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ニューヨークとタイのロケをふんだんに盛り込んだ、ウォン・カーウァイ・プロデュース作品『プアン/友だちと呼ばせて』
英語タイトルは『One For The Road』。私は反射的にアメリカのポピュラー・ソング「One For My Baby (and One More For The Road)」を思い出す。恋人に振られた人物がバーテンに事の顛末をグチり、帰る前に“もう一杯”と酒をおかわりする歌だ。男性ではフランク・シナトラ、女性ではビリー・ホリデイの解釈に定評がある。
この映画『プアン/友だちと呼ばせて』は、実にスリリングな作品『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』で監督を務めたバズ・プーンピリヤ監督の最新作(脚本も担当)。そしてプロデューサーとして名匠ウォン・カーウァイが参加している。バズの才能に...
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ソウル・ミュージックは不滅なり! 結成10年を迎える“ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズ”が待望の初来日公演
コロナ禍による延期から2年、ついにこの時がやってきた。“新世代ヴィンテージ・ソウル・ミュージックの大本命”、ドラン・ジョーンズ&ジ・インディケーションズの初来日公演が南青山「ブルーノート東京」の“The EXP Series”の一環として開催されたのだ。あの、聴き手を包み込むような音世界がナマで聴けると思うと、いてもたってもいられず、7月14日の初日ステージに足を運んだ。
バンドの結成は2012年、アメリカ中西部のインディアナ州ブルーミントンにて。来日メンバーはリード・ヴォーカルのドラン・ジョーンズ、ドラム&ヴォーカルのアーロン・フレイザー(ソロ・アルバム『イントロデューシング・・・』も...
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コロナ禍でクローズアップされた夫婦間の秘め事は果たして解消されるのか? 『夜明けの夫婦』の山内ケンジ監督にインタビュー
題して、“純粋社会派深刻喜劇”。
子供を作りたいのか作りたくないのか、作れないのか作らないのか。浮気は隠しきれるものなのか。実子の配偶者に好意を抱いてはいけないのか。コロナによって自宅待機の時間が増えたとはいえ、それによってセックスの回数まで増えていくものなのか――。
とある老夫婦と息子夫婦の二世帯住宅の家庭で起こる、きわめてセンシティブかつ身につまされる事象の数々に焦点を当てた映画『夜明けの夫婦』が、7月22日(金)から東京・新宿ピカデリー、ポレポレ東中野、下北沢トリウッドほかで公開される。
ある程度の歳月を生きてきた者にとっては、深くうなずいたり、ついクスッと噴出さずにはいられない問...
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90分間ワンショット。ロンドンの人気レストランで繰り広げられる多彩な人間模様を描く『ボイリング・ポイント/沸騰』
90分間の全編ワンショット、編集もCGの使用も一切なし。実にスリリングな一作が7月15日から東京・ヒューマントラスト有楽町、新宿武蔵野館ほかで公開される『ボイリング・ポイント/沸騰』だ。
「いちど始まったら止まらない」という点では、いわゆる舞台でのパフォーマンスに通じるものがあるが、舞台の場合、自分の目で見るところを変えることができるのに対し、この映画はカメラが、演者との距離も含めたうえでの「目がわり」となる。
撮影はロンドンに実在するレストランで行なわれたという。スティーヴン・グレアムが演じる主人公アンディは、さえない毎日を送るオーナーシェフ。妻子とも別居中、店に対する衛生管理検査の評...
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岡本祟監督の初長編作『ディスコーズハイ』が待望の公開。「音楽に対する情熱を感じてほしい」
日本芸術センター第13回映像グランプリにて発掘賞、神戸インディペンデント映画祭 2021 にて奨励賞を受賞。「音楽がど真ん中にある映画」、『ディスコーズハイ』がいよいよ7月8日(金)からアップリンク吉祥寺で公開される。
タイトルの『ディスコーズハイ』は、ディスコード(discord:不協和音)とランナーズハイを混ぜた造語。主人公の瓶子撫子(へいし・なでこ)は音楽事務所ヤードバーズにコネ入社し、バンド「カサノシタ」を担当。しかし鳴かず飛ばずの状態が続き、「P-90」をはじめとする人気バンドを次々と輩出する同僚の別久 花(べつく・はな)とは雲泥の差。カサノシタの次回作の予算もロクに下りず、自...
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森田望智、清家ゆきち、宮野ケイジ/バンドマンの夢と青春を描く映画『さよなら、バンドアパート』先行上映舞台挨拶を実施
宮野ケイジ監督の映画『さよなら、バンドアパート』(7月15日 公開)の舞台挨拶付き先行上映会が6月16日に都内にて行なわれ、清家ゆきち、森田望智、松尾潤、小野武正(KEYTALK)、原作者でロックバンド“juJoe”のボーカルとギターを担当する平井拓郎、宮野監督らが登壇した。
主人公の川嶋(清家)は学生の頃から音楽の道に進む夢を持っていた。大阪で出会ったユリ(森田)との出逢いによって川嶋の潜在能力がどんどん花開き、ついにプロデビュー。しかしそこには、夢や目標とは別種の厳しい現実が待ち受けていた――――。
平井拓郎 「(自分の原作が)映画化されて、嬉しいということしかなかったですね。不安も...
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生前のロメロ監督みずからのリマスターによって、ホラー/ゾンビ映画の傑作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が復活!
ジョージ・A・ロメロ監督の古典的一作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が4Kリマスター版として6月17日からシネマート新宿、立川シネマシティほか全国順次公開される。
父親の墓参りに行くために車を飛ばしていた兄と妹。その兄が“リビングデッド”(いわゆるゾンビ)に襲われて絶命する。妹は命からがら近くの家に逃げ込んだ。つづいてアフリカ系アメリカ人の男・ベンもどこからか逃げてきた。空き家なのかと思っていたら、1階の騒ぎを聞きつけて、“どうしたんだ?”とばかりに、若い男女、“ミスター・クーパー”と呼ばれる男とその妻が階段をのぼってくる。地下では大怪我をしている娘が虫の息だ。
人間模様うずまく密室...
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世代を超えて集結した窃盗チームが、サッカー決勝戦に沸くスペインで、難攻不落の金庫破りに挑む! 『ウェイ・ダウン』公開へ
自分は昭和生まれだが、子供の頃は銀行関連の犯罪(強盗、金庫破りなど)のニュースが1年に何度も巷をにぎわせていた記憶がある。セキュリティの圧倒的な強化等によってそれは現実的には絶滅に近い形となって今に至るわけだが、映画の上ではいまも“現役”。技術の進化と共に窃盗のスケールは増す一方、銀行側と盗賊側の知性がせめぎあう、手に汗握る圧倒的エンターテイメントとして視聴者の前に差し出される。それは6月10日から全国公開される『ウェイ・ダウン』だ。
いきなり“どこまでも限りなく広がる海の情景”が観る者をヨーロッパにいざなう。沈没船から“財宝のヒント”に関する書類を引き上げてしまったイギリス人。だがその...
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ボブ・ディランの息子ジェイコブ・ディランが、過去と現在のアメリカ西海岸ロックをつなぐ『エコー・イン・ザ・キャニオン』
『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』(5月6日公開)と一緒に味わいたくなる。ボブ・ディランの息子でシンガーソングライターのジェイコブ・ディランを進行役に、1960年代ローレル・キャニオン周辺のフォーク・ロック・シーン、およびそれが現在の音楽会に及ぼした影響を、往年のフィルムや、現役ミュージシャンたちのレコーディング&ライヴ・セッションでたどってみようという気持ちのいい作品だ。
実演シーンでは、ジェイコブに加え、ベック、フィオナ・アップル、キャット・パワー、ノラ・ジョーンズ、重鎮のスティーブン・スティルス、エリック・クラプトンらがフィーチャーされる。またインタビューではデ...
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結成40周年。ノルウェーから世界に飛び出した男性3人組ポップス・ユニットの軌跡を追ったドキュメンタリー作『a-ha THE MOVIE』公開
今年1月開催予定の来日公演がコロナ禍で中止になり、気分が盛り下がっていた皆さんに朗報だ。
と同時に、1980年代、日本人がまだ洋楽をごく普通に聴き、人気歌番組にも当たり前に来日アーティストが出ていた頃の、なんともいえない芸能の輝きを個人的に思い出し、「この時代の持つキラキラ感を、次世代にも疑似体験してほしい」と強く思った。そのとっかかりのひとつとしても、『a-ha THE MOVIE』は歓迎される一作といえるのではなかろうか。しかもこの2022年は、a-haの結成40周年にあたるのだ。
数多くの代表曲を持つa-haだが、その頂点として圧倒的に光り輝いているのが、「テイク・オン・ミー」(1...
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伯父と甥が“人間対人間”として心を開き合う。穏やかで暖かな、ホアキン・フェニックス主演作品『カモン カモン』
ホアキン・フェニックスが大ヒット映画『ジョーカー』(アカデミー賞・主演男優賞を受賞)の次に選んだ作品、というだけで鑑賞意欲が倍増する。『カモン カモン』は、心臓に衝撃が来るような内容だったあちらとは対照的で、観ているうちに心が暖まってくる。モノクロの画面、落ち着いた音響(“ザ・ナショナル”の双子兄弟、アーロン・デスナーとブライス・デスナーが担当する音楽も含めて)、クスッと笑わずにはいられない会話の数々などなど、実に穏やかだ。『ジョーカー』にはニューヨークを模したのであろう都市が登場していたが、こちらには実際のニューヨークも登場する。
ホアキン扮するジョニーはニューヨークを拠点とするラジオ...
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ザッパの前にも後にもザッパなし。稀代のロック・アーティストの実像に迫る圧倒的な128分。映画『ZAPPA』、4/22より公開
自分にとって最高の音楽鑑賞体験を与えてくれるアーティストのひとりがフランク・ザッパだ。さまざまな音楽の要素がグツグツと煮込まれて、開いたことのない扉へと案内してくれる。
ザッパの名を聞くとすぐ、反射的に「ダンスに服はいらない」、「水を黒くしよう」、「シャリーナ」、「グレッガリー・ペッカリー」、「オー・ノー」等のメロディが頭をかけめぐる。英語ネイティブのひとにいわせると、ザッパは歌詞がメロディと同じように重要らしいから、自分はその魅力の半分しか味わえていないことになるのかもしれないが、それでも充分気持ちいい。ポール・マッカートニーやエルトン・ジョンみたいに、世界を魅了するようなロマンティッ...