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ミア・ゴスも登場。美しいリゾート地に拡がるダークネス『インフィニティ・プール』
「無限のプール」とは何ぞや? と調べてみたら、けっこうメジャーな言葉であることがわかった。「外縁が海などのより大規模な水や空と混じり合い境目がわからないように見えるよう設計され~」とか「プールの縁を作らずに無限に続くような水の絶景などなど。いくつかの写真もウェブで見たが、まさに絶景であるとともに、こういう風景が出てくる生活を自分が送るにはあと何回生まれ変わらなければいけないのかとも思った。
そこでこの映画だが、舞台は美しいリゾート地“リ・トルカ島”。セレブでハイソなひとたちがずらりと集まり、ぜいたくなパーティを繰り広げる。そこにやってきたのが作家のジェームズという男(アレクサンダー・スカ...
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人生をかけて戦え! プロレス一家「エリック・ファミリー」の日々を、次男ケビンの視点で映画化した『アイアンクロー』
プロレスが絡む映画というだけで嬉しくなってくるが、しかも内容が「エリック一家」の実話に基づくドラマなのだから、興奮が倍増する。父親は、ジャイアント馬場などと死闘を演じた“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリック。相手のこめかみを巨大な握力で掴んで脳波を狂わせるという技「アイアンクロー」で歴史に名を残す人物だ。対エリック戦の決まった馬場が、エリックにアイアンクローをかけられても耐えられるように、どこかの砂漠に埋まって横になり、顔の上をジープで轢かせながら頭蓋骨を鍛える――という描写が確か「ジャイアント台風」というマンガに出てきた。
そのエリックには子供たちがいて、次男のケビン、三男のデビッド、四...
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ジミ、ジャニス、オーティス。「大型ロック・イベントの原点」を記録した歴史的な映画がレストアで蘇った! 『MONTEREY POP モンタレー・ポップ』
1967年6月にアメリカ西海岸で行なわれた歴史的な「Monterey International Pop Festival」(3日間、5セット)を素材にした記録映画が、この『MONTEREY POP モンタレー・ポップ』である。意外にもこれまで日本で正式に公開されたことはなかったらしく、今回、レストアされた4K・5.1ch版でお目見えすることになった。出演者のうち、同年末にはオーティス・レディング、70年にはジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリンがそれぞれ20代の若さで他界し、サイモン&ガーファンクルが活動を停止。アニマルズも68年に解散している。ちらっと画面に映るブライアン・ジョー...
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UKロンドンの最前線で、インド~パキスタン系のトップダンサーが超絶ダンスバトルを繰り広げる147分。『ストリートダンサー』
インド映画について、ある特定のイメージを持っている方は快い裏切りにあうことだろう。尺は2時間半ほどあり、歌が流れるシーンも、ダンス・シーンもたっぷりだが、舞台は英国ロンドン。そこに住む、ある意味とても恵まれたインド系の青年たちと、パキスタン系の青年たちの物語なのである。皆、かっこよくておしゃれだ。
両者は一種のライバル関係にあり、ダンスバトルを繰り広げている。セリフもあるにはあるが、それ以上に雄弁に彼らの気持ちを伝えるのが、各楽曲の歌詞。もちろんここにもしっかり字幕はつけられていて、ヒップホップを基調とした楽曲の数々が、切れ味いっぱいのダンスと共に繰り広げられる。一部アメリカの古典的映画...
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彼はなぜ死んだ? 誰が殺した? 大迫力の裁判シーンを含む大作ミステリー
フランスでは、あっという間に動員130万人超えの大ヒット。カンヌ国際映画祭では最高賞パルムドールを受賞、ゴールデン・グローブ賞2部門受賞を果たし、アカデミー賞5部門ノミネート中の大作ミステリー『落下の解剖学』が2月23日より全国公開される。
「冬の山荘で、作家の男が転落死した状態で発見された」、「疑いがかかったのは、やはり作家である妻」、「事件に関する唯一の証人と言えるのは、視力に障害を持つ11歳の息子」。この3つをメインテーマとして、実に丁寧に、地に足をしっかり付けた形で物語が描かれてゆく。「妻は作家だから、トリックのやり方もいろいろ知っているのではないか?」とか、「息子はどこまで目が...
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時価数億円のアナログ・レコードを探しだせ! カーアクション@下北沢もたっぷりの一作『シモキタブレイザー』
犬、ヒップホップ、カーチェイス、「裏稼業」。こうしたファクターに触手を動かされる方にとっては、とくにドーパミンが湧き出るであろう一作。それがこの映画『シモキタブレイザー』といえるはずだ。2月16日からヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて劇場公開される。
監督・原案・プロデューサーは、元暴走族による復讐劇を描いた『灰色の壁大宮ノトーリアス』で評判を集めた安藤光造。今回は、その日暮しのタトゥーアーティストであるKEN(佐藤嘉寿人)+ガンジャ売りのSMOKY(赤名竜乃介)のコンビに、BUZZ(青木謙)とSNOW(倉冨なおと)が合流、いささか急造のチームで、閉店中の宝石店に押し入って強盗をはたら...
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新しい女性像を描き出した90年代シスターフッド映画の金字塔が、待望の4Kリマスター
1991年に日本公開され、アカデミー賞やゴールデングローブ賞にも輝いたリドリー・スコット監督の大ヒット映画が、4K化のうえ劇場で復活する。ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドン双方の代表作であり、ブラッド・ピットの出世作にも数えられる『テルマ&ルイーズ』だ。
「とにかくだだっ広い」としか言いようのないアメリカのある地域で繰り広げられる物語だ。スーザン扮するヘビースモーカーのウェイトレスであるルイーズと、ジーナが扮する、なんとなく満ち足りていない主婦のテルマは友人どうし。気分転換というわけか、ふたりでドライブ旅行に出発する。途中、バーに立ち寄ったまではテンポが良かったが、チャラ目の男に声...
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「たくさん見て、ひとり占めしちゃってください」。AKB48の下尾みうが1st写真集の発売記念イベントを開催
AKB48の下尾みうが2月9日、「下尾みう 1st写真集 僕だけのもの」を発売。その記念イベントを10日、都内で開催した。撮影は下尾の出身地である山口県内を中心に行なわれ、水着カット、私服姿、ランジェリー姿など、さまざまな彼女の姿が捉えられている。カメラマンはファッション関連、写真集等、多くの実績を持つHIROKAZUが担当。以下、会見の模様を紹介したい。
――写真集が発売された感想をお願いいたします。
デビュー当時から写真集を一度は出してみたかったんです。ファンの方に楽しみにしてもらえてすごく嬉しいですし、故郷の山口県で撮影できたことも本当に嬉しかった。自信がいく写真集を完成することが...
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史実を基に、人間の「業」を描き出す。韓国年間最長No.1記録を樹立した大ヒット作が日本上陸。『梟ーフクロウー』公開へ
“人間の業”という言葉が何度も頭の中で点滅してしまった。濃厚かつスリリング、背筋をぞっとさせる一作だ。
「仁祖(インジョ)実録」という記録物(1645年。“仁祖”は李氏朝鮮時代の第16代国王)に記されていた事件がモチーフになっているという。つまりこの映画で描かれていることと近いものが現実にも起こっていたと想像できる。恐ろしい。「仁祖実録」について、不勉強な私は初めて知ったが、韓国ではひじょうによく知られたストーリーなのであろう。が、この映画で描かれるヒリヒリするような愛憎、人間関係には、ある程度の年齢に達すれば、どの国の誰であろうと大なり小なり思い当たることがあるはずだ。
主人公のギョン...
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不滅のヒーロー、ボブ・マーリーのライヴ映像を含む、これぞルーツ・レゲエの決定的映画
レイナルド・マーカス・グリーン監督の伝記ドラマ映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』も日本公開が予定されているとのことだが、その前に“実物”の姿をぜひ体験しておこうではないか。『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』は1979年7月、ジャマイカで開催された一大フェスティバル「第2回レゲエ・サンスプラッシュ」の模様を中心に構成された貴重このうえない映像であり、81年に早すぎる病死をとげたレゲエの神格、ボブ・マーリーが母国で繰り広げたラスト・パフォーマンスの記録でもある。
「ノー・ウーマン、ノー・クライ」を始めとする代表曲を次々と歌いまくるマーリーの雄...
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投資になじみのない方でも心配無用。すこぶる痛快なアメリカン・エンタテインメント作品『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
何度も「へえー」と心の声をあげながら見た。
コロナ禍真っ只中の2021年初頭に、アメリカの金融マーケットで実際に発生した”ゲームストップ株騒動”(ゲームソフトの小売り企業である同社の株を集中的に買い、空売りしていたヘッジファンドに損害を与えた)を脚色した映画であるという。主役はアメリカの、主に地方都市に住む若手の投資家たちだ。彼らが、遠くニューヨーク・マンハッタンにあるウォール街を跋扈するエリートたちに一矢を報いる、そんな気持ちよさがある。
SNSを駆使しながら、その場所にいながらにして、投資していく。その姿はまるで呼吸するかのようにナチュラルだが、いっぽうで、興じているスポーツが勢いづ...
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要注目の映画製作ブランドがおくる、「音」と「静寂」がコントラストをなすホラー作品『サウンド・オブ・サイレンス』
イタリアの映画製作ブランド「T3」創設者であるアレッサンドロ・アントナチ、ダニエル・ラスカー、ステファノ・マンダラの三監督が完成させた、初の英語長編映画。2020年、アメリカ最大のホラー映画祭であるスクリームフェスト・ホラー映画祭に選出された短編を元にした、フルレングス・ヴァージョンだ。
タイトルは、サイモン&ガーファンクルのヒット曲に由来するのだろう。主人公のエマ(ペネロペ・サンギオルジ)はニューヨークで暮らしながら、どうにかプロの歌手になりたいと奮闘しているが、壁はなかなかに厚く、オーディションの結果もかんばしくない。そんなさなか、父親が入院したとの報を受け、エマは母国イタリアに帰省...