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『オズの魔法使』を、ドルビーシネマの大スクリーンで体験。84年の時を越えて蘇ったテクニカラーの美しい色と、ドロシーの歌声に魅了された
先週まで開催されていた「第36回 東京国際映画祭」。その一環として1939年公開の『オズの魔法使』ドルビーシネマ版が特別上映された(有楽町の丸の内ピカデリーにて。現在は上映終了)。ワーナー・ブラザースの創立100周年を記念したもので、ドルビーシネマ版が上映されるのは日本初だったそうだ。
物語の内容はもはや説明不要だろう。カンザスに住む少女、ドロシーが巨大竜巻に巻き込まれてオズの国にたどり着き、カカシ、ブリキ男、ライオンといった面々と冒険を繰り広げる……その様子がテクニカラーの映像とジュディ・ガーランドを始めとする芸達者な出演者の歌声で綴られていく。
今回は、2019年に本作の公開80周年...
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映画『太陽がいっぱい』の原作者であるパトリシアの作風、人となりに迫るドキュメンタリー映画『パトリシア・ハイスミスに恋して』
アラン・ドロン主演のヒット映画『太陽がいっぱい』は知っていたものの、その原作者であるパトリシア・ハイスミスについて考えたことはなかった。ゆえにこの作品は発見の連続だ。1950年代のニューヨーク(おそらくグリニッチ・ヴィレッジ地区だろう)が、いかに彼女の感性に刺激を与えたかもわかる。
パトリシア(1921~95)は、アメリカ・テキサス州に生まれた。トルーマン・カポーティに文才を認められ、数々の作品を発表、『太陽がいっぱい』や『見知らぬ乗客』といった映画の原作になったものも少なくない。ほか、この映画では、彼女の代名詞的な長編「トム・リプリー・シリーズ」についての言及もたっぷりだ。また、偽名で...
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1941年12月上旬の魔都・上海。あの「奇襲」直後までのスリリングな1週間を描く『サタデー・フィクション』
すこぶるスリリングな作品だ。物語中に描かれているのは1941年12月1日から7日にかけての“魔都”上海。これだけで「ワクワク感」が増す識者も多いことだろう。日米開戦(アメリカに耐えかねた日本側からの奇襲--ただしアメリカには既に筒抜けだったという)は日本目線では「12月8日早朝」なのだろうが、これは時差の関係でそうなっているだけで、世界的には「7日」のほうが、通りがいい。この「奇襲」に至るまでの日々の、上海における虚々実々が、実にスリリングに展開されてゆく。日本語・中国語・フランス語・中国語が飛び交い、モノクロによるスタイリッシュな画面、時おり登場する小編成バンドのジャズ演奏も効果をあげ...
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山崎 貴監督が、ドルビーシネマで見る『ゴジラ-1.0』の魅力を熱弁! “肉眼でゴジラを見たときと同じような感覚を、スクリーンの上で体感できると思います”
山崎 貴監督最新作『ゴジラ-1.0』(ゴジラマイナスワン)が、11月3日のゴジラの日(1954年の同日に『ゴジラ』第1作が公開されたことを記念して制定)に公開される。さらに本作は通常上映に加えて、ドルビーシネマやIMAXなどのプレミアム・ラージ・フォーマットでも公開されることも話題だ。
その公開に先駆け、山崎監督と音響効果の井上奈津子さんによる、ドルビーシネマを使った作品制作に関するトークショウが開催された。ドルビーシネマとは、HDR(ハイ・ダイナミックレンジ)映像のドルビービジョンと、3D立体音響のドルビーアトモスを採用し、専用にデザインされた劇場で上映するシステムを指す。
「ゴジラ-...
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スコセッシの“手練の技”がディカプリオ×デ・ニーロを輝かせる! 今度こそ“納得の”アカデミー賞受賞なるか【映画スターに恋して:第32回】
スコセッシとディカプリオが出会うきっかけを作ったのはデ・ニーロだった
公開されるやいなや、“アカデミー賞最有力候補”の呼び声も高い『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』。そりゃそうでしょ! マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ&ロバート・デ・ニーロという黄金トリオだもの、ハズレのわけがない。
そう、3人の強い絆は知っての通り。デ・ニーロが『ボーイズ・ライフ』(93年)で初共演したディカプリオ(当時、18 or 19歳ごろ)を気に入って、朋友スコセッシに紹介してから関係が始まり、なんと30年! 『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02年)を皮切りに、スコセッシは何度もディカプ...
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ビデオテープに映り込んだ謎の姿は誰なんだ? フェイク・ドキュメンタリーの新傑作が上陸『トンソン荘事件の記録』
現実と虚構の間をゆらめくような描写に惹かれる。ざらざらした質感を持つビデオテープ映像の挿入、取材パートにおけるいささかぎこちない画面編集のつぎはぎやインタビュイーの口調や目線の硬さも印象に残る。が、これらは「現在を生きる映画のプロたち」が、「90年代に起きた事件の核に迫るドキュメンタリー映像を制作するというテイの作品」を作り込むにあたって、確信犯的に取り組んだパーツの数々なのである。
大きなテーマとなるのは、1992年に釜山の旅館「トンソン荘」で起きたむごたらしい殺人。アルバイトの男が部屋に恋人を連れ込んで殺害、しかもその一部始終を映像に記録するという展開は、いかにも、ビデオ収録が俄然、...