執筆陣
中国の巨匠チャン・イーモウを前に大失態も、ご機嫌な笑顔に一安心。最新作『ワン・セカンド』は原点回帰の必見作【映画スターに恋して:第22回】
ノスタルジーと映画愛にあふれる『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』
2019年の第69回ベルリン国際映画祭で、コンペティション部門に選出されたにも関わらず、開催直前に突如キャンセルとなったチャン・イーモウ監督の『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』(20年)。キャンセルの背景には、日に日に厳しさを増す“映画への検閲”があることは想像に難くないけれど、それでも2021年のトロント国際映画祭の上映で好評を博したこともあって、やっと日本公開が迎えられたことを、素直に喜びたい。
そう、原点に立ち返るというか、文化大革命を体験した“第五世代”監督の真髄は健在! これまでチャン・イーモウ作品を観続...
執筆陣
【コレミヨ映画館vol.76】『ハケンアニメ!』世のなかにはもしかして魔法があるのかもしれない。物づくりの労苦と喜びを伝える胸熱ムービー
映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第76回をお送りします。今回取り上げるのは、アニメ業界の裏側を熱い視点で描いた『ハケンアニメ!』。吉岡里帆演ずる斎藤瞳の奮闘に共感したい。とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
【PICK UP MOVIE】
『ハケンアニメ!』
5月20日(金)全国ロードショー
タイトルの“ハケンアニメ”とは、覇権アニメのこと。2010年代の中盤まで数年間ほどネット掲示板を中心に流行した言葉で、各クールに放映されたアニメで最も人気のあった作品のこと...
執筆陣
結成40周年。ノルウェーから世界に飛び出した男性3人組ポップス・ユニットの軌跡を追ったドキュメンタリー作『a-ha THE MOVIE』公開
今年1月開催予定の来日公演がコロナ禍で中止になり、気分が盛り下がっていた皆さんに朗報だ。
と同時に、1980年代、日本人がまだ洋楽をごく普通に聴き、人気歌番組にも当たり前に来日アーティストが出ていた頃の、なんともいえない芸能の輝きを個人的に思い出し、「この時代の持つキラキラ感を、次世代にも疑似体験してほしい」と強く思った。そのとっかかりのひとつとしても、『a-ha THE MOVIE』は歓迎される一作といえるのではなかろうか。しかもこの2022年は、a-haの結成40周年にあたるのだ。
数多くの代表曲を持つa-haだが、その頂点として圧倒的に光り輝いているのが、「テイク・オン・ミー」(1...
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【コレミヨ映画館vol.75】『N号棟』世と死の間をさまよう危険な物語。近年のJホラーの拾いもの
映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第75回をお送りします。今回取り上げるのは、Jホラーの新たな境地を開いた『N号棟』。心理的に追い詰められていくさまをぜひ、劇場の大スクリーンで、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
【PICK UP MOVIE】
『N号棟』
4月29日(金・祝)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
真夜中に誰もいない部屋から聞こえるざわめき。チャンネルが勝手に切り替わってしまうテレビ。何者からのメッセージのように、勝手に開閉をくり返すドア。
...
執筆陣
伯父と甥が“人間対人間”として心を開き合う。穏やかで暖かな、ホアキン・フェニックス主演作品『カモン カモン』
ホアキン・フェニックスが大ヒット映画『ジョーカー』(アカデミー賞・主演男優賞を受賞)の次に選んだ作品、というだけで鑑賞意欲が倍増する。『カモン カモン』は、心臓に衝撃が来るような内容だったあちらとは対照的で、観ているうちに心が暖まってくる。モノクロの画面、落ち着いた音響(“ザ・ナショナル”の双子兄弟、アーロン・デスナーとブライス・デスナーが担当する音楽も含めて)、クスッと笑わずにはいられない会話の数々などなど、実に穏やかだ。『ジョーカー』にはニューヨークを模したのであろう都市が登場していたが、こちらには実際のニューヨークも登場する。
ホアキン扮するジョニーはニューヨークを拠点とするラジオ...
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ザッパの前にも後にもザッパなし。稀代のロック・アーティストの実像に迫る圧倒的な128分。映画『ZAPPA』、4/22より公開
自分にとって最高の音楽鑑賞体験を与えてくれるアーティストのひとりがフランク・ザッパだ。さまざまな音楽の要素がグツグツと煮込まれて、開いたことのない扉へと案内してくれる。
ザッパの名を聞くとすぐ、反射的に「ダンスに服はいらない」、「水を黒くしよう」、「シャリーナ」、「グレッガリー・ペッカリー」、「オー・ノー」等のメロディが頭をかけめぐる。英語ネイティブのひとにいわせると、ザッパは歌詞がメロディと同じように重要らしいから、自分はその魅力の半分しか味わえていないことになるのかもしれないが、それでも充分気持ちいい。ポール・マッカートニーやエルトン・ジョンみたいに、世界を魅了するようなロマンティッ...
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【コレミヨ映画館vol.74】『バーニング・ダウン 爆発都市』2017年の『SHOCK WAVE 爆弾処理班』の続篇。でもストーリーもVFXも大きくグレードアップ!
映画評論家 久保田明さんが注目する、きらりと光る名作を毎月、公開に合わせてタイムリーに紹介する映画コラム【コレミヨ映画館】の第74回をお送りします。今回取り上げるのは、香港映画界を牽引しているアンディ・ラウ主演の『バーニング・ダウン 爆発都市』。オープニングからタイトル通り爆発のオンパレードという。60を超えてもアクション全開の彼の姿を、とくとご賞味ください。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
【PICK UP MOVIE】
『バーニング・ダウン 爆発都市』
4月15日(金)より、シネマート新宿・心斎橋ほか全国ロードショー
中国、香港合作という表記になっているけれど、印象...
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“少年時代の輝き”と“紛争の恐怖”が絶妙な塩梅で同居する『ベルファスト』、ケネス・ブラナー監督はアカデミー賞獲得なるか【先取りシネマ 第20回】
のんびりと平和な光景が一転、阿鼻叫喚の地獄絵図に
オープニング。カラー画面で、現在のベルファストの街並みが映し出される。やがて(1960年代から1998年の和平交渉の時期に描かれた)「平和の壁」の壁画が映しだされると、カメラが上がって、壁の向こうに広がるプロテスタント教徒たちが多く住む移住区をモノクロでとらえる。現在はカラー、郷愁に満ちた過去の世界はモノクロなのだ。
15th Augusut 1969。ふたつの時代をつなぐヴァン・モリソンのオリジナル主題歌「ダウン・トウ・ジョイ」が流れるなか(いい曲、いい歌声だなあ)、通りで遊び、くつろぐ町民たちの姿が描かれる。
フットボールの球を追いか...