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ウォン・カーウァイ監督の珠玉5作品が4Kで蘇る。マギー・チャンの美を永遠に封じ込めた『花様年華』の素晴らしさに新ためて感動【映画スターに恋して:第24回】
ファン垂涎! ウォン・カーウァイ5作品を4Kで堪能しよう
香港の名匠ウォン・カーウァイ監督が、急進する映像技術を反映し、過去作を自身の手によって4Kレストアで鮮明に蘇らせた『恋する惑星』(94年)、『天使の涙』(95年)、『ブエノスアイレス』(97年)、『花様年華』(00年)、『2046』(04年)の5作品が、全国で順次公開されている。
いま観ても心躍る珠玉作の数々だが、とりわけ製作20周年を記念して、このプロジェクトのきっかけとなった『花様年華』の美しさには、見惚れるばかり。そして、その究極の“耽美”を体現しているマギー・チャンの素晴らしさに、あらためて感動した。
アイドル女優だったマ...
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“王子様系”だったカン・ドンウォンが世界レベルの演技派に! 是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』でも余韻が残る好演を見せる【映画スターに恋して:第23回】
カンヌ国際映画祭のコンペティション部門でも話題になった“日韓のコラボ作”
第75回カンヌ国際映画祭で、主演の韓国俳優ソン・ガンホが最優秀主演男優賞を受賞して話題を集めた『ベイビー・ブローカー』。監督は、『万引き家族』(18年)で同映画祭のパルムドール賞を獲得している是枝裕和だ。そこには、“日・韓の素敵なコラボレーション”への称賛もたっぷり含まれている。
“赤ちゃんポスト”に預けられた赤ん坊を盗んで売る“ベイビー・ブローカー”を演じるソン・ガンホとカン・ドンウォンは、ヤバい稼業に手を染めているのに、お人好しオーラが漏れてしまうのが微笑ましい。そんな彼らの前に赤ん坊の母親が現れ、結局、3人は...
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中国の巨匠チャン・イーモウを前に大失態も、ご機嫌な笑顔に一安心。最新作『ワン・セカンド』は原点回帰の必見作【映画スターに恋して:第22回】
ノスタルジーと映画愛にあふれる『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』
2019年の第69回ベルリン国際映画祭で、コンペティション部門に選出されたにも関わらず、開催直前に突如キャンセルとなったチャン・イーモウ監督の『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』(20年)。キャンセルの背景には、日に日に厳しさを増す“映画への検閲”があることは想像に難くないけれど、それでも2021年のトロント国際映画祭の上映で好評を博したこともあって、やっと日本公開が迎えられたことを、素直に喜びたい。
そう、原点に立ち返るというか、文化大革命を体験した“第五世代”監督の真髄は健在! これまでチャン・イーモウ作品を観続...
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ラテン系フェロモン満載のベニチオ・デル・トロ、意外な人生のテーマ(?)は「生きるべきか死ぬべきか」【映画スターに恋して:第21回】
『フレンチ・ディスパッチ』は“顔なじみ”から“初参戦”までスターが大渋滞
世界中に熱狂的なファンを保持するウェス・アンダーソン監督の新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』。20世紀、フランスの架空の街アンニュイ=シュール=ブラゼに編集部を置く雑誌「フレンチ・ディスパッチ」は、急死した編集長の遺言によって廃刊が決定した。映画は、その追悼号となる最終号に掲載する記事を描いたもの。まずは、アンニュイ=シュール=ブラゼという名前の、編集長が愛してやまなかった街のレポートから始まり、<美術><世相><食>に関するコラムが3つ続く。
大ヒットした『グランド・ブダ...
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“やんちゃな悪ガキ”ニコラス・ツェーも不惑に。ドニー・イェンと久々の共演作は王道香港映画の壮絶アクション!【映画スターに恋して:第20回】
香港中に愛された巨匠、ベニー・チャンの遺作
『レイジング・ファイア』は、香港アクション映画好きには感涙の必見作。オススメ・ポイントは限りない。
まずは、ドニー・イェンとニコラス・ツェーが15年ぶりに“ガチ”で共演! “正義の警官”ドニーと“復讐に燃える元警官”ニコラスが繰り広げる死闘! 監督は香港アクション映画の巨匠ベニー・チャン! しかも8年ぶりに手掛けたお得意のポリス・アクションは、銃撃戦にカーチェイスはもちろん、大スケールの市街戦、激しい肉弾戦やナイフ・バトルなどなど。とにかく香港アクションの醍醐味がてんこ盛り! しかも繊細な人間ドラマの織り込みも巧みで、洗練された語り口。まさに「...
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香港の巨匠アン・ホイ、弾ける笑顔とインディペンデント愛は今も変わらず。しみじみ感動作『花椒の味』もプロデュース【映画スターに恋して:第19回】
香港映画ファン歓喜! サミー・チェン&アンディ・ラウのコンビも見られる『花椒の味』
香港の銅鑼灣(コーズウェイベイ)で火鍋店を営んでいた父が急死。父と疎遠だった長女は、諸事情により父の店を継ぐが、父オリジナルの“花椒(ホアジャオ)の味”が出せなくて苦戦する。そんな長女を尋ねて、父の葬儀で初めて会った、それぞれ母親の違う2人の妹がやってきた。長女は香港、次女は台湾、末娘は中国・重慶で暮らしている……。
『花椒の味』は三姉妹の心模様を通して、香港・台湾・中国=3つの中国のいまのあり様もさり気なく浮き彫りにしていく。3都市の特徴的な風景をエモーショナルに映し出す美しい映像にため息をつきつつ、考...
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イ・ビョンホンが謝罪に追い込まれた! 人気者が故の大混乱と、そのきっかけとなったインタビューとは【映画スターに恋して:第18回】
イ・ビョンホン×ハ・ジョンウ×マ・ドンソク、スター3人が夢の競演
韓国屈指の演技派スター3人が共演を果たした『白頭山(ペクトゥサン)大噴火』。“北朝鮮と中国の国境地帯にそびえる白頭山が大噴火する”という危機を回避するために、地底に核兵器を投入して人工爆発を起こそうとする展開だ。
その大胆にして緻密な理論を打ち出したのは、マ・ドンソクが演じる地質学者カン・ボンネ。たった3.48%の成功率を信じて作戦を実行するのは、ハ・ジョンウが熱演を披露する韓国軍大尉チョ・インチャン。そして、核兵器の在り処を知るキーマンで北朝鮮武力省の工作員リ・ジュンピョンにはイ・ビョンホン。クールでミステリアスなスパイ...
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強面ウィレム・デフォーは気さく、では美形ロバート・パティンソンは? 『ライトハウス』怪優2人の素顔に驚いた!【映画スターに恋して:第17回】
ほぼ2人芝居で繰り広げられる壮絶な演技合戦
1890年代、ニューイングランドの離島に赴任した2人の灯台守が体験する<地獄>を描いた『ライトハウス』。新米の若者イーフレイムは、過酷な労働を強いる口うるさいベテランのトーマスにうんざり。しかも、4週間の滞在のはずが、陸に戻る直前に嵐に襲われ、迎えの船影すら見えない……。
閉塞空間に閉じ込められた2人が妄想や幻覚に侵されていくという、人間の<脆い性(さが)>を描いた作品は多い。そんな過去作と比べた本作の新味は、神話的要素を軸に、エドガー・アラン・ポーやハーマン・メルヴィルなど<その世界>に拘り続けた先達の影響を色濃く表した内容と、怖いけど魅入っ...
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四半世紀が過ぎても忘れられないマット・ディロンの“珍”インタビュー。なぜ彼はあのとき不機嫌だったのか【映画スターに恋して:第16回】
『約束の宇宙(そら)』で懐深いリーダー像を好演!
『約束の宇宙(そら)』は、これまであまり描かれなかった「女性の宇宙飛行士」を主人公にしたところが斬新だ。主人公のサラは、約1年間の国際宇宙ステーション滞在というチャンスに大喜びするが、同時に不安も湧き上がる。チームを組む男性クルーたちから信頼は得られるか? タフな彼らと対等に動けるか?
そして、なにより悩ましいのが、幼いひとり娘を地球に残していくこと。元夫に一時的に預けるものの、「もし、宇宙で私に何かあったら娘は……」。そんな、女性だからこそ、母だからこそ抱える葛藤にスポットを当てたのが、女性監督のアリス・ウィンクールだ。その繊細にして骨...
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ティム・ロビンス×スーザン・サランドン、名優ふたりの血を引くマイルズ・ロビンスがかつて日本で語ったこととは【映画スターに恋して:第15回】
主演作『ダニエル』は耽美と狂気が混じり合ったスリラー
エキセントリックな母の影響もあって、殺伐とした家庭で育つ少年ルーク。彼の傷ついた心を支えたのは<空想上の親友>ダニエルだったが、ある危うい事件が起こったことからダニエルとの決別を決意する。しかし大学生になったルークは、あまりの孤独に耐えかねて、唯一無二の親友=ダニエルの封印を解き再会を叶えたのだが……。
孤独な少年と空想上の親友のお話は、これまでも作られてきた。だから、『ダニエル』の簡単なシノプシスを読んだときは、「ちょっぴり泣かせる友情のからんだ成長物語」だと思っていた。ところが、観てびっくり。まさに予想を大きく裏切る展開で、狂気の...
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初対面の初々しさから一転、イーサン・ホークが16年前に起こした“極・私的な大事件”とは!?【映画スターに恋して:第14回】
俳優・脚本家・作家に映画監督……多方面で活躍する才人!
<ストックホルム症候群>とは、「誘拐や監禁事件において、被害者が犯人との間に心理的なつながりを築く現象」のこと(プレス資料より)。語源となったのは、スウェーデンで実際に起きた銀行強盗事件だ。
その事件をベースにした映画『ストックホルム・ケース』が、現在公開されている。主犯のラースは、実に複雑な人物だ。アメリカに強く憧れ、自分の境遇を嘆いて荒んでいる。銀行に立てこもった彼は、人質を恫喝しながらも、彼女たちが必要とする生理用品を警察に要求する……。「こんな男に同情も共感もできない」と思うのだが、演じるイーサン・ホークの熱演のせいか、彼自...
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メル・ギブソンがインタビューで見せた気遣いに感動! “トラブル報道”からは見えない意外な素顔 【映画スターに恋して:第13回】
メル・ギブソンとショーン・ペン、名優ふたりが夢の競演
メル・ギブソン&ショーン・ペンという、なんとも贅沢な初共演が叶った『博士と狂人』。メルが演じるのは、世界最大の辞典『オックスフォード英語大辞典』の編纂に全身全霊を傾けた言語学博士マレー。一方ショーンの役は、精神病院に入院しながらも、マレー博士のプロジェクトに大量の言語の用例を送り、多大な貢献をした元軍医マイナー。二人は辞典作りを通して友情を育んでいく。
戦争体験から心を病んで殺人を犯したマイナーは、これまでエキセントリックな役柄を多く演じ、過去に2度もアカデミー賞主演男優賞を受賞しているショーンにとってはお得意のキャラクター。しかし、...