執筆陣
大型直熱管211と845のコンパチブルアンプは独エルログ製の現行出力管を搭載する。 サンバレー SV-S1628D ELROG ER845ver. SV-S1628D ELROG ER211ver.
ELROG(エルログ)は真空管のブランド名でドイツの産。それも過去の話ではなく、2016年に設立された新しいメーカーの製品である。それ以前には、別組織で軍用真空管やCRTを手がけた時代もあるとのことで、現在はハイエンド需要に見合った古典球のリメイクに注力しているようだ。ただし単なる復刻生産でないことは球の外観が示唆するとおり。中にはびっくり、トリタン(トリエーテッドタングステン)版300Bといった前代未聞の変り種も含まれる。
サンバレーのSV-S1628Dは、直熱3極管ファン向きの組立キットとして企画されたステレオパワーアンプである。組立代行による完成品も用意される。技術内容はたいへんめ...
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アルニコ磁石+純マグネシウム振動板を搭載したフォステクス「T500A MkⅢ」。新型FE208NSとの組合せにより、打楽器の明敏な応答性は演奏の仕草までを彷彿。
フォステクスが長らく型番を維持しているスーパートゥイーターの高級機T500Aの最新版が、このT500A Mk Ⅲ。リング形状の純マグネシウム振動板により50kHzにまでいたる帯域を保証。そのダイアフラムリングは不要振動を排するためにタングステンシートを使用。磁気回路はアルニコマグネットを2段重ねした内磁型。ポールピースには銅メッキを施して渦電流対策している。円筒形ホーンと砲弾型イコライザーは真鍮無垢材の切削加工というのは承前だが、表面をプラチナメッキしている。ターミナル部は銅切削の金メッキ仕様であり、1.4mm径単芯線の内部配線は銅・銀合金素材を採用。トゥイーターの台座はウォールナット突...
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ブリンクマン「Taurus」自社製モーターでDD駆動し、抜群のS/N感で高精細な音に。
私はダイレクトドライブ(DD)方式ターンテーブルを支持するオーディオファイルだが、今ではモーターを自社開発できるメーカーが少ないことを嘆いている。本格派のDDモーターといえるのは、世界中を見渡しても日本のテクニクスとドイツのブリンクマン、そして同じくドイツのSTSTくらいだ。
ここで紹介するブリンクマンのトーラスは、同社バルドの上級機にあたるスケルトンタイプのターンテーブル。慣性質量を重視した形状のプラッターは10㎏で、アナログ盤との接地面は平面性の高いガラス製だ。中心部分で盤を浮かせてクランパーで押し付けることにより、面ブレの少ない平面状態を得ている。同社には2機種のDD方式ターンテー...
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ソナス・ファベール「MINIMA AMATOR Ⅱ」木質感溢れる意匠に相応しい、親しみ深い音調のバスレフ型2ウェイ2スピーカー。
ソナス・ファベールを創業したフランコ・セルブリン氏は、一度だけ日本を訪れている。そのときに会った私は「小型機のミニマが奏でる音が一番好きです」と告げたところ、彼は「実は私もそうなんだ」と微笑んだ。
ここに登場するミニマ・アマトールⅡは、ミニマより僅かに大きいオリジナル機の雰囲気を忠実に醸し出している注目機。一足先に発売されているエレクタ・アマトールⅢはボトムが白い大理石製であるが、本機は4面すべてがウォールナット材になっている。
適合するスタンドは2種類あり、ここでは「Carrara Stand」を使って聴いた。本誌試聴室で鳴らしたミニマ・アマトールⅡは、キビキビと反応の良い美音を奏でて...
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一体型管球プリアンプ、マッキントッシュC2700。丁寧な質感描写に加え、なによりもマッキントッシュらしい風格が漂う
マッキントッシュのC2700は、人気の高かったC2600をブラッシュアップした新しい管球式プリアンプだ。使われている真空管はC2600と同じく、12AX7Aが5本に加えて12AT7が1本。両機のスペックを比較するとMM/MC対応のフォノイコライザー回路のS/N比が5dB以上も改善されており、DA2と呼ばれるDAC回路がアップグレード対応のモジュールになっているのが大きな相違点である。DA2はUSB入力で22.4MHzまでのDSDと384kHz/32ビットまでのPCMを再生できる、きわめてハイスペックな内容。2系統の同軸と光のデジタル入力端子があり、同社製SACDトランスポートと接続できる...
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テレフンケン製3極出力管RV258シングル。 特注カットコア出力トランス採用で無帰還動作。 カトレア ハイドンⅢ
長いあいだオーディオ用真空管の王様などといわれたWE300Bの流通が厳しさを増し、米国での再生産の見通しについても相変わらず透明度を欠いたままのためだろうか。ヨーロッパ産の古典的な3極出力管をつかったハイエンドクラスのアンプがぼつぼつ現れているようだ。当機もその仲間で、終段にテレフンケン銘のRV258を使用し、出力真空管無しヴァージョンも用意される。
往年の欧州球はほとんどが日本ではあまり知られておらず、元来稀少な存在なので、わずかなチャンスを逃せば雲上のマボロシで終ることにもなりかねない。好事家向きのアンプが少数供給されるだけでもけっこう。出所不明な真空管単体を購入するとしたら、それな...
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プリ部にムラード管採用の掌サイズのミニアンプ。 明瞭かつ明るい音調で緻密な音像が前面に定位する キャロットワン「ERNESTOLO 50k LIMITED」
明るい音調であり、目立つパートの音像は前面によく定位する
てのひらサイズのインテグレーテッドアンプであり、ガラスブロックの重しが真空管をご本尊風に際立たせる意匠が貫かれている。
アンプの構成は3部分に分けられていて、ミニプラグ対応ヘッドフォン端子にも専用アンプを使用する。プリアンプ部はムラードCV4003(12AU7高信頼管)と高精度オペアンプICのバーブラウンOPA627AUを使用。いずれも結構な値付けで取引されている代物だ。入力はRCA端子の他に前面のミニプラグもあって便利だ。パワーアンプ部はデジタルアンプだろう、小サイズで4Ω時25W+25Wの大出力をひねり出す。AC電源アダプター...
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カートリッジ/レガ Ania Pro。1973年以来の歴史を持つ英国ブランド。ガラス繊維・強化樹脂ボディのMC型Planar10では音像が迫り出し、豊かな響きで抜群の好相性
「管球王国」91号(2019年1月発行)でMCカートリッジApheta2とプレーヤーシステムPlanar 8を紹介した英国のレガ。1973年以来の歴史をもつアナログオーディオ専門メーカーだ。
今回聴いたAnia ProはMCカートリッジ。Apheta 2に準じた設計思想と機構設計を受け継ぐという、その下位モデルである。アルミ削り出しだったプラットフォームをガラス繊維の強化樹脂に変えたことが基本的な相違点のようだ。輸入元のホームページの製品写真でカンチレバー回りを覆っているコの字状の部材は、指先で脱着できる付属の針先カバー。
レガのMCはオルトフォンタイプの発展形ともいえるが、たいへんにユ...
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ZYX 100シリーズのもっとも洗練された到達点、Ultimate 100S。精緻な音像と深い音場の流麗な表現力を聴かせる。
ZYX(ジックス)は、1986年以来MCカートリッジをつくりつづけてきたアナログ専門ブランド。長い実績を踏まえた理論解析がとてもユニークで、そのMCは基本的にオルトフォンタイプなのだが縦横無尽な独自性に満ちている。わけてもの定番トップセラー製品が100シリーズだ。
当機Ultimate100Sは、同100の発電コイル素材=6NOFCを5N銀線に変更した最新ヴァージョン。ポリカーボネートの樹脂ボディも、内部構造が見直されているということだ。
今回は、本誌リファレンスのフェーズメーションPP2000を含めて3種類のMCカートリッジを聴いた。同一条件で各々異なる個性、持ち味のちがいを比較対照で...
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筐体強化と音質チューニングが施された1ビット・ディスクリートDAC搭載の特別仕様。 マランツ SA12 OSE
アンプやデジタルプレーヤーなどの主力機種に音質向上策を講じたSE(スペシャル・エディション)という特別仕様は、多くのオーディオメーカーが手掛けている。その先駆けとなったのは、マランツが30年前の1990年に発売したインテグレーテッドアンプのPM80SEとCDプレーヤーのCD66SEだったいう。さきごろマランツはSEの先駆者という主張を込めて、OSE(オリジナル・スペシャル・エディション)と名付けたインテグレーテッドアンプのPM12 OSEとSACDプレーヤーのSA12 OSEを発売した。ここではSA12 OSEの試聴リポートをお届けする。
ベースとなったSA12は、MMM(マランツ・ミュ...
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デビュー・シリーズを刷新した2ウェイモデル 弦楽楽器や木管を優しく、しなやかな音色で表現する エラック「DBR 62」
克明優美な音色表現に思わず驚く
エラックの新製品で、Debut B6.2(本邦では未発売)をベースにしたスペシャルヴァージョン。ただし台数限定などではないレギュラーモデルである。Debut(デビュー)シリーズは、名称どおりホームオーディオ向けエラック・スピーカーの入門機だ。
スペシャルヴァージョンというと、なにか付加価値をつけたヴァージョンアップ版が思い浮かぶかもしれないが、当機はそうでなく、各部の設計をつぶさに見直した別の製品になっている。共通項は16.5㎝径ウーファーと2.5㎝径ソフトドームトゥイーターによる2ウェイということだけで、それらの仕様もエンクロージュアも異なる新設計。
い...