執筆陣
40回を迎えた『HiViグランプリ2024』と、半期の定番企画『冬のベストバイ』の両特集を筆頭に、『遂に日本上陸 リスニング革命、Qobuz』、『音楽ライヴを熱く観る。聴く』の“音楽”に視点をおいた四大企画でお届けするHiVi2025年冬号は12月17日発売。
2024年のオーディオビジュアルシーンを総括する
第40回 HiViグランプリ2024
40回の節目を迎えた今年のHiViグランプリ。その年の最優秀製品を選出する重要な締めくくりとなる一方で、盛り上がりを見せている様々なムーブメントを総括したり、次代のトレンドを探ったりする、重要なディスカッションの場でもあります。熱い議論が交わされた選考会では、2024年のAVシーンを俯瞰いたしました。
オーディオビジュアル関連では、プロジェクター、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイの3つの映像デバイスが共通して「超大画面・高画質」をテーマにした製品が多数リリースされ、その中から特に優れたモデルを選...
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シングルマザーが極悪詐欺集団に立ち向かう! 実話をもとにしたスリリングな一作、『市民捜査官ドッキ』
2016年に起きた振り込め詐欺事件をモチーフにした一作。「これが実際に起きたことなのか!」との驚きが、観終えた後にも、じわりと残った。といっても「市民が、命知らずにも犯人を捕まえようとする」という筋書きに驚いたわけではない。犯罪詐欺集団の水も漏らさぬ連携、絶対的ボス(直接悪事に手を染めることはない)とその下で働く者たち(その間にもカースト的ピラミッドが形成される)の位置関係、などなど。つまり容易に「トカゲのしっぽ切り」ができるシステムになっていて、風上の者にはなんの損害もないはずの、鉄壁の、構築された狡猾さに驚かされたのだ。そこに「おばちゃん市民」が立ち向かうのだから、痛快ではないか。
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ポスト・コロナの傘の下であぶりだされる「食の問題」。話題のドキュメンタリーの続編が登場、『フード・インク ポスト・コロナ』
2011年に日本公開された話題作『フード・インク』の続編。『フード・インク ポスト・コロナ』という邦題通り、パンデミック以降の「食」とそれをとりまく事象が大きなテーマとなっている。
内容は非常に重厚で、人生で一度でも何かを嚥下した経験のある者なら、知らず知らずのうちに姿勢を正して見てしまうことだろう。とりあげられている国は基本的に「アメリカ」だが、けっして「よそ」の話で片づけきれないのはいうまでもない。とどまることを知らない巨大企業のはびこり(その背後には超格安で雇われた移民たちの過酷な労働がある)、児童糖尿病の増加、脳に「おいしい」と感じさせるであろうさまざまなエフェクトが加えられた菓...
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「僕らはリヴァプールで生まれ、ハンブルクで育った」というジョン・レノンの発言が、ドキュメンタリーで実感できる『NO ハンブルク NO ビートルズ』
英国リヴァプール出身のロックバンド、ザ・ビートルズの“ハンブルク・デイズ”を追った一作。彼らは60年8月に初めてこの地にやってきて、相当に狭く薄汚いクラブのステージでロックンロールを響かせ、以降、来るたびに会場を大きくしていって、女性のファンも増やした。時には12時間続けて歌い演奏したこともあった、ともきく。バンドの基礎体力が思いっきりついた時期であったはずだ。なぜ彼らがハンブルクに行ったのか、どんな人や物と出会って刺激を受けたのか、歌手トニー・シェリダンの伴奏バンドとしてのレコーディングに至る経緯などが、当時のハンブルクの風俗や音楽シーンの描写も交えながらテンポよく描かれる。ドラマ映画...
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Netflix映画「バレエ:未来への扉」のモデルとなったインド人ダンサー、マニーシュを追い続けた力作『コール・ミー・ダンサー』
現在、ニューヨークを拠点に活動しているダンサーのマニーシュ・チャウハンを中心とするドキュメンタリー映画。彼はインドのムンバイに生まれ育ち、テレビのダンス番組で称賛を浴びた後、ムンバイのダンススクールでイェフダ・マオール(イスラエル系アメリカ人)からバレエを学んだ。強いバレエ愛と人間的信頼がうかがえるマニーシュとイェフダのやりとり、どんなレベルの生徒であっても妥協を許さないスクールでの風景、ケガの克服やスランプからの脱出、“ブラウン”の肌を持つ人間としてのバレエとの向き合い方などが、作品内で事細かく描かれていく。そして、英語を話せる、芸術に理解のある、お金を持つ後援者の存在がいかに重要であ...
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レディー・ガガにも影響を与えた「21世紀を代表するアーティストのひとり」の光と影を描く『Back to Black エイミーのすべて』
エイミー・ワインハウスの不在からもう13年が経つ。彗星のごとく母国イギリスでデビューして、地歩を固めて世界に進出、グラミー賞で5部門に輝いたのに(諸事情によりセレモニーにはイギリスからの中継で登場)、まもなく(何度目かの)ブランクに入り、結果、傑作と呼ぶにふさわしい2枚のオリジナル・アルバムを残して他界。「日本で歌うとしたら、武道館か、それともサマソニのヘッドライナーか何かかな?」という自分の予想は「本人の早すぎる死」という形で裏切られた。
エイミーの関連映画にはすでにドキュメンタリーの『AMY エイミー』があるけれど、この『Back to Black エイミーのすべて』は俳優のマリサ・...