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ネオジム磁石採用でデビュー作をリファイン。 プラタナス 3.0S
著名なMC型カートリッジのビルダーであり、自らプラタナスのブランドでフォノカートリッジを手掛けている助廣哲也氏。彼の最新作プラタナス3.0Sを紹介する。
本機はデビュー作のプラタナス2.0Sをリファインしたものと理解すればいい。アルミニウム合金製の中空テーパードカンチレバーに、特殊ラインコンタクト形状のダイア無垢針を組み合わせた鉄芯巻枠の発電系は共通する。発電回路は大型の後方ヨークで剛性を高めると同時に、異なるアルミ合金を組み合わせたボディも合理的。両者を比べると自重がわずかに軽くなり適応性を高めている。
プラタナス3.0Sは、本誌試聴室で聴いている。お馴染みのリファレンス・システムにエ...
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名盤ソフト 聴きどころ紹介25/『シナトラズ・シナトラ』『スウィング! シナトラ=ベイシー=クインシー』『マイ・ウェイ』 Stereo Sound REFERENCE RECORD
フランク・シナトラ(1915〜1998)は、20世紀を代表するエンターティナーのひとりだ。音楽ファンのみならずオーディオファイルからも愛されてきた、イタリア系アメリカ人の歌手である。かつて米国モービルフィデリティは、彼のキャピトル時代のアルバムを集めた豪華な16枚組ボックスLPセットを限定発売したことがある。
ステレオサウンドは、オーディオファイルを対象に高音質のSACDやCD、LPレコードを制作している。フランク・シナトラの作品は、昨年『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』のシングルレイヤーSACD+CDを第一弾としてリリース。ラスヴェガスのサンズ・ホテルズ&カジノでのライヴ(196...
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個性派DAC・サンバレーSV192PROⅡは、コストパフォーマンスに優れプロユースにも適したPCM専用機
サンバレーのSV192PROⅡは、好評だった前作の次世代モデル。12AU7を2本使った管球式出力部とアナログVUメーター、そして豊富なサンプリング変換回路が特徴の、プロユースにも適した意欲的なハイレゾ対応機だ。パワード・バイ・M2TECHとあるのは、イタリアのM2TECHによるUSB入力基板(hiFace Two)の搭載を意味している。
豊富なデジタル入出力と外部クロック入力対応など、プロ機らしい装備を誇る本機はDACにTIのPCM1792を採用する。192kHz/24ビットまでのPCMに対応するが、DSDには非対応。DSD音源の再生には、手持ちのUSB接続のパソコン側でPCM変換するな...
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MM型から最適な特性を引き出すアイテムと、フォノEQ経由でデジタル音源を愉しむ機器。 オーロラサウンド AFE10,AFE11
オーロラサウンドから、MMエキスパンダーのAFE10とRIAAコンバーターのAFE10という趣味性の高い機器が発売された。本誌試聴室で試してみたのだが、なかなか面白く有意義な製品だったので紹介したい。
MMエキスパンダーのAFE10は、アンプのMM型フォノ入力とフォノカートリッジの間に挿入する機器だ。主宰者の唐木志延夫氏によれば、47kΩ負荷で固定されているMM型入力ではヴィンテージのフォノカートリッジを組み合わせた場合に高域が強調されすぎたり音が暴れたりするという。AFE10は負荷抵抗(Ω)と負荷容量(pF)を段階的に変化できるのが特徴。聴感でエネルギーバランスを調整する機器である。ス...
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巧みな吊り構造による高耐荷重インシュレーター。音楽描写のピントが合い躍動感ある伸びやかな音に。ウェルフロート「WELLDELTA」
ジークレフ音響のブランド、ウェルフロートは、巧妙な吊り構造によるボードやインシュレーターである。最近はグランドピアノ用も好評で、録音や演奏会場でも使われていると聞く。ここで紹介するウェルデルタは、元々は楽器用として開発された単体のインシュレーター。ステンレス製の堅牢な構造が大きな特徴である。
ウェルフロート
WELLDELTA(ウェルデルタ)
28mm高フラットブロック付 ¥36,000/個(写真左)
5mm高アルミリング付 ¥33,000/個(中央)
20mm高スパイク用ブロック付 ¥36,000/個(右)
●仕様:3辺に小型フロートメカ
●材料:ステンレス、アルミ、樹脂
●耐荷重:2...
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サエク レコードプレーヤーキャビネット「SBX10R」 テクニクスSP-10R専用の高剛性ステンレス製キャビネット 同社アームと組み合わせ、鮮烈な躍動感が聴けた
テクニクスSP-10R専用に設計された高剛性キャビネット
サエクの新製品SBX10Rは、ダイレクトドライブ方式ターンテーブルのテクニクスSP-10R専用に設計された高剛性キャビネット。その重量は35.8kgもある。もちろん、SP-10Rを含まないキャビネット単体の数値だ。この重さは無垢のS303ステンレススチール鋼だからこそで、アルミニウム製なら大幅に軽くなるはず。
すべての面は丁寧なフライス加工で平面に仕上げられており、SP-10Rが収まる丸穴は放電ワイヤー加工で開けられている。製造はWE4700トーンアームと同じく、東京・国立の内野精工によるもの。筐体の奥側と左側にはトーンアームを増...
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シリーズを刷新の米国製MI型カートリッジ。 グラド Opus3,Prestige Red3
米国ニューヨーク州ブルックリンにあるグラドは、3世代にわたるフォノカートリッジの名門ブランド。ティファニーの時計技師だったジョセフ・グラド氏が自分でフォノカートリッジを製作し、1953年にグラド・ラボラトリーズを設立したのがスタートだ。
今回はTimbreという中級クラスのオーパス3と、安価なプレステージ・レッド3を聴いた。ともに発電方式はMI(ムービングアイアン)型に分類されるが、磁性材の軽量円盤を動かすというグラド独自の構造。銅線が巻かれた、左右合計4本のポールで発電するという仕組みである。
オーパス3はメープル材ハウジングを採用し、ここで聴いたのは4mVの高出力タイプ。他にインダン...
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オーディオテクニカのヘッドホンアンプ「AT-BHA100」とD/Aコンバーター「AT-DAC100」は、小型ながらも鮮度が高く上品な音色が特徴
オーディオテクニカから真空管を搭載したバランス対応ヘッドフォンアンプのAT-BHA100と、高性能DAC素子を採用するD/AコンバーターのAT-DAC100が登場。同社は超弩級のAT-HA5050H(国内未発売)や小型のAT-HA22TUBE(生産完了)で真空管を扱うノウハウを蓄積してきた。
Headphone Amplifier
オーディオテクニカ
AT-BHA100
オープン価格(実勢価格12万円前後)
●ヘッドフォン出力:4系統(Φ6.3mm標準フォーン×2、XLR、Φ4.4mmバランス)
●LINE出力:1系統(RCAアンバランス)
●LINE入力:2系統(RCAアンバランス、X...
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デノン「DL-A110」 DL-103+放送局用再現シェルの記念モデル。 厚い音調とノスタルジックな外観で安堵させる
驚異的ロングセラーを忠実に復刻
昨年、デノンは創立110周年を迎えたという。のちに日本コロムビアとなる日本蓄音機商会が誕生した、明治43年(1910年)を起点に数えた年数である。
ここで紹介するのは、記念モデルとなるDL-A110。日本コロムビアがNHKの協力を得て開発した放送局用フォノカートリッジであるDL-103を、往年の放送局用トーンアームのヘッドシェル(復刻)と組み合わせたもの。DL-103がコンシューマー市場に発売されたのは1970年。ステレオの国産MC型フォノカートリッジの標準原器というべき、驚異的ロングセラー製品である。
DL-103は単売品と同じなので、ヘッドシェルを観察...
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フルバランス伝送対応のデュアルモノ半導体プリ。 オーロラサウンド PREDAⅢ
オーロラサウンドを主宰する唐木志延夫氏は、楽器を創る職人のように素子と回路にこだわってデザインする人物。オール半導体プリアンプのPREDA(プレダ)は、新設計の3世代目となるPREDAⅢへと進化した。300B真空管をプッシュプルで駆動するPADA300B(2019年)が奏でる美音が、唐木氏に新型プリアンプの開発を促したに違いない。
PREDAⅢでは音量調整にアルプス製の最高級品を奢った。しかも、フルバランス伝送のために最大規模の4連構成を採用。この真鍮削り出しの大型可変抵抗器は、音質の良さとともに操作感の好ましさで世界的に定評がある。ちなみに、本誌リファレンスのエアータイトATC5は同型...
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VPI Prime Signature 重量級設計に高感度アーム搭載の米国モデル。 ダイレクト盤では見事な臨場感で鬼気迫る再生
米国製アナログプレーヤーの老舗的存在
VPIインダストリーズ社は、家族経営を貫く米国製アナログプレーヤーの老舗的な存在。紹介するプライム・シグネチュアはプライムシリーズの最高峰で、インバーテッドベアリング構造のスピンドルシャフトが与えられた重厚長大指向の新製品。9kgのアルミニウム製プラッターはステンレススチール材と組み合わせて振動モードを分散している。キャビネットは厚いアルミニウム板を樹脂ラッピングした2枚のMDF材で挟む構造。剛性と内部損失をともに高めている。同社伝統といえるワンポイント支持のJMW10-3Dトーンアームは、可動部分のアームワンドが3Dプリンター技術による一体化製造。...
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マーティン・ローガン「ElectroMotion ESL X」 一世を風靡した米国発祥の静電型スピーカーが再上陸。 優れた応答性と透明感は軽量振動板ならでは
超軽量振動板(振動幕)ならではの応答性に優れた透明感のあるサウンド
久しぶりの静電型である。マーティン・ローガンは、スピーカーらしからぬルックスと水平指向性の広い静電パネルで一世を風靡した米国発祥のブランド。金属コーティングを施した透明振動幕を縦方向に張ることで湾曲面を構築している、ひじょうに巧妙な設計だ。現在は研究開発を米国で行ない、カナダで生産されている。ここで紹介するEM-ESL Xはスリムな静電パネルが特徴で、前後に配した約20㎝口径のダイナミック型ウーファーが400Hz以下の低音域を担当する、ハイブリッド構成となっている。管球王国試聴室で音を鳴らしてみた。
超軽量振動板(振動幕...