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『レッドクリフ』のチャン・チェンが『青春18×2』で初の製作総指揮に。根底に流れる“台湾青春映画の息吹”はエドワード・ヤン監督からのバトン【映画スターに恋して:第35回】
チャン・チェンが『新聞記者』の藤井道人監督とタッグを組む
『青春18×2 君へと続く道』は、台湾のスター俳優チャン・チェンが初めてエグゼクティブ・プロデューサーを務め、日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『新聞記者』(19年)や大ヒット作『余命10年』(21年)で知られる藤井道人監督が自ら脚本も担当した、日本・台湾合作映画。藤井監督にとっても、これが初めての国際プロジェクトとなる。
聞けば、台湾出身の祖父を持つ藤井監督は、「いつか台湾で撮りたい」と願い、台湾の映画人にも働きかけていたのだとか。その思いが、当時ジミー・ライの紀行エッセイ『青春18×2 日本慢車流浪記』の映画化に奔走してい...
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作品よりも卓球を熱心に語るスーザン・サランドン、その裏には恋人の存在あり。『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』の自由な女性はハマり役!【映画スターに恋して:第34回】
“両家顔合わせ”で発覚したまさかの真実とは?
ダイアン・キートン×リチャード・ギア、スーザン・サランドン×ウィリアム・H・メイシ―。『アバウト・ライフ 幸せの選択肢』は、このハリウッドのベテラン・スターたちが熟年夫婦を演じ、それぞれが“残りの人生を幸せに生きるにはどうしたらいいの?”という難問を抱えて右往左往する姿を描く大人のロマンチック・コメディだ。
ことの発端は、同棲中の若いカップルが大喧嘩をしたこと。「そろそろ結婚したい女性」と「なかなか結婚に踏み切れない男性」は、とりあえず両親の結婚生活を参考にしようと、両家顔合わせの会食を行なった。で、両親が揃ってみれば、なんとお互いの配偶者同...
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食事会で見たヴェンダースの素顔は“無邪気で聡明”。役所広司の『PERFECT DAYS』には小津安二郎へのオマージュを込める【映画スターに恋して:第33回】
平山のように生きていけたなら
「平山という人は、瞬間瞬間を大切にして、自分でできることをやって、1日の終りには好きな本を読みながら、質素でありながらも、満ち足りた気持ちで眠りにつく。あれだけ毎日毎日を、満足しながら眠りにつける人って、羨ましいなと思います」
これは『PEARFECT DAYS』(23年)で、主人公・平山を演じ、第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いた役所広司の言葉だ。平山は、東京・渋谷区内に点在する公衆トイレの清掃員。カメラは、その規則正しい彼の毎日を淡々と追い続ける。
監督のヴィム・ヴェンダースにとっては、1983年4月に撮影を行った『東京画』(85年製作)から約4...
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スコセッシの“手練の技”がディカプリオ×デ・ニーロを輝かせる! 今度こそ“納得の”アカデミー賞受賞なるか【映画スターに恋して:第32回】
スコセッシとディカプリオが出会うきっかけを作ったのはデ・ニーロだった
公開されるやいなや、“アカデミー賞最有力候補”の呼び声も高い『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。そりゃそうでしょ! マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ&ロバート・デ・ニーロという黄金トリオだもの、ハズレのわけがない。
そう、3人の強い絆は知っての通り。デ・ニーロが『ボーイズ・ライフ』(93年)で初共演したディカプリオ(当時、18 or 19歳ごろ)を気に入って、朋友スコセッシに紹介してから関係が始まり、なんと30年! 『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02年)を皮切りに、スコセッシは何度もディカプ...
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タランティーノ引退まであと1作……人にも映画にも愛される彼を追った“ファンミ”さながらの熱いドキュメンタリー映画が公開!【映画スターに恋して:第32回】
イイ奴! 大好き! 関係者たちが嬉しそうに語る素顔のタランティーノ
「長編映画を10作撮ったら、映画監督を引退する」と公言しているクエンティン・タランティーノ。そんな彼の映画人生をたどるドキュメンタリー『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』が制作されたのは、デビュー作『レザボア・ドッグス』(92年)から数えて9作目にあたる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と同じ2019年。そして待望の公開は、10作目『The Movie Critic』の撮影準備が始まった今年2023年だ。
このドキュメンタリーを見たら、長年のファンはもとより、例えば黄色いジャージ姿で暴れる『キ...
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子犬のように可愛いベン・ウィショー、唯一の主要男性キャスト『ウーマン・トーキング』では持ち前の純粋さで虐げられた女性たちを見守る【映画スターに恋して:第31回】
衝撃の事件をベースにした『ウーマン・トーキング』、アカデミー賞脚色賞を受賞!
ミリアム・トウズのベストセラー小説『Woman Talking』を、女優でもあるサラ・ポリーが脚色&監督し、アカデミー賞脚色賞に輝いた『ウーマン・トーキング 私たちの選択』。監督デビュー作『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』を発表して以来“問題意識の高い女性“としてその名を馳せてきたサラ・ポーリーらしく、これまでのフェミニズム映画とは違った語り口で虐げられた女性たちを描き、新鮮な共感と感動を促してくれた。
描かれるのは、2010年、自給自足で生活するキリスト教一派が住む村での出来事。そこでは、コミュニティの男た...
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『TAR/ター』のトッド・フールドが我が家へやってきた! 『フルメタル・ジャケット』出演俳優から聞くキューブリックの演出方法とは【映画スターに恋して:第30回】
ケイト・ブランシェット、惜しくもアカデミー主演女優賞を逃すも迫真の演技!
ケイト・ブランシェットが4度目のゴールデン・グローブ賞主演女優賞に輝いた『TAR/ター』。アカデミー賞はノミネートだけに終わったが、「ミシェル・ヨーとダブル受賞でも、いいんじゃないの?」と思うくらい、独壇場の芝居だった。
演じるのは、世界に名だたるベルリン・フィルの初の女性首席指揮者の座に君臨するリディア・ター。天才的な能力と類まれな自己プロデュース力で成功を手にした彼女だったが、マーラーの交響曲全てをひとつのオーケストラで録音するという、いわばキャリアの頂点に挑もうとしていた。しかし、そんな折り思わぬ落とし穴にハ...
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ブレンダン・フレイザー、『ザ・ホエール』でアカデミー賞受賞! 痛々しかった『ハムナプトラ3』の来日の裏には苦悩の日々が【映画スターに恋して:第29回】
2003年のセクハラ事件でうつ状態に。その後の長い低迷期から見事に復活!
長きにわたり遠ざかっていた第一線にカムバック。“おめでとう! ブレンダン・フレイザー”。しかもアカデミー賞主演男優賞に輝いての復帰だから、華々しい栄光だ。
受賞作となった『ザ・ホエール』は、ダーレン・アロノフスキー監督によると「人間としての極限状態。命を脅かすほどに深刻な状態」の272キロまで増量してしまった男の、最期の5日間を描いた人間ドラマだ。
主人公はとにかく、デッカイ! 演じるブレンダンは、毎日4時間もメーキャップに費やし、45キロのファットスーツを身に着けていたそうで、動くだけでも物理的にキツかったという...
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美貌のアクション女優ミシェル・ヨーが“地味なおばさん”に! ハリウッドを席捲中の『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー賞に大手【映画スターに恋して:第28回】
百聞は一見に如かず。まずは『エブエブ』のぶっ飛んだ世界を体験すべし!
優柔不断なダメ亭主ウェイモンドと反抗的な娘、おまけに頑固な父親の面倒まで見るエヴリンは、倒産寸前のコインランドリーの経営にも四苦八苦。ところが、「別のユニバース(宇宙)から来た」と言うウェイモンドに突然“並行世界”へ連れて行かれると、そこにはカンフーマスターさながらの技を持つ“強~いエヴリン”がいて……。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、“地味なおばさん”のエヴリンが<様々な世界で生きる自分>の能力を駆使して、巨大な悪と闘うアクション・エンターテインメント……なのだが、このとんでもなくカオス世...
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アシュレイ・ジャッドの勇気ある証言、そして#MeToo運動へ。ハリウッドの性的暴行事件を暴く『SHE SAID』に本人役で出演【映画スターに恋して:第27回】
2人の女性記者が挑んだハリウッドの大スキャンダル報道を、女性監督が映画化
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』は、大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの長年隠蔽されてきた性的暴行事件を暴き、後の「#MeToo運動」の起爆剤にもなった、ニューヨーク・タイムズ紙の調査報道を描いた実話映画だ。
ハリウッドに君臨する“巨大な権力者”の悪行を暴くのは至難の業。ミーガン・トゥーイーとジョディ・カンターの女性記者2人は、ワインスタイン側からの脅迫とも思える圧力や妨害に耐えながら、事実を裏付ける証拠の数々を集め続けるが、その努力も実際の被害者たちが証言してくれなければ水の泡だ。...
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“一暴れ”後のショーン・ペンにインタビュー、果たしてその結果は? 実の娘が出演する『フラッグ・デイ』では複雑な父娘関係も【映画スターに恋して:第26回】
監督最新作は“インディペンデント映画の申し子”だと改めて感じる出来栄え
ショーン・ペンが、久しぶりに才能を余すところなく発揮した『フラッグ・デイ 父を想う日』。原作は、ジャーナリストのジェニファー・ヴォーゲルが、アメリカ最大級の偽札事件の犯人であった父親ジョン・ヴォーゲルとの“関係”を見つめ直した回顧録。ショーンにとっては7作目の監督作であり、初めて出演も兼ねている。この初挑戦については「プロデューサーの強い説得に根負けして、仕方なく引き受けた。予想通り、ずっとエネルギーを吸い取られる感じがしていた」と、あるインタビューで語っている。
なるほど、原作と出会ってから構想15年。娘ジェニファ...
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ジュリア・ロバーツが“日本嫌い”って本当? インタビューで垣間見えたのは、聡明さの中に同居する繊細な一面【映画スターに恋して:第25回】
ジョージ・クルーニーとの掛け合いが映える『チケット・トゥ・パラダイス』が公開!
ジュリア・ロバーツ&ジョージ・クルーニー共演の『チケット・トゥ・パラダイス』。2016年に公開されたジョディー・フォスター監督作『マネーモンスター』以来6年ぶりのタッグだけど、新作の設定は「犬猿の仲の元夫婦が、娘の電撃結婚を食い止めようと手を組むロマンチック・コメディ」。となれば『オーシャンズ11&12』(01、04年)で演じた“ワケあり夫婦、再び!”といったほうがわかりも早い。
数々のロマコメ(ロマンティック・コメディ)で技を磨いてきた2人だけに、丁々発止の小競り合いも息ピッタリ。現在ジョージ61歳、ジュリ...