執筆陣
あの男にもスランプの時期があった。「転機」の1957年を描くドラマティックな力作『フェラーリ』
ジェームズ・マンゴールド監督『フォードvsフェラーリ』は1966年の物語だったが、こちらのマイケル・マン監督作品は1957年に的を絞っている。この57年、自動車メーカー「フェラーリ」も創立者エンツォ・フェラーリもスランプにあった。経営は悪化し、息子の死もあってかエンツォと妻の関係は冷え冷えとしたものになり、愛人との関係は悪くなかったものの、彼女との間に生まれた男児の認知はかなわない。そのなかでイタリア1000マイルを走るロードレース“ミッレミリア”(この年の開催が最後となった)に取り組んでいく、エンツォの姿が描かれる。
私の強い関心は「1957年当時のロードレースとは、どんなものか」にあ...