執筆陣
台湾の町はずれの老舗理髪店とその主人を中心にした、心温まる物語『本日公休』
「こういう店、昔あったなあ。町内の集会場みたいになっていて、みんなが何とはなしに近況を交換して……」。
昭和に生まれ育った私には、なんだか親しみ深い世界がこの映画にはあった。しかも、物語に登場する理髪店には、それに加えて「猫」がいて、客を招いているのだ。猫映画として捉えることも可能だろう。
舞台となっているのは、台中にある老舗理髪店。店主のアールイは40年にわたって切り盛りしている文字通りのベテランで、店を訪れる老若男女に対応し、小気味よいハサミさばきをみせる。もっとファッショナブルでトレンディなバーバーショップはほかにもあろうが、アールイの名人芸を求めてやってくる顧客のあとはたたない。...
執筆陣
HiVi2024年秋号、9月17日発売。『デューン 砂の惑星PART2』を筆頭に、『ネット動画 最強攻略術』、『最新高画質テレビ9機種テスト』の三大企画にご注目
巻頭特集 『デューン 砂の惑星PART2』
UHDブルーレイで発売されたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督最新作『デューン 砂の惑星PART2』。3年ぶりにお目見えとなったSF大作の続編の魅力をHiVi流にとことん紹介していきます。
前半のパートでは、本作に込められた映像、音響の両面のこだわりを徹底的に探ります。プロジェクター、AVセンター、パワーアンプ、サラウンドスピーカーなど、最新モデルをHiVi視聴室に持ち込み、ホームシアターならではの緻密かつ濃密でエモーショナルな視聴体験を詳しくリポートいたします。
後半のパートでは、本作品の映像と音響を支えている撮影監督グレイグ・フレイザーと、サウンドデ...
執筆陣
森と巨象のウェスタン! ファンキーな音楽も異彩を放つ、南インド映画の新潮流。『ジガルタンダ・ダブルX』
約3時間という長さはインド映画の常なのかもしれないが、音楽にはいささか驚いた。ファンク、ソウル・ミュージック、ディスコといった1970年代に大流行したアフリカ系アメリカ人大衆音楽の数々を意識して作られたであろうサウンドトラックが大きくフィーチャーされているのだ。ヴォーカリストのシャウトは時に、まるでジェイムズ・ブラウンである。
そして内容も、「クリント・イーストウッドとサタジット・レイの出会い」という前評判を裏切らない。この場合の“イーストウッド”とは、「夕陽のガンマン」か「ダーティハリー」か。クリント・イーストウッドとサタジット・レイの両者を好む粋な映画ファンの、その中の何パーセントか...
執筆陣
「秋葉美希」の初監督作品『ラストホール』。亡き父の足跡を追うロードムービーだが、ひねりもたっぷり
『退屈な日々にさようならを』(17年公開)、『少女邂逅』(同)などに出演した秋葉美希が主演・監督・脚本を兼ねた一作で、これが彼女にとっての初めての長編監督作品となる。若手監督の登竜門である「第17回田辺・弁慶映画祭」でキネマイスター賞を受賞し、このたび9月6日から12日にかけてテアトル新宿、22日と23日にテアトル梅田にて劇場公開される。
秋葉美希が演じる暖は、元ダンサー。亡くなった父親との関係は決してスムーズなものではなかったことが、冒頭の数分で、もう浮かび上がってくる。だから、ある意味、「ほうっておいた」。が、それでも父は父だ。死から6年が経ったころ、彼女は、故郷からやってきた幼なじ...