執筆陣
ビデオテープに映り込んだ謎の姿は誰なんだ? フェイク・ドキュメンタリーの新傑作が上陸『トンソン荘事件の記録』
現実と虚構の間をゆらめくような描写に惹かれる。ざらざらした質感を持つビデオテープ映像の挿入、取材パートにおけるいささかぎこちない画面編集のつぎはぎやインタビュイーの口調や目線の硬さも印象に残る。が、これらは「現在を生きる映画のプロたち」が、「90年代に起きた事件の核に迫るドキュメンタリー映像を制作するというテイの作品」を作り込むにあたって、確信犯的に取り組んだパーツの数々なのである。
大きなテーマとなるのは、1992年に釜山の旅館「トンソン荘」で起きたむごたらしい殺人。アルバイトの男が部屋に恋人を連れ込んで殺害、しかもその一部始終を映像に記録するという展開は、いかにも、ビデオ収録が俄然、...