執筆陣
新しい世界に旅立つ動物たち。ギレルモ・デル・トロも称賛するCG+アニメの世界、『Flow』
『Away』で注目を集めたラトビア出身の気鋭、ギンツ・ジルバロディス監督の長編第2弾。2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映を飾り、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭では4冠を受賞。今年のゴールデングローブ賞では『インサイド・ヘッド2』や『モアナと伝説の海2』などを抑えてアニメーション映画賞を受賞、とひじょうに高い評価を受けているのだが、観れば納得である。
世界が大洪水に包まれるなか、そこを脱出しようという黒猫が主人公だが、その視点から見た風景(たとえば象がとても大きく見えるなど)がフィーチャーされるわけではなく、カメラ(アニメ)の視点は極めて第三者的である。人間が...
執筆陣
全米初登場No.1を記録! 『ハクソー・リッジ』以来となるメル・ギブソン監督最新作『フライト・リスク』
メル・ギブソンが9年ぶりの監督作品を世に問うた。航空機が「密室である」こと、「追い詰められたら逃げられない場所である」こと、「外を速く高く飛ぶ習性」を持っていることをフルに活用したサスペンスで、しかも主な舞台は上空1万フィートのアラスカだから、そびえる雪山はデフォルトだ。加えてカメラ・ワークや音質が大迫力、リアルタイムで物語が進行することもあって(つまり映画1本がまるごとワンセッション)、観終えた後にはカタルシスがどっとやってくる。
主な登場人物は「ハリス保安官補」、「重要参考人ウィンストン」、「パイロットのダリル」。ハリスはウィンストンを航空輸送する機密任務についている。つまり「ダリル...
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年齢を重ねなければ到達できない場所というものがある。「記憶」という現象の罪深さに思いをはせる一作『あの歌を憶えている』
ある程度の年齢に達して、期待しすぎることのむなしさ、悲しみに暮れてばかりいることの無益さも知った。尊厳を侮辱されたりしないのであれば、多少いやなことがあろうとも、つとめておだやかでありたい。そんな私やあなたには、特に重みのある一作として響くはずだ。
基本的には同い年のふたりによる物語である。舞台はニューヨークのブルックリン。シルヴィアはソーシャルワーカーとして働きながら娘と暮らしている。もう一人の主人公であるシールは、若年性認知症による記憶障害を抱えている。ふたりはたまたまハイスクールの同窓会で出会ったのだが、学生時代には「かすりもしなかった」。かつて同じ場所にいたものの接点のなかったふ...