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ヴァルテレ「MG1 PKG」 トラジ氏設計の新作が久し振りに登場。 曖昧さを排した音で精緻な再生が聴けた
澄み渡った音と敏感さが相乗的に高まった精緻さが印象的
英国ロクサンの創業者でアナログプレーヤーの設計者、トラジ・モグハダム氏が主宰するのがヴァルテレである。彼とは海外のショウで何度も会って話をしているので、ずいぶん時間をかけて日本市場に登場したものだと思う。MG1は中堅クラスのアナログプレーヤーで、フォノカートリッジは付属していない。
筐体は硬質で精度の高いアクリル製。きわめて精度の高い軸受けとプラッターは見事というしかない。センターピンが外せる仕様はロクサンがオリジナル。ベルト駆動のモーターは小型のACシンクロナス型である。プラッターの表面にはアナログ盤とインピーダンスが近いというキャ...
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SOtMのネットワークトランスポート「sMS-200ultra Neo」は選ぶ楽しみのあるアイテムだ。ノーマルバージョンと、2種類のスペシャル・エディションの進化を聴き比べた
これからのデジタルオーディオをネットワークに託している私は、自宅のオーディオシステムでネットワークオーディオを実践している。近年はハイレベルなピュアオーディオの視点で設計されている、優れたネットワークプレーヤーや周辺機器が増えてきた。英国リンがDS(デジタルストリーム)の名称で世界初の本格的ネットワークプレーヤーをリリースしたのは今から14年も前の2007年のこと。それをスタートポイントにして、ネットワークオーディオ関連機器は急カーブを描くように進化を遂げてきている。
ここでは私が注目している高音質ネットワークトランスポートを紹介しよう。一般的なUSB DAC(D/Aコンバーター)と組み...
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つくりては語る『AUDIO NOTE』。音楽という芸術作品、文化に向き合い、その再生におけるあらゆる可能性を探り「美」を追求する
創業者 近藤公康氏と銀線へのこだわり
神奈川県川崎市。川崎大師の参道として延びた国道沿いの住宅エリアに、株式会社オーディオ・ノートがある。従業員は7名というから、決して大きな企業規模ではない。だが、同社はハイエンドオーディオの分野で知られるビッグネーム。オーディオと音楽を愛してやまないエンスージァストから、創業者の近藤公康氏の名を冠する「KONDO」と呼ばれて愛される、世界的なブランドなのだ。
登場いただくのは、最高経営責任者の芦澤雅基氏。そして、サウンドディレクター/R&Dマネージャーの廣川嘉行氏である。まずはオーディオ・ノートの黎明期を辿る。
創業者の近藤公康氏は、米国CBSと日本の...
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熟練の時計職人が組み立てるスイス製MC型。 ゴールデンバーグ Brilliant
スイスからMC型の新しいフォノカートリッジ、ゴールデンバーグが登場した。現在のEMTやエクスクィジット、ターレス・トーンアームを手掛けるハイフィクション社の新ブランドで、熟練の時計職人が組み立てる製品という。ここで紹介するのは3機種あるうちの中間モデル「ブリリアント」だ。ボロン製カンチレバーにマイクロリッジ針を搭載しており、6Ωのインピーダンスで0.4mVの出力というから、鉄芯タイプであろう。コイル巻線は4N銅線ということだ。磁石には強力なネオジムに渦電流を防ぐアールコ鉄を使っているというが、その詳細は不明である。ハイフィクション社はEMTの継承からフォノカートリッジ製造を始めた経緯があ...
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バランス入力が魅力のMC昇圧トランス CSポート「CMT1」 ノイズフロアーが下がり音楽を鮮明に表出する
バランス接続することにより、さらにダイナミック感が増す
無帰還の管球式アンプやエアーフロート方式の重厚なアナログプレーヤーを製造しているCSポートの新製品CMT1は、バランス入力も装備している昇圧トランスである。
同社のC3EQM2(フォノイコライザーアンプ)もバランス対応の昇圧トランスを内蔵しているわけだが、そちらは適合インピーダンスが3Ω〜20Ωで、CMT1は1.5Ω〜40Ωと広めの設定。コア材は共に透磁率に優れたスーパーパーマロイ。同社によると、CMT1はファインチューニング的な範疇で巻数を増やして対応力を広げているという。背面はオーソドックスな端子群で、グラウンドのフロートスイッ...
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EMTの新型ヘッドシェル一体型MCフォノカートリッジ、ステレオ仕様3機種を聴く。4N銀コイル80周年モデルは、先鋭的で緻密な音
EMTのヘッドシェル一体型フォノカートリッジは、ヨーロッパを代表する放送局用カートリッジとして君臨してきた。有名なステレオ仕様のTSD15は1965年に誕生しており、今も熱烈な愛用者が存在する。
2014年からEMTのフォノカートリッジを製造しているのは、ターレストーンアームで有名なミッハ・フーバー氏が主宰するスイスのハイフィクション社。このたび、新型のヘッドシェル一体型のMCフォノカートリッジが発表された。資料を紐解くと、ステレオのTSDが3機種とモノーラルのTMDが3機種、加えて世界限定80個というTSDアニバーサリーが登場する。TSDとTMDには一般的なSME互換タイプとEMT製ト...
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ネオジム磁石採用でデビュー作をリファイン。 プラタナス 3.0S
著名なMC型カートリッジのビルダーであり、自らプラタナスのブランドでフォノカートリッジを手掛けている助廣哲也氏。彼の最新作プラタナス3.0Sを紹介する。
本機はデビュー作のプラタナス2.0Sをリファインしたものと理解すればいい。アルミニウム合金製の中空テーパードカンチレバーに、特殊ラインコンタクト形状のダイア無垢針を組み合わせた鉄芯巻枠の発電系は共通する。発電回路は大型の後方ヨークで剛性を高めると同時に、異なるアルミ合金を組み合わせたボディも合理的。両者を比べると自重がわずかに軽くなり適応性を高めている。
プラタナス3.0Sは、本誌試聴室で聴いている。お馴染みのリファレンス・システムにエ...
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名盤ソフト 聴きどころ紹介25/『シナトラズ・シナトラ』『スウィング! シナトラ=ベイシー=クインシー』『マイ・ウェイ』 Stereo Sound REFERENCE RECORD
フランク・シナトラ(1915〜1998)は、20世紀を代表するエンターティナーのひとりだ。音楽ファンのみならずオーディオファイルからも愛されてきた、イタリア系アメリカ人の歌手である。かつて米国モービルフィデリティは、彼のキャピトル時代のアルバムを集めた豪華な16枚組ボックスLPセットを限定発売したことがある。
ステレオサウンドは、オーディオファイルを対象に高音質のSACDやCD、LPレコードを制作している。フランク・シナトラの作品は、昨年『シナトラ・ライヴ・アット・ザ・サンズ』のシングルレイヤーSACD+CDを第一弾としてリリース。ラスヴェガスのサンズ・ホテルズ&カジノでのライヴ(196...
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個性派DAC・サンバレーSV192PROⅡは、コストパフォーマンスに優れプロユースにも適したPCM専用機
サンバレーのSV192PROⅡは、好評だった前作の次世代モデル。12AU7を2本使った管球式出力部とアナログVUメーター、そして豊富なサンプリング変換回路が特徴の、プロユースにも適した意欲的なハイレゾ対応機だ。パワード・バイ・M2TECHとあるのは、イタリアのM2TECHによるUSB入力基板(hiFace Two)の搭載を意味している。
豊富なデジタル入出力と外部クロック入力対応など、プロ機らしい装備を誇る本機はDACにTIのPCM1792を採用する。192kHz/24ビットまでのPCMに対応するが、DSDには非対応。DSD音源の再生には、手持ちのUSB接続のパソコン側でPCM変換するな...
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MM型から最適な特性を引き出すアイテムと、フォノEQ経由でデジタル音源を愉しむ機器。 オーロラサウンド AFE10,AFE11
オーロラサウンドから、MMエキスパンダーのAFE10とRIAAコンバーターのAFE10という趣味性の高い機器が発売された。本誌試聴室で試してみたのだが、なかなか面白く有意義な製品だったので紹介したい。
MMエキスパンダーのAFE10は、アンプのMM型フォノ入力とフォノカートリッジの間に挿入する機器だ。主宰者の唐木志延夫氏によれば、47kΩ負荷で固定されているMM型入力ではヴィンテージのフォノカートリッジを組み合わせた場合に高域が強調されすぎたり音が暴れたりするという。AFE10は負荷抵抗(Ω)と負荷容量(pF)を段階的に変化できるのが特徴。聴感でエネルギーバランスを調整する機器である。ス...
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巧みな吊り構造による高耐荷重インシュレーター。音楽描写のピントが合い躍動感ある伸びやかな音に。ウェルフロート「WELLDELTA」
ジークレフ音響のブランド、ウェルフロートは、巧妙な吊り構造によるボードやインシュレーターである。最近はグランドピアノ用も好評で、録音や演奏会場でも使われていると聞く。ここで紹介するウェルデルタは、元々は楽器用として開発された単体のインシュレーター。ステンレス製の堅牢な構造が大きな特徴である。
ウェルフロート
WELLDELTA(ウェルデルタ)
28mm高フラットブロック付 ¥36,000/個(写真左)
5mm高アルミリング付 ¥33,000/個(中央)
20mm高スパイク用ブロック付 ¥36,000/個(右)
●仕様:3辺に小型フロートメカ
●材料:ステンレス、アルミ、樹脂
●耐荷重:2...
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サエク レコードプレーヤーキャビネット「SBX10R」 テクニクスSP-10R専用の高剛性ステンレス製キャビネット 同社アームと組み合わせ、鮮烈な躍動感が聴けた
テクニクスSP-10R専用に設計された高剛性キャビネット
サエクの新製品SBX10Rは、ダイレクトドライブ方式ターンテーブルのテクニクスSP-10R専用に設計された高剛性キャビネット。その重量は35.8kgもある。もちろん、SP-10Rを含まないキャビネット単体の数値だ。この重さは無垢のS303ステンレススチール鋼だからこそで、アルミニウム製なら大幅に軽くなるはず。
すべての面は丁寧なフライス加工で平面に仕上げられており、SP-10Rが収まる丸穴は放電ワイヤー加工で開けられている。製造はWE4700トーンアームと同じく、東京・国立の内野精工によるもの。筐体の奥側と左側にはトーンアームを増...