執筆陣
映画に夢を見た二人の男が、「愛した女」について語り合う。あまりにも繊細で、ビタースウィートな人生物語『花腐し』
ウェットな空気が画面から直接こちらに吹いてくるようだ。1970年代から第一線に立つ重鎮脚本家・荒井晴彦の最新監督作品。松浦寿輝の第123回芥川賞受賞の同名小説を原作にしつつ、「秋風の吹くピンク映画界」というモチーフを加えた。
とある古アパートに住む栩谷(綾野剛)は確かに映画監督だが、ここ5年のあいだ作品を作れていない。伊関(柄本佑)は、かつて脚本家志望だったが、今は不動産屋で働いている。伊関が立ち退きを求めに栩谷の部屋を訪れたところ、そこに生まれたのはなんとも不思議なヴァイブレーション。共通項に「映画づくり」があることがわかるとさらに、会って話す時間が増え、立ち退きへの説得はおざなりにな...