執筆陣
大ヒットドラマ「おいしい給食」がseason3になって戻ってきた。ヒロイン「大原優乃」は、「全力で取り組んだ愛先生に注目してほしい」
市原隼人主演の大ヒットシリーズ、「おいしい給食」のseason3が10月より順次放映開始となった。
市原演じる中学校教師・甘利田幸男は、何よりも給食を愛する男。season1では「給食は、なぜおいしいのか」というテーマに会食経験の大切さを説き、season2では「給食と健康食」をテーマに、おいしく食べてこそ健康に繋がると述べた。そしてseason3では、「給食の完食主義」をテーマに、強制されないと人は成長しないと信じて疑わなかった時代に対するアンチテーゼを描く。
このseason3は、北海道の函館市でロケを敢行。北の地オリジナルの献立や食材に囲まれて、甘利田幸男の新たなる給食道が始まる。...
執筆陣
生誕125年を迎える伝説的建築家/デザイナーの、愛と創造の根底に迫るドキュメンタリー『アアルト』
いきなり自らの不明を告白してしまうが、アルヴァ・アアルトの名をここで初めて知った。映画鑑賞イコール「知を得ること」だと思っている私には、もう、これだけでも大きな収穫なのだが、彼の建築やデザインがまた、なんともクールでかっこいい。落ち着いた色合い、思いっきり背伸びしたくなるほど高い天井、いっぱいに広げられた窓枠。我々が住んでいる惑星の空が持っている広さと奥行きに深いリスペクトを捧げながらの名建築群であったのだろうなと、なんだかしみじみしてしまった。そして頭の中に、やはりフィンランド出身のドラム奏者エドワード・ヴェサラや、サックス奏者ユハニ・アールトネンの音楽が湧き出したのだった。
監督を務...
執筆陣
「まるで1本の映画を観ているようだ」と高く評価された漫画が、豪華ラインナップで実写映画化。『アンダーカレント』公開
「漫画界におけるカンヌ映画祭」ことフランス・アングレーム国際漫画祭(来年で50周年を迎える)のオフィシャルセレクションに選出された作品が、満を持して実写映画化された。豊田徹也・原作の長編漫画『アンダーカレント』の世界が、果たしてどのように、生身の人間によって浮かび上がるのか。これは身を乗り出さずにはいられない。
家業の銭湯を継ぐ主婦・かなえ(真木よう子)が主人公。平和な毎日を過ごしていたはずなのに、突如、夫の悟(永山瑛太)が失踪する。だが、かなえは銭湯を続行する。数日後、堀と名乗る男(井浦新)が、自分を雇ってくれないかと銭湯に訪ねてくる。資格も持っていて、湯沸かしのノウハウも知っている。...
執筆陣
ロック・ファン垂涎の発言と映像の連続! “カナダのウッドストック”は、こうして生まれた。『リバイバル69 ~伝説のロックフェス~』
1969年9月13日にカナダで行われた野外フェス「トロント・ロック・アンド・ロール・リバイバル」といえば、20世紀ロックのファンなら大体知っているはずだ。ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、エリック・クラプトン、クラウス・フォアマン、アンディ・ホワイトのライヴ(プラスティック・オノ・バンドの第1回ステージ)が行なわれ、その模様はアルバム『平和の祈りをこめて』に記録されている。ほか、D.A.ペネベイカー(というカナ表記が定着しているが、ペニベカーと聞こえる)の実況映像作品『スウィート・トロント』もあり、こちらも多くのロック好きの胸をときめかせてきた。私はこれでリトル・リチャードに圧倒され、はるば...
執筆陣
令和に蘇る昭和な雰囲気満載の探偵映画『LONESOME VACATION』で、印象的な人物を演じた「さかたりさ」にインタビュー。「初めての役柄を演じて自信がつきました!」
リーゼントでキメた私立探偵・古谷栄一の元に現れたのは、元カノの今日子。今日子は、急逝した父親の遺品から出てきた古いフィルムに映る、若かりし父親の隣で微笑む見知らぬ女性を探したいという。フィルムの残像を手がかりに、城ヶ島を訪れた二人の、奇妙で短い調査(バカンス)が今、幕を開ける……。
10月7日(金)から新宿K's cinemaで上映される『LONESOME VACATION』(プロデューサー;森岡龍/監督;下社敦郎)には、このような惹句が躍る。
さかたりさは、本作で「若かりし父親の隣で微笑む見知らぬ女性」と、「その娘である美優」の二役を好演している。すでにドラマ「この初恋はフィクションで...
執筆陣
監督デビュー100周年記念上映。あの映画の、あの場面の「魔法」が解き明かされてゆく。『ヒッチコックの映画術』
いまなお観る者をスリルに引き込む名匠、アルフレッド・ヒッチコック監督の頭の中にスポットを当てた、実に興味深い一作だ。私は「映画は可能な限り劇場で」派だが、ヒッチコックとスタンリー・キューブリックに関してはDVDのボックス・セットを持っている。どんな伏線がひそんでいるかわからないし、戻したり静止して確認したくなる事項もたっぷりあり、しかも発想がずばぬけているから、自分もこれをどうにかして文章上に影響させることができないかと、目を皿のようにして見てしまうのだ。
ヒッチコック作品における様々な演出法を、「ヒッチコック自ら解説する」というテイなのが、本作『ヒッチコックの映画術』である。イギリス風...
執筆陣
1970年のロンドンに、アメリカン・ロックの嵐が吹き荒れた。伝説の公演を4Kで完全に復元!
泥臭く、力強く、筋が通っている。根底にブルースへの深い愛情がある。だから私はクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルが好きだ。存続期間は1968年から72年まで。再結成は一度もしていない。はっきりいって過小評価気味だと思うが、その風潮が是正される大きなきっかけになるであろう映画『クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド』が、9月22日から角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開される。
1950年代後半に主要メンバーが出会った頃の話や、前身グループ“ゴリウォグス”について触れられているのも親切だし、そこからクリーデンス(欧米での略称...
執筆陣
「権力欲と根深い腐敗を巧妙に描いた悲痛な物語」と評された、気鋭監督の長編デビュー作『沈黙の自叙伝』が日本上陸
インドネシアにおける、外面のいい初老の将軍「プルナ」と、使用人「ラキブ」の物語だ。ラキブの父は服役中で、兄は海外に出稼ぎに出ている。そしてラキブはプルナが所有する空き屋敷で、唯一の使用人として働いている。庶民である彼にしてみれば大抜擢だろう。しかもプルナは彼に優しく接する。
が、プルナにはしっかり裏の面があった。冷酷で、無残で、さらなる権力を得るためには手段を選ばないところがあった。それを知って葛藤してゆくラキブの姿が、細かに描き出される。それに、いくらプルナと親しさを深めたところで、ラキブが庶民であり、使用人であることには変わりない。自分たちが住む地域のライフラインを整備してほしいと訴...
執筆陣
田辺・弁慶映画祭で注目の作品『はこぶね』が、9月9日よりポレポレ東中野で上映。大西諒監督、寺西涼、愛田天麻にインタビューした
気鋭監督の登竜門といわれる第16回田辺・弁慶映画祭で、弁慶グランプリほか3冠を受賞。第23回TAMA NEW WAVEでもグランプリとベスト男優賞(木村知貴)に輝いた一作が、大西諒監督の長編第一作『はこぶね』だ。
すでにテアトル新宿で上映され、話題を集めているが、来る9月9日(土)からはポレポレ東中野で上映されることが決定。それに先立ち、大西諒監督、音楽とカメラ担当の寺西涼、劇中でムードメーカー的な役柄・大友千沙を演じる愛田天麻の三名に話を聞いた。
――この作品に取り組んだきっかけを教えていただけますか。
大西諒(監督 以下 大西) 映画を作る前に10年ほど会社勤めをしていたのですが、そ...
執筆陣
戦友の怪死の真相を暴くべく、帰還兵が動き出す。彼につきつけられた現実とは……
『ヒトラーの贋札』から15年余り。ステファン・ルツォヴィツキー監督の最新作『ヒンターラント』が9月8日から新宿武蔵野館ほかで全国公開される。
主人公のペーターは元刑事。第一次世界大戦の兵士でもあったが、敗戦により、戦後はロシアの捕虜収容所に閉じ込められてきた。それを終えてようやく故郷に戻ることができたのはいいが、「勝てば官軍」なんとやらで、敗残は敗残だ。家に戻っても、いるはずの家族もなく、「戦後の世の中の流れ」にもついていけない。酒場で飲んでいると、管楽器やドラムの入ったバンドがリズミカルな音楽を演奏していた。「これは何だ?」「ジャズよ」「なんだその音楽は。戦前にはワルツとオペレッタしか...
執筆陣
天才芸術家の世界にようこそ! 「ダリの世界」に足を踏み入れた美術青年が見たものとは? 『ウェルカム トゥ ダリ』公開
興味の尽きない芸術家、サルバドール・ダリを、おそらくかつてない角度から描いたドラマ映画が公開される。主な舞台は1974年のニューヨーク。ダリと妻のガラに気に入られた青年ジェームスの視点を中心に、物語が繰り広げられてゆく。
ジェームスがいかにしてダリ夫妻と知り合ったかは本編にガッチリ描かれているので割愛するが、なにしろダリとガラのキャラクターが超強烈なので、見ているうちに「ジェームス、大変だったろうな」と感情移入してしまうのは私だけではないはずだ。ダリはもう“晩年”、すでにエスタブリッシュメントの域になって久しく、年上妻のガラも老いが目立ち始めた。なのだがガラは、たいして才能があるとも思わ...
執筆陣
『トレインスポッティング』やポン・ジュノを愛する中国の才人が放つ、超スリリングな初監督作『兎たちの暴走』
「次はどうなるのか?」と、ハラハラしながら見入った。2020年の第33回東京国際映画祭のワールドプレミアとして上映されて話題を呼んだ作品が、ついに全国公開されることになったのは大きな喜びだ。監督のシェン・ユーは、中国で最も注目されている気鋭であるときく。彼女が初監督作品の題材としたのは、2011年に起きた事件。母と娘が、娘の同級生を誘拐・殺害するという、「事実は小説より奇なり」を地で行くような事柄をベースとして、ときに冷酷に、ときに物語性豊かに描く。
映画の冒頭は、いわば「現在」。事件の後である。そこから一気に時が戻る。舞台は、重工業が盛んな四川省の攀枝花市。父親、継母、弟と決して豊かと...