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ポップでスタイリッシュな6篇の怪談ドラマ。韓国映画シーンの若手気鋭が大活躍する『怪談晩餐』
日本のオムニバステレビドラマ「世にも奇妙な物語」を思い出す人も多いかもしれない。この『怪談晩餐』には、6種の怖い話が収められている。高校生の“踊ってみた”がとんでもない惨禍を引き起こす「ディンドンチャレンジ」はぜひアイドルファンに見てほしいところだし、姉と母からのプレッシャーの中で生きる女子高生を描く「四足獣」も秀逸。高級スポーツジムが恐怖の場に変わる「入居者専用ジム」も見どころだった。
ホラーの醍醐味は、「筋書きの怖さ」、「色彩感覚も含めた描写の細かさ」、「音響の迫力」の融合にあると私は思っている。その点、この作品は見ごたえがあり、そこに、なんというのだろう、現代韓国のファッショナブル...
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8月1日公開の『ツイスターズ』は、まさに “音の映画” だ! スカイウォーカー・サウンドが生み出した大迫力サラウンドが、大胆な演出で観客を興奮の渦に巻き込む
1996年に公開された『ツイスター』の記憶が甦る新作映画を、劇場公開に先駆けて新宿ピカデリー・シアター6で体験してきた。
旧作を体験した人には懐かしくもあり(パッケージをヘビロテしたオーディオビジュアルファンも多いはず)、未見の人には新鮮な驚きを与えてくれる作品だ。日本では竜巻の脅威はさほど感じないが、米国の中西部では今もって大きな被害が発生する。一作目は竜巻チェイサー同士のデータ収集競争が軸になっていたが、本作は竜巻の被害者を餌にする不動産投資チームと、竜巻を追いかけるハンターとの攻防が描かれている。
物語の鍵を握るのが、かつて竜巻を無力化することに心血を注いでいた主人公、ケイト(デイ...
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修羅場のあとにやってくる「ほんわか感」。母の誕生日に、三姉妹が繰り広げる物語。『お母さんが一緒』
江口のりこ、内田慈、古川琴音を三姉妹にキャスティングするという発想に唸り、どこがどうなっていくのか先の読めない展開にハラハラさせられ、物語の“白一点”とばかりに強い存在感を放つ三女の恋人に「この男はなんなんだ?」と疑問が湧いてきて……。予想を超えたアクション・シーン(といっていいだろう)も含みながら、なぜか、観終わったあとはほんわかした気分にも包まれてしまうという、なんともユニークな作品だ。
原作は、ペヤンヌマキが2015年に発表した同名の舞台であるという。それを橋口亮輔監督(キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位など数多くの栄誉に輝く『恋人たち』から、9年ぶりの長編作品)が脚色した。長女...
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いまおかしんじ監督の『愛のぬくもり』が公開。主演「小出恵介」は「新鮮な経験となった」、共演の「風吹ケイ」は「監督にかけてもらった言葉がすごく心強かった」
映画『愛のぬくもり』の初日舞台挨拶が7月6日(土)に都内で開催され、監督のいまおかしんじ、主演の小出恵介、風吹ケイが登壇した。この映画はある日突然、街中でぶつかって階段から転げ落ち体が入れ替わってしまった既婚の男性小説家と、独身女性美容師の物語。90分少々の中に、濃厚な人間模様が注ぎ込まれている。ここでは会見の模様をお伝えしたい。
――過去にも男女が入れ替わる作品はいっぱいあったかと思いますが、演じていてどういった感想を持ちましたか?
小出 男女入れ替わり物の作品には初めて挑戦しましたが、ファンタジーと言いますか、超越した内容でしたので、自分としても新鮮な経験となりました。
――小出さん...
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あの男にもスランプの時期があった。「転機」の1957年を描くドラマティックな力作『フェラーリ』
ジェームズ・マンゴールド監督『フォードvsフェラーリ』は1966年の物語だったが、こちらのマイケル・マン監督作品は1957年に的を絞っている。この57年、自動車メーカー「フェラーリ」も創立者エンツォ・フェラーリもスランプにあった。経営は悪化し、息子の死もあってかエンツォと妻の関係は冷え冷えとしたものになり、愛人との関係は悪くなかったものの、彼女との間に生まれた男児の認知はかなわない。そのなかでイタリア1000マイルを走るロードレース“ミッレミリア”(この年の開催が最後となった)に取り組んでいく、エンツォの姿が描かれる。
私の強い関心は「1957年当時のロードレースとは、どんなものか」にあ...