執筆陣
リゾート、飛行機、サヴァイヴァル、サメ! “詰み系”スリラーの最新作『エア・ロック 海底緊急避難所』
7月開催の『第一回東京国際サメ映画祭』オープニング作品として上映され、観客を大いに驚かせたという一作。これほどの情報量を、よく90数分に収めたものだと思う。
大型旅客機の行先はメキシコのリゾート地。中心人物は州知事の娘で卒業旅行のために機上の人となったエヴァ、祖父母と一緒に旅する10歳の少女・ローザ、同性婚を夢見るCAのダニーロ。彼らに限らず、誰もが目的地に到着後の楽しい計画を頭に描いていたはずだ。が、鳥が激突したことによって、旅客機は2万フィートから一気に海の中へ。いかにも恵まれたひとたちの、幸せになること間違いなしだった旅物語が一転、阿鼻叫喚となる。
物語の焦点はそこから、奇跡的に命...
執筆陣
これを観れば作曲家・ラヴェルがわかる。世紀の問題作にして名曲「ボレロ」誕生に迫る『ボレロ 永遠の旋律』
一度聴いたら忘れられないリズム・パターンとメロディ、反復の面白さ……。モーリス・ラヴェルの名や「ボレロ」という表題を知らなくても、この曲を聞いたことがある人は世界中にあふれているはずだ。個人的には、ジョージ・ガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」と共に、クラシック音楽とジャズの間に橋を架けた楽曲という印象も持つ。この映画は、作曲家ラヴェル(発音は、「ヴェ」にアクセントがつく)が「ボレロ」を制作していく過程と、当時の評判、そして晩年の姿にスポットを当てた劇映画である。
ラヴェルは1875年生まれ、「亡き王女のためのパヴァーヌ」、「水の戯れ」、「マ・メール・ロワ」、「夜のガスパール」な...
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彼はなぜ死んだ? 誰が殺した? 大迫力の裁判シーンを含む大作ミステリー
フランスでは、あっという間に動員130万人超えの大ヒット。カンヌ国際映画祭では最高賞パルムドールを受賞、ゴールデン・グローブ賞2部門受賞を果たし、アカデミー賞5部門ノミネート中の大作ミステリー『落下の解剖学』が2月23日より全国公開される。
「冬の山荘で、作家の男が転落死した状態で発見された」、「疑いがかかったのは、やはり作家である妻」、「事件に関する唯一の証人と言えるのは、視力に障害を持つ11歳の息子」。この3つをメインテーマとして、実に丁寧に、地に足をしっかり付けた形で物語が描かれてゆく。「妻は作家だから、トリックのやり方もいろいろ知っているのではないか?」とか、「息子はどこまで目が...
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自分が「どの側」にいるかで捉え方が逆転するに違いない、147分のリアリズム『逆転のトライアングル』
第80回ゴールデングローブ賞で2部門にノミネート(ミュージカル・コメディ部門の作品賞、およびトイレの清掃婦を演じたドリー・デ・レオンの助演女優賞)。人間の見栄と欲をむき出しにした147分のリアリズム、『逆転のトライアングル』が2023年2月23日よりTOHOシネマズ 日比谷他にて全国公開される。
映画に接する時、あらかじめ、誰(どのキャラクター)が主役かを頭に叩き込んで作品を観るファンも少なくないときく。そうなるとこの作品、どうなるのだろう。見ようによっては主役だらけになるからだ。大きな舞台となるのは、豪華客船。選ばれしお金持ちしか乗船が許されないであろうことは疑いようがないけれど、その...