリアンプが遂に完成した。CL1000と命名された堂々たる新製品が本誌試聴室に持ち込まれた。同社90周年を飾るステレオパワーアンプMQ300と純正コンビネーションを組む、待望のプリアンプである。フォノイコライザー回路はなく、ラインレベル入出力に徹している。
最大の特徴は、本機のために新開発されたファインメット・コア採用の大型トランスフォーマー式アッテネーターを搭載したこと。抵抗器による信号減衰ではなく、巻線比による低損失な音量調整の手法である。
この大型トランスフォーマーは、34タップで左右独立。高信頼性のリレー素子を介し...
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オルトフォン MC Anna Diamond 極めつけの解像感と繊細な表現力を両立した空芯MC型フォノカートリッジの最高峰。
MCアンナは、オルトフォンの高度技術を結集した空芯MC型フォノカートリッジの最高峰である。このたび、ダイアモンド製カンチレバーが奢られたMCアンナ・ダイアモンドが上位に加わった。創立100周年記念として世界限定100個がすぐに完売した、ザMCセンチュリーのカンチレバーが与えられたのだ。ボロン製カンチレバーを搭載するオリジナル機の音質も素晴らしいけれども、単結晶の無垢ダイアモンド製カンチレバーの物性が効いて音の品位は一変している。内部インピーダンスは6Ωで出力は0.2mV。ダンパーゴムの最適化に伴い、MCアンナよりも0.2グラム軽い2.4グラムの適正針圧になっている。
テクニクスSL100...