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ソニーの「AIによる音源分離」は、過去の名作に新しい魅力を与える。世界初の画期的技術はどうやって実現できたのか(後):麻倉怜士のいいもの研究所 レポート43
MIPCOMオンラインで発表されたソニーの「AIによる音源分離」はオーディオビジュアル界に新しい可能性を提示している。前編ではその技術がどのようにして作られたのか、どんな仕組で音を認識しているのかを紹介した。後編では具体的な応用例や、今後の方向性について聞いている。インタビュー取材に応じてくれたのは、ソニー株式会社R&DセンターDistinguished Engineerの光藤祐基さんと、コンテンツ開発課ビジネスプロデューサー池田裕司さんのおふたりだ。(編集部)
※インタビューは2020年12月に実施しました
ソニーの「AIによる音源分離」は、過去の名作に新しい魅力を与える。世界初の画期...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:12】時代劇は古くならないコンテンツです。4Kレンジャー『BLACKFOX:Age of the Ninja』
時代劇専門チャンネル(日本映画放送)が制作した時代劇レンジヤー4Kが『BLACKFOX:Age of the Ninja』(坂本浩一監督)。ニンジャ&サムライの時代を舞台にした特撮アクション時代劇だ。
武術太極拳の世界チャンピオン山本千尋が主人公・石動律花(いするぎ りっか)に扮して、鬼気迫る殺陣を披露する。時代劇専門チャンネルの宮川朋之プロデューサーは、4K制作の狙いについて、「時代劇は古くならないコンテンツです。戦略的に弊社の作品は、すべて4Kにしております。先行投資の意味もあります」と言った。
実際、『BLACKFOX:Age of the Ninja』での4Kの質的メリットは大き...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:11】スマホ対象の8K配信。8Kアプリで直接、プロダクションがユーザーにコンテンツを届ける
5Gを待たずに、この11月7日からスマホを対象にした8K配信を始めたのが、フランスのプロダクション、The Explorersだ。
スマホ用の8Kアプリを開発し、放送局やアグリゲーター業者を通さずに、直接、プロダクションがユーザーにコンテンツを届ける。中抜きが進むネットだが、いよいよ中間業者排除が8Kでも現実になってきた。いや、8Kだから、まずはネットから配信というのが、もっとも現実的なのだ。
11月7日に新アプリ、The Explorersをリリース。これまでの無料版は、4Kまでの解像度だが、新アプリは8Kまで対応。有料になり、国(17ヵ国が対象)によって違うが、毎月2〜3ドル。日本は...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:10】世界では5Gスマホが8K視聴の鍵になる。8K配信の最前線
8Kの新しいポイントが配信だ。世界で8K放送は日本だけだが、世界では5Gスマホが8K視聴の鍵になりそうだ。
フランス・テレビジョンは、この5月にフランス・オープン「ローラン・ギャロス」の全試合の5G・8K中継を行なった。シャープの8Kカメラで撮影した8Kのベースバンド信号を、NECのエンコーダーで85MbpsのHEVC信号に変え、アメリカのHarmonic社(NASAの4Kライブを手掛ける)がストリームに変換、ノキアが5Gで電波を飛ばし、OPPOの5Gスマホが受信、HDMI 4K×4本のアダプターで変換し、シャープの8Kモニターに入力した。
プロセスの準備に2ヵ月、システムのセットアップ...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:09】単なる記録ではない、明確に「旅へと誘う」目的がある8K。トラベルXPの挑戦
インドの旅行映像専門のトラベルXPが遂に8Kに進出。
1986年にケーブルオペレーターとして創業したインドのトラベルXP社は、ムンバイに本拠地を置く「旅チャンネル」。2011年2月、インドでの最初の全時間HD放送チャンネルとしてスタートしている。
トラベルXPの8K映像は面白い。単なる記録ではない、明確に「旅へと誘う」目的がある8Kだ。彩度が高く、木々の緑はいかにも記憶色の目にも鮮やかな緑。青空はどこまでも紺碧で、それを映す海も緑を帯びた青。つまり「色」で旅に誘うのである。(写真撮影:麻倉怜士)
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:08】8K国際制作が充実の予感。8K制作コストが劇的に下がった
8K制作コストが下がってきた。かつては時間も掛かり、費用も掛かった。2018年2月に試験放送された『南極 氷の下のタイムカプセル』では、編集に12ヵ月掛かった。2019年2月の『南極大冒険』は15ヵ月掛かった。
ところが今、もの凄く合理化された。2019年10月に放送された『古代マヤ大発掘』は、わずか3ヵ月。5分の1に短縮されたのだ。その秘密がワークフローの合理化。
これまでは2Kに変換してオフラインで編集し、そのデータを元に8K素材を編集していたが、『古代マヤ大発掘』では、直接8Kで編集した。変換などの時間が、短縮されたのである。制作コストの低減は、8K国際制作を呼び込むのにも有利だ。...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:07】8K自然科学ドキュメンタリー『MATING GAME』。最高の専門家と作る自然科学の国際共同制作
NHKは本流分野の国際共同制作でも今、大作を撮影している最中だ。
そのひとつが、Silverback Filmsが制作し、NHK、BBC、BBCスタジオが共同制作として加わる、8K自然科学ドキュメンタリー『MATING GAME』。動物の生存戦略を描く作品だ。2022年に5本シリーズで放映予定。自然科学の大型シリーズの制作は3年を費やす。
オスとメスがいかに出会い、いかに子孫を残すかを、草原、海、極限地域など5地域で8K撮影している。例えば、エリマキシギのオスの中にはメスの格好をし、メスには同類と安心させて、すきをみて交尾に掛かるものもいる。
Silverback FilmsはBBCの元...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:06】NHK的感性を超えたエモーショナルな映像。『フランス、Paramax Filmsの音楽8K』
フランスのParamax Filmsの音楽8K作品も、NHK的感性を超えたエモーショナルな映像だ。NHKは、4月のMIPTV「ソニー・4Kシアター」上映されたParamax Films制作の『クリスチャン・マクブライド・ナイト マルタ・ジャズ・フェスティバル2018』を買い付け、既に8Kで何回も放送している。ジャズアーティストの熱演をプレイ中にしたたり落ちる大量の汗で描いた作品だ。
今回は同フェスの2019年版。これまた、たいへんエモーショナル! 「ソニー4K/8Kシアター」会場では新しいマルタ・ジャズ・フェスティバルのジャズメイヤ・ホーンのクリップを、4K(プロジェクター)と8K(液晶...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:05】たいへんエモーショナルで感情的な8Kだ。 『ザ・シティ 生きている都市』
「ディレクター自身の感動を表現した映像」こそ、NHKが国際共同制作で欲しい作品だ。サンフランシスコのプロダクション、Golden Gate 3DとNHKの共同制作の『ザ・シティ 生きている都市』の三部作、「ベネチア」「サンフランシスコ」「ハバナ」も、たいへんエモーショナルで感情的な8Kだ。
サンフランシスコのプロダクション、Golden Gate 3DとNHKの共同制作だ。Golden Gate 3Dはこれまでキューバやエルサレムを題材にした作品を制作しており、BBCやナショナル・ジオグラフィックなどに納入してきた実績を持つ。
ピーター・チャン監督は世界の各都市にカメラマンのネットワーク...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:04】国際共同制作の8Kドキュメンタリー番組『天に光 地に彩 中国四川省ガルゼチベット族自治州』
NHKは自力で8K番組がつくれるが、NHK的なものだけでなく、バラエティに富んだ感性を集め、8Kってこんな表現ができるんだと感嘆されるような作品をプロデュースするのも、NHKの新しいミッションだ。
その典型が、国際共同制作の8Kドキュメンタリー番組『天に光 地に彩 中国四川省ガルゼチベット族自治州』での、山頂からの朝日の映像。もの凄く色が濃い、壮大な朝焼けだ。この映像には、共同制作である北京テレビのテクニカルディレクター、Guo Haojun氏が感じた色彩が反映されている。
「標高4000m級のミニャコンカ山(Mt. Minya Konka)の頂きに、真夜中に重い機材を背負って登り、午前...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:03】MIPCOM2019で分かった8Kの最前線。8Kのドラマ進出。日本映画放送、8K時代劇『帰郷』
「NHK 8KTHEATER」で上映された日本映画放送、8K時代劇『帰郷』(仲代達矢主演)。自然と人々の共存、人間の死生観をテーマにした股旅ものだ。自らメガホンを執った日本映画放送社長の杉田成道氏は8Kをどう使ったか。
「スタンリー・キュープリック監督の名作『バリー・リンドン』は、ローソク1本で撮った映画です。ローソクの暗い光を撮るためにNASAが開発した1本数億円のF0.7の超高感度レンズを買い込み、見事なローソク映像を撮りました。そのひそみにならいローソクの光を再現したかったから、8Kを選びました。8Kは柔らかく、包み込むローソクの光を見事に活写できました」
「8Kのもうひとつのメリ...
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【麻倉怜士のMIPCOM2019報告:02】MIPCOM2019で分かった8Kの最前線。8Kのドラマ進出。NHK『浮世の画家』
8Kの新しい方向性が「ドラマ」だ。これまで「8Kは花鳥風月を高精細に描くためのもの」といわれてきた。ノンフィクションには高精細映像は合うが、果たして、フィクションにはどうか?
見えすぎるのはどうか。ドラマに応用したらどうなのか。
そのトライが8KドラマのNHK『浮世の画家』。戦前との社会の激変に戸惑う老画家を渡辺謙が演じた、カズオ・イシグロ原作作品は、NHKにとっては「8Kはドラマに合うか」を試すひじょうに重要な実験だった。
私は試写にて、しっとりした質感が高精細に、そしてハイコントラストに描かれたと、見た。監督の渡辺一貴氏(NHKエンタープライズ・番組開発エグゼクティブ プロデューサー...