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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:08】8K国際制作が充実の予感。8K制作コストが劇的に下がった
8K制作コストが下がってきた。かつては時間も掛かり、費用も掛かった。2018年2月に試験放送された『南極 氷の下のタイムカプセル』では、編集に12ヵ月掛かった。2019年2月の『南極大冒険』は15ヵ月掛かった。
ところが今、もの凄く合理化された。2019年10月に放送された『古代マヤ大発掘』は、わずか3ヵ月。5分の1に短縮されたのだ。その秘密がワークフローの合理化。
これまでは2Kに変換してオフラインで編集し、そのデータを元に8K素材を編集していたが、『古代マヤ大発掘』では、直接8Kで編集した。変換などの時間が、短縮されたのである。制作コストの低減は、8K国際制作を呼び込むのにも有利だ。...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:07】8K自然科学ドキュメンタリー『MATING GAME』。最高の専門家と作る自然科学の国際共同制作
NHKは本流分野の国際共同制作でも今、大作を撮影している最中だ。
そのひとつが、Silverback Filmsが制作し、NHK、BBC、BBCスタジオが共同制作として加わる、8K自然科学ドキュメンタリー『MATING GAME』。動物の生存戦略を描く作品だ。2022年に5本シリーズで放映予定。自然科学の大型シリーズの制作は3年を費やす。
オスとメスがいかに出会い、いかに子孫を残すかを、草原、海、極限地域など5地域で8K撮影している。例えば、エリマキシギのオスの中にはメスの格好をし、メスには同類と安心させて、すきをみて交尾に掛かるものもいる。
Silverback FilmsはBBCの元...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:06】NHK的感性を超えたエモーショナルな映像。『フランス、Paramax Filmsの音楽8K』
フランスのParamax Filmsの音楽8K作品も、NHK的感性を超えたエモーショナルな映像だ。NHKは、4月のMIPTV「ソニー・4Kシアター」上映されたParamax Films制作の『クリスチャン・マクブライド・ナイト マルタ・ジャズ・フェスティバル2018』を買い付け、既に8Kで何回も放送している。ジャズアーティストの熱演をプレイ中にしたたり落ちる大量の汗で描いた作品だ。
今回は同フェスの2019年版。これまた、たいへんエモーショナル! 「ソニー4K/8Kシアター」会場では新しいマルタ・ジャズ・フェスティバルのジャズメイヤ・ホーンのクリップを、4K(プロジェクター)と8K(液晶...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:05】たいへんエモーショナルで感情的な8Kだ。 『ザ・シティ 生きている都市』
「ディレクター自身の感動を表現した映像」こそ、NHKが国際共同制作で欲しい作品だ。サンフランシスコのプロダクション、Golden Gate 3DとNHKの共同制作の『ザ・シティ 生きている都市』の三部作、「ベネチア」「サンフランシスコ」「ハバナ」も、たいへんエモーショナルで感情的な8Kだ。
サンフランシスコのプロダクション、Golden Gate 3DとNHKの共同制作だ。Golden Gate 3Dはこれまでキューバやエルサレムを題材にした作品を制作しており、BBCやナショナル・ジオグラフィックなどに納入してきた実績を持つ。
ピーター・チャン監督は世界の各都市にカメラマンのネットワーク...
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LGこそ、有機ELテレビの先駆け。ついに登場した夢の8K対応有機ELテレビ
家庭用テレビの新たな自発光、表示パネルとして登場し、いまや高級テレビの代名詞と言っていいまでに成長した有機ELテレビ。画質に優れた(特にコントラスト比が高く、動画表示性能が高い)逸材だけに、当然と言えば、当然だが、ここまでの道のりはけっして平坦なものではなかった。
商品化の最大のネックとなったのが、量産の難しさ。世界中の名だたる大手企業が開発に着手し、大量の資金、開発パワーが投じられたが、なかなか思うような成果があがらず、1社2社と、撤退。そんな厳しい状況の中で唯一、家庭用テレビ向けの大型有機ELパネルの量産化に成功したのがLGだ(※)。
※編註:正確にはLGディスプレイが有機ELパネル...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:04】国際共同制作の8Kドキュメンタリー番組『天に光 地に彩 中国四川省ガルゼチベット族自治州』
NHKは自力で8K番組がつくれるが、NHK的なものだけでなく、バラエティに富んだ感性を集め、8Kってこんな表現ができるんだと感嘆されるような作品をプロデュースするのも、NHKの新しいミッションだ。
その典型が、国際共同制作の8Kドキュメンタリー番組『天に光 地に彩 中国四川省ガルゼチベット族自治州』での、山頂からの朝日の映像。もの凄く色が濃い、壮大な朝焼けだ。この映像には、共同制作である北京テレビのテクニカルディレクター、Guo Haojun氏が感じた色彩が反映されている。
「標高4000m級のミニャコンカ山(Mt. Minya Konka)の頂きに、真夜中に重い機材を背負って登り、午前...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:03】MIPCOM2019で分かった8Kの最前線。8Kのドラマ進出。日本映画放送、8K時代劇『帰郷』
「NHK 8KTHEATER」で上映された日本映画放送、8K時代劇『帰郷』(仲代達矢主演)。自然と人々の共存、人間の死生観をテーマにした股旅ものだ。自らメガホンを執った日本映画放送社長の杉田成道氏は8Kをどう使ったか。
「スタンリー・キュープリック監督の名作『バリー・リンドン』は、ローソク1本で撮った映画です。ローソクの暗い光を撮るためにNASAが開発した1本数億円のF0.7の超高感度レンズを買い込み、見事なローソク映像を撮りました。そのひそみにならいローソクの光を再現したかったから、8Kを選びました。8Kは柔らかく、包み込むローソクの光を見事に活写できました」
「8Kのもうひとつのメリ...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:02】MIPCOM2019で分かった8Kの最前線。8Kのドラマ進出。NHK『浮世の画家』
8Kの新しい方向性が「ドラマ」だ。これまで「8Kは花鳥風月を高精細に描くためのもの」といわれてきた。ノンフィクションには高精細映像は合うが、果たして、フィクションにはどうか?
見えすぎるのはどうか。ドラマに応用したらどうなのか。
そのトライが8KドラマのNHK『浮世の画家』。戦前との社会の激変に戸惑う老画家を渡辺謙が演じた、カズオ・イシグロ原作作品は、NHKにとっては「8Kはドラマに合うか」を試すひじょうに重要な実験だった。
私は試写にて、しっとりした質感が高精細に、そしてハイコントラストに描かれたと、見た。監督の渡辺一貴氏(NHKエンタープライズ・番組開発エグゼクティブ プロデューサー...
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東芝映像ソリューションが、「8K REGZA ENGIN PROFESSIONAL」の技術発表会を開催。88インチの有機ELテレビを使ったタイムラプス映像の上映も行なった
東芝映像ソリューションは本日午後、渋谷の「Tokyo Arts Gallery」で「次世代8Kレグザエンジンの開発について」と題した説明会を開催した。
これは、同スペースで開催中の清水大輔氏のタイムラプス展「そこある光」にあわせて開催されたもので、会場正面には88インチの8K有機ELレグザの試作機が、両サイドには4Kレグザが4台並べられ、清水氏が8Kカメラで撮影した映像が再現されていた。
冒頭、東芝映像ソリューション(株)R&Dセンター オーディオビジュアル商品開発部 部長 山内日美生氏が登場し、「8Kレグザエンジン」(8K REGZA ENGIN PROFESSIONAL)の開発状況に...
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【インターBEE2019レポート】最新の映像・放送・音響の各種システム、ソフトが一堂に集結。制作システム・機器は、4Kを飛び超え、8K対応が花盛り!
最新の映像・放送・通信・音響機器などが一堂に会する国際展示会「インターBEE2019」が、幕張メッセで11月15日(金)まで開催中だ。55回目となる今回は、出展者1158社団体、小間数2125を数える過去最高を記録。ここではステレオサウンド ONLINE編集部が気になった展示を紹介していきます。
NHK/JEITA
NHK/JEITAブースでは、4K8K放送関連機器類が盛大に展示されていた。正面には大型の8Kディスプレイが3台展示され、美しい8K映像を映し出し、通路を歩く人々の視線を集めていた。中に入ると例年通り4K8K放送の受信システムの紹介、対応機器(レコーダー)の展示などもあり、家...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:01】世界から8Kプロダクションが集合した「ソニー4K/8Kシアター」と「NHK 8KTHEATER」
今回、初めて国際番組見本市のMIPCOMを取材。4月のMIPTVには毎回参加しているが、10月のMIPCOMは初だ。このコンテンツの祭典にて、ソニーが2013年から4Kセミナーを毎年、開催している。
今年の最大の話題は8Kセッションの本格化だ。セミナー名は、これまでの「ソニー・4Kシアター」から「ソニー4K/8Kシアター」に名称を変えた。上映はソニー期待の8Kディスプレイ、98インチの「Z9G」。本8Kセッションは大人気。定員70人の会場に合計132人も参集した。欧米で8Kに対して強い興味が湧き始めてきたかが、うかがえた。
8Kは、二日目の10月15日の午後全部を使ってプレゼンテーション...