執筆陣
Netflix映画「バレエ:未来への扉」のモデルとなったインド人ダンサー、マニーシュを追い続けた力作『コール・ミー・ダンサー』
現在、ニューヨークを拠点に活動しているダンサーのマニーシュ・チャウハンを中心とするドキュメンタリー映画。彼はインドのムンバイに生まれ育ち、テレビのダンス番組で称賛を浴びた後、ムンバイのダンススクールでイェフダ・マオール(イスラエル系アメリカ人)からバレエを学んだ。強いバレエ愛と人間的信頼がうかがえるマニーシュとイェフダのやりとり、どんなレベルの生徒であっても妥協を許さないスクールでの風景、ケガの克服やスランプからの脱出、“ブラウン”の肌を持つ人間としてのバレエとの向き合い方などが、作品内で事細かく描かれていく。そして、英語を話せる、芸術に理解のある、お金を持つ後援者の存在がいかに重要であ...
執筆陣
人生の選択肢を知って成長していく少年と、彼を優しく見守る父の姿。シャオチェン=ヤーチュエン・コンビの到達点か。『オールド・フォックス 11歳の選択』
門脇麦の出演でも話題を集めること間違いなしの一作。内容もまた、実に丁寧に、ひとつひとつの物事をそっとひもとくような感じで進み、つまり、注意深く物語の推移を追うことのできる者に大変な充足感を与える作品であると断言していいだろう。プロデューサーはホウ・シャオシェン、監督はシャオ・ヤーチュエン。すなわち名コンビが作品づくりに全面的に関わっている。ヤーチュエン監督のこれまでの映画は、シャオシェンがプロデュースしてきたが、どうやら今回の『オールド・フォックス 11歳の選択』が最後になるかもしれない。というのも、シャオシェンがこれを最後のプロデュース作品にすると発表しているからだ。
物語は1989年...
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映画に夢を見た二人の男が、「愛した女」について語り合う。あまりにも繊細で、ビタースウィートな人生物語『花腐し』
ウェットな空気が画面から直接こちらに吹いてくるようだ。1970年代から第一線に立つ重鎮脚本家・荒井晴彦の最新監督作品。松浦寿輝の第123回芥川賞受賞の同名小説を原作にしつつ、「秋風の吹くピンク映画界」というモチーフを加えた。
とある古アパートに住む栩谷(綾野剛)は確かに映画監督だが、ここ5年のあいだ作品を作れていない。伊関(柄本佑)は、かつて脚本家志望だったが、今は不動産屋で働いている。伊関が立ち退きを求めに栩谷の部屋を訪れたところ、そこに生まれたのはなんとも不思議なヴァイブレーション。共通項に「映画づくり」があることがわかるとさらに、会って話す時間が増え、立ち退きへの説得はおざなりにな...