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中域の音の分離が聴きどころ シリーズ最大のブックシェルフ Q Acoustics SPEAKER SYSTEM 3030i
Qアコースティクスは2006年に創立された英国の新進スピーカーメーカー。傘下にゴールドリングやQED、グラド等、ディープなオーディオブランドが名を連ねるアーマー・ホームエレクトロニクス・グループの一員だ。日本には今から数年前に紹介された。
3030iはQアコースティクス製品の中核を担う3000iシリーズの最近作。先行発売されている3050i/3020i/3010iの3モデルに追加するかたちで、今春登場したコンパクトシステムである。合計4モデルのうち、トップエンドの3050iだけフロアスタンディング型なので、価格がそれに次ぐ当機はブックシェルフ型の新たな代表選手という位置づけになる。
コン...
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音楽表現はプロ級の貫禄。MC型カートリッジ・EMT JSD Pure Black
JSD Pure Blackは、『管球王国』80号でリポートしたJSD S75の後継機である。後継機といってもマイナーチェンジ版と発表されていて、価格は据え置き。スペックも、ボディ構造の強化にともない自重が2g増したくらいで同等だ。実機をよくよく観察して発見したのは、カンチレバーとSFLスタイラスの結合法が変わったことである。旧タイプのそれを、筆者はまるで魔法のようと記した。新しいPure Blackはむしろオーソドックス。ホワイトサファイアのカンチレバー先端に孔をあけ、針先を深く植え込んである。振動質量がすこし増えたかもしれないが、感覚的には手堅く安心だ。
今回の試聴では待望の昇圧トラ...
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針先形状の異なる入門用VM型カートリッジが登場。 オーディオテクニカ VM型カートリッジAT-VM95シリーズ
オーディオテクニカから、VM型カートリッジAT-VM95シリーズのニューモデルが合計6種類登場した。これらの中にはヘッドシェル付きやSP再生専用タイプも含まれるが、今回実際に聴いたのは4機種。いずれも通常のステレオLP仕様である。
既発売のVM700シリーズ等と同様、AT-VM95シリーズのもっとも大きな特徴は交換針の互換性が保証されていること。上位モデルの交換針を装着すれば、簡単にアップグレードが愉しめることになる。4機種の価格はというと、8千円から3万3千円までけっこうな差がついている。けれど交換針部を除く本体の仕様はまったくイコールなのだ。ただし、実機の銘板にはそれぞれの型名がきち...
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名盤ソフト 聴きどころ紹介14/『美空ひばり』 Stereo Sound REFERENCE RECORD
美空ひばりは、いわゆる歌謡曲の黄金時代を2段ステップで駆け登り、頂点を極めた昭和の一大流行歌手である。
2段ステップという意味は、筆者の耳の勝手な判断によればの話だけれど、ひばりの歌にはふたつの時代があったと思うからだ。
ひとつ目は、昭和24年の「河童ブギウギ」から同32年「港町十三番地」に至る天才少女時代。ふたつ目が昭和40年のレコード大賞受賞曲「柔」や、翌年の「悲しい酒」で不動の評価を確立して以後、女王の座を保持し続けた堂々たる大人の時代。そしてふたつの時代を結ぶ過渡期、といったら礼を失するかもしれないが、昭和35年には「哀愁波止場」でレコード大賞の歌唱賞を獲得したり、同37年に日活...
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オーストリア製アナログプレーヤー「Pro-Ject」より2モデル。 伝統あるX-lineの最新作は、色彩感豊かな「X1」と、透明感の上級機「XTENSION9TA」
必要にして不可欠、シンプルかつ技術的に正しい設計
1990年頃、オーストリアのウィーンで創業したプロジェクト社(Pro-Ject AUDIO SYSTEMS)。当時はすでにCDを主体とするデジタルオーディオ時代に入り、アナログディスク再生の退潮はもう決定的になっていたわけだが、同社のキャリアはアナログプレーヤーからスタートした。初号機の型名もずばりPro-Ject1だった。
この製品はやがてX-Line としてシリーズ化され、プロジェクト・プレーヤーの中核を担う看板モデルに育っていく。「必要にして不可欠、シンプルかつ技術的に正しい設計」というのが一貫したコンセプトだ。
30年に近い歳月を...
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エイフル 真空管アンプ WE271A Single Stereo。傍熱型3極管のWE271Aシングルで出力3W+3W。ピラミッドバランスの音で大物の器量を感じさせる
古典球にはめずらしい、傍熱型の3極出力管をつかったパワーアンプである。WE271A。筆者は初めて見る球なので、本誌別冊「歴代名出力管」で探してみたけれど見当たらない。短いコメントと、A1級シングル出力の動作例が辛うじてみつかった。
開発年は1932年。1914年の101Aに始まって1938年の300Bへ連なるWEの3極出力管の中でも、オーディオ用傍熱型は271Aだけのようである。WEのチューブマニュアルによれば、翌1933年に出現した300A(直熱型)とはずいぶん素性が異なる、なるほど傍熱管だ。とはいえ電極の支持にビス・ナットを使用するなど入念なつくりで、姿かたちも美しい。これは格別高度...
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VPI社より最新ヴァージョンのアナログプレーヤー 「Prime Scout」を試聴 技巧派の作りでアナログの妙味が味わえる
回転摩擦を排除のワンポイント・サポートアーム搭載
VPIは米ニュージャージーのオーディオメーカーで、主としてアナログプレーヤーに独創性豊かな技術をもっている。Scoutシリーズは、2001年から累計12にのぼる各種アウォードを獲得してきたという代表作。その最新ヴァージョンが当機である。
大きめのACシンクロナスモーターと段付きプーリーによってベルト駆動される2速度プラッターは、公称質量4.76㎏におよぶアルミ合金製。ネジ込み方式のスタビライザーでレコードをじんわり押し付ける構造だ。
馬力頼みの万事豪快アメリカ流儀かと思ったらそうではない。9インチサイズのJMW9トーンアームは、回転摩擦を...
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トライオード 真空管アンプ TRZ300W。ロングセラー300Bパラレルシングルの後継機。直熱3極管の清らかな温もりを浸透させる
300Bのパラレルシングル出力で、1994年の創業以来22年間におよぶロングランを記録したVP300BDの後継機。ラインレベル入力4系統に加え、半導体増幅によるMM仕様のフォノイコライザーを内蔵してアナログディスク再生にも対応したインテグレーテッドアンプである。さらにMAIN IN端子を備え、パワーアンプとしてもつかえる。通常の入力選択とミュートおよび音量調整ができるリモコンも付属する。
パワーアンプ部は12AX7のSRPP入力と12AU7パラレル接続のドライバー、そしてトライオード・オリジナル銘の300Bパラレル出力段からなる3段増幅で、軽くオーバーオールのNFBをかけてある。上位ヴァ...
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エントリーシリーズとは思えない!想像を上回る艶やかな音が鳴り響く ELAC 「DBR62」
エラック・スピーカーのベーシックライン Debutシリーズの新しい上位機
エラックはもともとアナログプレーヤによって名をなしたドイツのメーカーで、実はMM型ステレオカートリッジのオリジネーターでもある老舗ブランドだ。その特許を買ってモディファイを加えた米国のシュア製品が大ヒットし、世の中にMM型が定着したのだが、1950年代の末期、本家エラックのMM型はとても高価な天下の一流品だった。
スピーカーを手がけはじめたのはずっと後年、CDが生まれて急成長する1980年代のことだったと思う。鍛え上げた電磁変換器の技術を駆使することで、デジタル時代への脱皮を果たしたのだ。日本市場では1997年に登...
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MAGICO A1は、ステレオ再生の醍醐味を再認識させてくれる逸品
ペア100万円ゾーンのスピーカーといえば、スリムなトールボーイスタイルが主流になっている昨今。もっと小柄でシンプルなブックシェルフシステムもぼつぼつ現れはじめた。思えばちょうど、セパレートアンプ対プリメインアンプの「本気で力比べ」に似た構図だろうか。
それらの高額なコンパクトスピーカーシステムには、とうぜんながら相応の技術とコストとヒューマンパワーが投じられる。結果として、製作者の意図したビジョンやら無意識の嗜好やらが、再生音に色濃く、あるいは正直に反映されるものだ。小さいぶん、音づくりに対する方向性のちがいがギュッと端的に凝縮されて聞こえやすいというわけだ。
精巧なメタルエンクロージャ...
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新たなフラッグシップA級プリメインアンプ Accuphase E800
公称質量36kgのプリメインアンプ。文字どおり見かけどおりの大物で、Eシリーズを代表する新しいフラグシップモデルなのだが、定格出力は控えめな50W×2(8Ω負荷)。4Ωでも100W×2とされていて、たとえば既発売の中堅機E480がもつハイパワー=8Ω負荷時180W×2には遠く及ばない。なのに価格はほとんど2倍。これはどういうことか? 主なその理由は、ファイナル出力段がA級動作だからである。
プッシュプルのA級アンプは電力効率が低い代わりに高音質だとよくいわれる。低効率なのは、出力回路に常時大電流が流れるためで、ちょうどアクセルを踏み込んだまま待機しているクルマみたいなものだ。走らなくても...
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“打てば響く”フルレンジモデル。米国オーディエンスの、パッシブラジエーターを備えたコンパクトスピーカー
オーディエンス(Audience)は米カリフォルニア州サンディエゴの在。スピーカーシステムをはじめ、電源コンディショナーや接続ケーブル類を手がけるオーディオ専門ブランドだ。Hand-Crafted High Performance Audio Componentsが基本の製品構成。本誌ではなじみが薄かったが、以前から輸入実績はあり、先般日本法人を設立して本格浸透をはかることになった。つまりは気合い充分な仕切り直し、といえばよいだろうか。今回紹介するClair Audient(透聴力)シリーズのスピーカー2機種は、まっさらなニューモデルとすこしばかり性格が異なる定番製品の最新バージョンだ。...