執筆陣
ルパン三世やジャッキー・チェンも惚れるジャン=ポール・ベルモンド、傑作選を仕掛けたのは『ムトゥ 踊るマハラジャ』の第一発見者だった!【先取りシネマ 第12回】
男の中の男、ベルモンドの魅力を堪能できる8作品が公開中
観ればわかる。「ルパン三世」や「コブラ」のキャラ・デザインのモデルになり、ジャッキー・チェンのアクション・スタントにも多大な影響を与えたフランス男優ジャン=ポール・ベルモンドの主演8作品が、HDリマスターされた美麗なニュープリントでおよそ半世紀ぶりに劇場公開される。
権利の関係でTV放映されることが少なく、大半はDVDソフトにもなっていない幻の作品ばかり。当時劇場に脚を運んだひと、アラン・ドロンと共演したギャング映画『ボルサリーノ』(1970年)などに見とれた貴方はもちろん、ジャン=リュック・ゴダール監督と組んだヌーヴェルヴァーグ時...
執筆陣
クリストファー・ノーラン最新作『TENET テネット』はトンデモ映画!? 恐ろしいほどの発色と見晴らしは絶対にIMAXで“体験”すべし【先取りシネマ 第11回】
新型コロナで世界中が揺れるなか、勝負に出たクリストファー・ノーラン
『ダークナイト』『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』などでこの10数年の映画界を牽引してきたクリストファー・ノーラン監督の最新作『TENET テネット』が9月の18日、いよいよ日本公開される。
世界の映画界を停滞させる新型コロナ・パンデミックのなかで、米国での公開日も再々延期され、欧州、中東、東南アジアから一週間ほど遅れる9月3日になった。
リスクを回避し、さらに公開時期を延ばす考えもあっただろう。『インセプション』の1億6,000万ドル、『インターステラー』の1億6,500万ドルをしのぐ2億500万ドル...
執筆陣
『イップ・マン 完結』で“最高のドニ―・イェン”もついに見納め。ブルース・リーの怪鳥音も轟くファン必見の1本!【先取りシネマ 第10回】
香港映画界を生き抜いてきた伝説のスタッフが揃う
最後に「劇終」の文字が出たときに、心のなかで終わらないでくれー! と叫んだよ。いまでは数少ないものになってしまった広東語で語られる、香港映画らしい香港映画。
いいシリーズだったなあ。ドニー・イェン最高の当たり役だったともいえる。『イップ・マン 序章』(2008年)でスタートしたイップ・マン・シリーズの最終第4作。ファンはシリーズを順番に観てきているだろうけど、簡単に振り返ると実在の中国武術家・葉問(1893年~1972年)の半生を描く過去の3本はこんな感じで進んできた。
『イップ・マン 序章』(2008年/日本公開2011年2月)
1938...
執筆陣
若き天才グザヴィエ・ドラン、錚々たる演者を揃えて初の英語作品『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』に挑む【先取りシネマ 第9回】
「恐るべき子ども」と呼ばれた彼が追い続けるテーマとは
2009年、20歳になったばかりのときに、母の愛への渇望と拒絶を描いた第1作『マイ・マザー』を演出、脚本、主演、製作で発表。カンヌ映画祭で評判を呼び、その後も創意に富んだ意欲作を放ってアンファン・テリブル(恐るべき子ども)と呼ばれたグザヴィエ・ドラン7本目の監督作品『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』が公開される。
1989年3月20日、フランス語文化圏であるカナダのモントリオール生まれ。今年31歳になるドランのキャリアは、1.演出と主演を兼ねたもの(『マイ・マザー』『胸騒ぎの恋人』『トム・アット・ザ・ファーム』)、2.演出のみのもの(...
執筆陣
アカデミー賞も視野に入る『ジョジョ・ラビット』、“ナチスシンパ”の10歳の少年の目を通してユーモアたっぷりに戦争を描く【先取りシネマ 第8回】
トロント国際映画祭で大賞を受賞!
毎年9月にカナダで開催されるトロント国際映画祭。特徴は大賞のピープルズ・チョイス・アワードが来場者の投票によって選ばれる観客賞であることだ。
この10年間の受賞作には『英国王のスピーチ』『それでも夜は明ける』『ルーム』『ラ・ラ・ランド』『スリー・ビルボード』『グリーンブック』と、翌年のアカデミー賞を席巻した話題作がズラリ。そのためオスカーに最も近い映画祭といわれている。
ノア・バームバック監督のNetflix配信作品『マリッジ・ストーリー』やポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』と競い、2019年の同賞に輝いたのが、タイカ・ワイティティ監督による...
執筆陣
殺人ピエロと“負け犬クラブ”、27年越しの死闘のゆくえは──『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』【先取りシネマ 第7回】
故郷を離れ、別々の時間を生きていたメンバーだったが……
前作『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』でも、この続篇『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』でも、観たひとは“IT”(それ、ヤツ)とは何だったのかと考えるだろう。
1989年の夏から、27年後の2016年に。“ルーザーズクラブ(負け犬クラブ)”の7人は40代になり、それぞれの人生を送っている。
殺人ピエロ、ペニーワイズに弟をさらわれたビルは、ホラー小説家&映画脚本家として(ジェームズ・マカヴォイ)。父親から性的虐待を受けていたベヴァリーは、服飾デザイナーとして(ジェシカ・チャステイン)。おしゃべりな...
執筆陣
実話ベースの必見サスペンス『ホテル・ムンバイ』&『エンテベ空港の7日間』―憎しみと暴力の果てに血を流すのは誰なのか?【先取りシネマ 第6回】
歴史は強者によって作られてきた。いやいや国家も生物も、強者はいつしか滅び去る。強者と弱者、知恵は何をもたらすのか。憎しみの連鎖の果てにあるものは?
いろいろなことを考えさせられ、かつ映画としてたいへん面白い快作2本を観た。共に実際に起きた事件を下敷きにした作品だ。秋口にぴったり。損はないので、強力にオススメしたい。
世界に衝撃を与えたインド・ムンバイの同時多発テロ
『ホテル・ムンバイ』は、2008年の11月26日、インド西海岸の大都市ムンバイ(昔のボンベイ)で起きた同時多発テロ事件を扱った力作だ。
1947年からたびたび武力衝突が起きている隣国パキスタンから潜入した10人の若者たち(イス...
執筆陣
新生『チャイルド・プレイ』は'88年版の心酔者たちが作り上げたホラー愛あふれるリブート作【先取りシネマ 第6回】
『IT/イット』の製作陣&彗星のごとく現れた新鋭監督がタッグを組んだ!
米国では1988年の11月に、日本では翌年5月に公開された『チャイルド・プレイ』。やっと買ってもらえたおしゃべり人形が、ナイフをふりかざし襲いかかってくる! 10歳くらいでTVの洋画劇場でコレに出会い、トラウマになったひとも少なくないのではなかろうか。
そんなヒット作が同じタイトルでリブートされた。ホラー映画のいいところは作り手もお客もこのジャンルが大好きだー! ということだけれど、この新作も同様だ。
プロデューサーのデヴィッド・カッツェンバーグ(1983年生まれ)とセス・グレアム・スミス(1976年生まれ)は、製作...
執筆陣
音を立てたら、即死―『クワイエット・プレイス』は全米特大ヒットの戦慄ホラー【先取りシネマ 第1回】
深い考察で読者を唸らせてきた映画評論家・久保田明さんの人気連載「映画の交叉点」を、今回より「先取りシネマ」に変更。厳選した新作映画を、独自の視点で深堀りします。(Stereo Sound ONLINE 編集部)
会話さえも許されない世界。一体何が起きているのか?
秋。落ち葉が舞い積もる田舎町のスーパーマーケット。ひとけのない店内で、3人の子どもを連れた母親が数少ない商品から日用品や薬を選んでいる。あたりを警戒する父親もいる。
手話で会話をする彼ら5人は、店から出ると一列になり注意深く歩き始める。全員が裸足だ。とにかく音を出さぬよう、目配せをしながら森の小道を進んでゆくのだが……。
一家は...
執筆陣
映画の交叉点 第39回:『ジュラシック・ワールド/炎の王国』はアノ人も登場。先が読めない驚きの展開で3作目への期待が膨らむ!
『ジュラシック・パーク』直撃世代が監督&脚本に
2015年に公開され、歴代世界興収第5位を記録する特大ヒットを飛ばした『ジュラシック・ワールド』。トリロジー(3部作)となることが決定している新シリーズの続篇『ジュラシック・ワールド/炎の王国』がいよいよ日本上陸する!
前作のコリン・トレボロウ監督はデレク・コノリー(『ジュラシック・ワールド』『キングコング:髑髏島の巨神』)と組んで脚本に回り、演出に抜擢されたのはスマトラ沖大地震に遭遇した一家の運命を描くパニック・ドラマ『インポッシブル』(2012年)や、ダーク・ファンタジー『怪物はささやく』(2016年)で知られるスペイン出身のJ・A・バ...
執筆陣
映画の交叉点 第38回:『イカリエ-XB1』 『2001年宇宙の旅』にも影響を与えた!? 幻のSF映画、55年の時を経てついに日本初公開!
1963年製作チェコスロヴァキア産映画の先見性に驚く
中子真治さん編著の労作「超SF映画」(奇想天外社刊、1980年)に小さく写真付きで載っていたので、題名だけは知っていたチェコスロヴァキア産のSF映画『イカリエ-XB1』(1963年)が日本初公開されることになった。
今回上映されるのは、2016年にプラハの国立フィルム・アーカイヴの監修で4Kレストアが行なわれたもので、モノクロ画面の解像度やモノーラル音声の明瞭がすばらしい。ヘンな表現だが、クライテリオン・コレクション発掘、修復の名作ソフトを観ているような気分だった。
この映画が気になっていたのは『イカリエ-XB1』が、ココから5年後に...