執筆陣
レディー・ガガにも影響を与えた「21世紀を代表するアーティストのひとり」の光と影を描く『Back to Black エイミーのすべて』
エイミー・ワインハウスの不在からもう13年が経つ。彗星のごとく母国イギリスでデビューして、地歩を固めて世界に進出、グラミー賞で5部門に輝いたのに(諸事情によりセレモニーにはイギリスからの中継で登場)、まもなく(何度目かの)ブランクに入り、結果、傑作と呼ぶにふさわしい2枚のオリジナル・アルバムを残して他界。「日本で歌うとしたら、武道館か、それともサマソニのヘッドライナーか何かかな?」という自分の予想は「本人の早すぎる死」という形で裏切られた。
エイミーの関連映画にはすでにドキュメンタリーの『AMY エイミー』があるけれど、この『Back to Black エイミーのすべて』は俳優のマリサ・...
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極秘文書を一刻も早く奪うのだ! 人間模様うずまくサスペンス『対外秘』
1992年の釜山を舞台にした物語。よってアイフォンなどは出てこないし、テレビはブラウン管。だが描かれている物事は今もどこかの国において現在形で行われているのではないか、そんな生々しい濁りがある。
主人公のヘウンは“クリーンな政治家”として地元でも人気があり、党の公認候補も約束されている。そこで、国会議員選挙への出馬を画策するのだが、そこに横やりを入れてきたのがスンテという年上の男だ。スンテは国を動かすこともできる黒幕であり、そのパワーを知っているヘウンは自分より遥かに年上である彼に礼は欠かさなかったつもりだ。それなのに、なんだというのだ。どうして公認候補を俺から、急に、どこの馬の骨かわか...
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ホラー映画をアートへと昇華させた巨匠監督の初期3作品を一挙上映。『ダリオ・アルジェント 動物3部作』
『サスペリア』『ゾンビ』『フェノミナ』等に携わり、現在もなお活動する“ホラー映画のマエストロ”、ダリオ・アルジェントの初期作品、通称「動物3部作」が11月8日より新宿シネマカリテ、菊川Stranger ほかにて公開される。「動物3部作」(アニマル・トリロジー)の由来は、いずれも英語タイトルに動物の名前が含まれているから。
1969年製作の監督1作目『歓びの毒牙』(英題:The Bird With The Crystal Plumage)は、イタリアを旅行しているアメリカ人作家が主人公。事件を目撃した彼の回想が克明に描かれ、見ているこちらもまるで彼の行動を追体験しているような気持になる。ど...
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フランスで大ヒットした"突然変異"のアニマライズ・スリラーが日本上陸。『動物界』
2023年、フランスのアカデミー賞と呼ばれるセザール賞で12部門にノミネート。観客動員100万人越えの大ヒットとなったという一作が11月8日より全国公開される。
舞台は近未来の地球。人間の世界で、徐々に身体が動物と化していく病が蔓延していた。「猫になって一日中ひなたぼっこしていたいニャー」とか「空を飛ぶ小鳥のように自由に生きたいピヨー」というようなお気楽なものでは全くない。自分の体が日に日に動物化していくのだ、発する言葉も徐々に「言葉」から「鳴き声」になっていくのだ。そしてその対象となる“動物”を、おそらく自分の意志では選ぶことができない。原因不明の突然変異である。動物化したからといって...
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「恐ろしくスリリングな人物描写」と海外マスコミも称賛。『セッション』のサウンド・クリエイターが実体験をもとに放つ重厚な一作『ノーヴィス』
音(foley)の迫力がすごい。音楽(music)の選択にも耳を奪われる。かなり前衛的なストリングスの音楽と、ブレンダ・リーやコニー・フランシスら“ケネディ大統領暗殺前/ビートルズのアメリカ侵略前”に大人気を集めたシンガーの歌う甘美なアメリカン・ポップ・ソングがほぼ交互に現れてはストーリーにひんやりした感触を加える。主人公の顔は苦痛に歪み、自分も他人もどちらも責める。しかも、すさまじく過酷な練習ぶりでもある。ケガをしたら血が出ることもあるし、怒りがこみあげれば顔に赤みを増すのは人間として当たり前かもしれない。が、この映画の色合いは、しいていえば「薄い蒼」である。
主人公のアレックスは、「...