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新しい女性像を描き出した90年代シスターフッド映画の金字塔が、待望の4Kリマスター
1991年に日本公開され、アカデミー賞やゴールデングローブ賞にも輝いたリドリー・スコット監督の大ヒット映画が、4K化のうえ劇場で復活する。ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドン双方の代表作であり、ブラッド・ピットの出世作にも数えられる『テルマ&ルイーズ』だ。
「とにかくだだっ広い」としか言いようのないアメリカのある地域で繰り広げられる物語だ。スーザン扮するヘビースモーカーのウェイトレスであるルイーズと、ジーナが扮する、なんとなく満ち足りていない主婦のテルマは友人どうし。気分転換というわけか、ふたりでドライブ旅行に出発する。途中、バーに立ち寄ったまではテンポが良かったが、チャラ目の男に声...
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「たくさん見て、ひとり占めしちゃってください」。AKB48の下尾みうが1st写真集の発売記念イベントを開催
AKB48の下尾みうが2月9日、「下尾みう 1st写真集 僕だけのもの」を発売。その記念イベントを10日、都内で開催した。撮影は下尾の出身地である山口県内を中心に行なわれ、水着カット、私服姿、ランジェリー姿など、さまざまな彼女の姿が捉えられている。カメラマンはファッション関連、写真集等、多くの実績を持つHIROKAZUが担当。以下、会見の模様を紹介したい。
――写真集が発売された感想をお願いいたします。
デビュー当時から写真集を一度は出してみたかったんです。ファンの方に楽しみにしてもらえてすごく嬉しいですし、故郷の山口県で撮影できたことも本当に嬉しかった。自信がいく写真集を完成することが...
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史実を基に、人間の「業」を描き出す。韓国年間最長No.1記録を樹立した大ヒット作が日本上陸。『梟ーフクロウー』公開へ
“人間の業”という言葉が何度も頭の中で点滅してしまった。濃厚かつスリリング、背筋をぞっとさせる一作だ。
「仁祖(インジョ)実録」という記録物(1645年。“仁祖”は李氏朝鮮時代の第16代国王)に記されていた事件がモチーフになっているという。つまりこの映画で描かれていることと近いものが現実にも起こっていたと想像できる。恐ろしい。「仁祖実録」について、不勉強な私は初めて知ったが、韓国ではひじょうによく知られたストーリーなのであろう。が、この映画で描かれるヒリヒリするような愛憎、人間関係には、ある程度の年齢に達すれば、どの国の誰であろうと大なり小なり思い当たることがあるはずだ。
主人公のギョン...
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不滅のヒーロー、ボブ・マーリーのライヴ映像を含む、これぞルーツ・レゲエの決定的映画
レイナルド・マーカス・グリーン監督の伝記ドラマ映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』も日本公開が予定されているとのことだが、その前に“実物”の姿をぜひ体験しておこうではないか。『ボブ・マーリー ラスト・ライブ・イン・ジャマイカ レゲエ・サンスプラッシュ』は1979年7月、ジャマイカで開催された一大フェスティバル「第2回レゲエ・サンスプラッシュ」の模様を中心に構成された貴重このうえない映像であり、81年に早すぎる病死をとげたレゲエの神格、ボブ・マーリーが母国で繰り広げたラスト・パフォーマンスの記録でもある。
「ノー・ウーマン、ノー・クライ」を始めとする代表曲を次々と歌いまくるマーリーの雄...
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投資になじみのない方でも心配無用。すこぶる痛快なアメリカン・エンタテインメント作品『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
何度も「へえー」と心の声をあげながら見た。
コロナ禍真っ只中の2021年初頭に、アメリカの金融マーケットで実際に発生した”ゲームストップ株騒動”(ゲームソフトの小売り企業である同社の株を集中的に買い、空売りしていたヘッジファンドに損害を与えた)を脚色した映画であるという。主役はアメリカの、主に地方都市に住む若手の投資家たちだ。彼らが、遠くニューヨーク・マンハッタンにあるウォール街を跋扈するエリートたちに一矢を報いる、そんな気持ちよさがある。
SNSを駆使しながら、その場所にいながらにして、投資していく。その姿はまるで呼吸するかのようにナチュラルだが、いっぽうで、興じているスポーツが勢いづ...
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要注目の映画製作ブランドがおくる、「音」と「静寂」がコントラストをなすホラー作品『サウンド・オブ・サイレンス』
イタリアの映画製作ブランド「T3」創設者であるアレッサンドロ・アントナチ、ダニエル・ラスカー、ステファノ・マンダラの三監督が完成させた、初の英語長編映画。2020年、アメリカ最大のホラー映画祭であるスクリームフェスト・ホラー映画祭に選出された短編を元にした、フルレングス・ヴァージョンだ。
タイトルは、サイモン&ガーファンクルのヒット曲に由来するのだろう。主人公のエマ(ペネロペ・サンギオルジ)はニューヨークで暮らしながら、どうにかプロの歌手になりたいと奮闘しているが、壁はなかなかに厚く、オーディションの結果もかんばしくない。そんなさなか、父親が入院したとの報を受け、エマは母国イタリアに帰省...
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「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」というテーマを下敷きにした意欲作。下津監督の長編第一弾『みなに幸あれ』
「こんなアプローチもあるのか!」と頻繁に驚かされると共に、「まさに日本の風土を踏みしめている、この国ならではのホラー作品だ」と感服させられた。同時にカメラ・ワークは洗練されていて、こじゃれていると表現したくなるほどだ。
日本ホラー界の重鎮として知られる清水崇が総合プロデュースを務め、監督は、これが商業映画としてはデビューとなる下津優太が担当(2021年に同名タイトルの短編映画で「第1回日本ホラー映画大賞」の大賞を受賞)。つまり、場数を踏んだ者と気鋭がタッグを組んだわけだ。主演の少女は、昨今、目覚ましい活躍をみせている古川琴音。いち早く彼女に注目し、フィーチャーした制作陣の先見の明もたたえ...
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「まばゆいばかりに洗練された未来のおとぎ話」と絶賛。絶望の世界で希望を捨てずに生きる少女の物語『VESPER/ヴェスパー』
世界三大ファンタスティック映画祭の一つである「ブリュッセル国際映画祭」で最高賞(金鴉賞)を受賞。アメリカの雑誌「ヴァラエティ」では「まばゆいばかりに洗練された未来のおとぎ話」と評されたという、いわくつきの一作が1月19日から新宿バルト9ほか全国ロードショーされる。監督と脚本はクリスティーナ・ブオジーテ、ブルーノ・サンペル、ブライアン・クラーク(脚本のみ)。フランス、リトアニア、ベルギーの合作だ。
作品タイトルの“ヴェスパー”はまた、主人公の少女の名前でもある。彼女が住んでいるのは確かに地球ではあるのだが、我々の知る地球ではない。生態系が壊されてしまったのだ。大変な富裕層は安全で豊かな城塞...
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NYの移民家族と、その親子の絆を描いたベストセラー小説を映画化。『ニューヨーク・オールド・アパートメント』公開
おしゃれで都会的なニューヨークは、せいぜいマンハッタン5番街、それもセントラル・パークの南側の一部だけではなかろうか、というのが私の考えだ。ほかのエリアは、よく言えば人間臭く、汗や力の量が問われる。主張されたらそれに負けない主張をしなければ押しつぶされ、ようするに弱肉強食という印象だ。この映画はそこ(マンハッタンではなくてブロンクスあたりではないかと思う)に住む、ペルーからの移民家族の物語。母は大衆食堂で働き、息子ふたりは自転車での出前配達に忙しい。自動車に接触されたら、自分たちが悪かったですとばかりに謝り、その場を逃げるように去る。いろいろもめたり、IDの提出を求められたくないのだろう...
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ダライ・ラマ法王とデズモンド・ツツ大主教の対談を中心に構成された貴重な一作『ミッション・ジョイ』
二人のノーベル平和賞受賞者、ダライ・ラマ法王とデズモンド・ツツ大主教の対談を中心に構成された一作。ツツ大主教は21年に亡くなっているので、もうこの対談は実現し得ない。非常に貴重な90分を体験することができる。
私がツツ大主教のことを覚えたのは、多くの音楽ファン同様、マイルス・デイヴィスのアルバム『TUTU』(1986年)を通じてだった。もっともこの作品はアルバム・タイトルが二転三転して最終的に『TUTU』になっており、マイルスがどのくらい大主教のことを知っていたか、関心を寄せていたかには不明なところもあるのだが、とにかくツツという名はこれで大いに広まったはずだ。アパルトヘイトの撤廃に尽力...
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タランティーノの監督第1作が、初公開から30数年を経て、デジタル・リマスター版でリバイバル上映
クエンティン・タランティーノの監督第1作にして、出世作となった古典『レザボア・ドッグス』がデジタル・リマスターのうえ、1月5日(金)から新宿ピカデリーほかにて劇場公開されることになった。
ジョーという男がリーダーとなって集めた、互いの素性を知らない6人の男たちを中心とする物語。彼らには「宝石店強盗」という目的があり、それに際して大いに気持ちを合わせる必要があった。だが、緻密に計画し、意気込んだはずだったのに、結果は思い通りにならず。命からがら集合場所に戻ってきた各人は、疑心暗鬼のかたまりと化していた。仲間割れだ。ここから始まる、残酷であると同時に、深いペーソスを感じさせる、一種の「処刑」...
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母・娘・漁師・巨大魚のあいだの「信頼」に心を打たれる力作『ブルーバック あの海を見ていた』
作家ジェイン・ハーパーのベストセラー小説(1997年出版)を原作とした、クライム・サスペンス作品『渇きと偽り』で知られるロバート・コノリー監督が手掛けた一作。この作品を映画化することは、彼の長年の念願だったとのことだ。
主人公は、海洋生物学者のアビー。環境活動家だった母が脳卒中で倒れたとの知らせを受けて、西オーストラリアの海辺の町にある実家に戻る。母の症状は幸いにも軽かったとはいえ、言葉を発することができなくなっていた。そこから「無言の母」と、「これまでのことに思いをはせるアビー」の日々が始まる。
母と共に過ごした時代のこと、環境破壊のこと、そして物語中で重要な役割を果たす青い巨大魚「ブ...