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フランスの大女優イザベル・ユペールはイメージ通りの“鉄仮面”──3度目の正直でその完璧な防御を崩せるか?【映画スターに恋して:第12回】
イザベル・ユペールから監督にラブコールを送って実現した染み入る一作
『ポルトガル、夏の終わり』は、癌の末期を迎えた有名女優フランキーが、最後のヴァカンスを過ごすある1日を描いたもの。美しい自然の中で残り少ない時間を慈しむいっぽうで、彼女は夫や子供たち、そして友人など、愛する人の“これから”に心を痛めており、ある“企み”を実行しようとするのだが。
世界遺産にもなっているポルトガル・シントラの風光明媚な風景の中での散策、雨に濡れるペーナ宮殿での秘密の会話、海を臨むペニーニャの山頂で迎える夕日のラスト……。寡黙な登場人物たちが浮き彫りにしていく愛や哀しみ、そして思いがけない強さによって、人それ...
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帝王チョウ・ユンファが臆病者!? 自粛生活で香港映画を堪能し、会見時の柔和な笑顔を思い出して思わず感涙【映画スターに恋して:第11回】
憧れの“亜州影帝”と対面。緊張で身を固くしたが……
“おこもり生活”にも飽き飽きしたところで、久しぶりに古い香港映画を再チェック。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』『男たちの挽歌』『インファナル・アフェア』など、傑作シリーズを堪能した。いやー、面白い!
とりわけ懐かしさにウルウルしたのはチョウ・ユンファ。何しろユンファの出世作『男たちの挽歌』(86年)がきっかけで80年代の日本は<香港ノワール・ブーム>が勃発。裏社会を舞台にした香港映画が雪崩のように公開され、スターも続々と来日した。華やかな時代だったなぁ。
憧れのチョウ・ユンファと初めて会ったのは、『男たちの挽歌 II』(8...
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繊細で知的なレニー・ゼルウィガー、低迷期を乗り越え『ジュディ 虹の彼方に』で2度目のアカデミー賞を受賞!【映画スターに恋して:第10回】
ジュディ・ガーランドの不安定さと天賦の才能を見事に体現
レニー・ゼルヴィガーがアカデミー賞主演女優賞を受賞した『ジュディ 虹の彼方に』。本作はタイトルからもわかるように、伝説のミュージカル女優であり、天才パフォーマーとしても一世を風靡したジュディ・ガーランドの物語だ。
それも栄光の日々ではなく、ハリウッドから追われ、パフォーマーとしての人気も信用も失いつつあった晩年、47歳で亡くなる半年前のロンドン公演にスポットを当てた脚本に新鮮味がある。経済破綻して、情緒不安定と不眠症に陥り長年にわたり常用している睡眠薬の弊害に悩まされ……。まさに満身創痍のヨレヨレ状態。それでも、ひとたびステージに立...
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名優アンソニー・ウォンが香港のデモを支持、干されながらも感動作『淪落の人』で最優秀男優賞を受賞!【映画スターに恋して:第10回】
車椅子の男性が辿る心の軌跡をていねいに描く
2019年のおわり、香港映画が誇る大スター、アンソニー・ウォン(黄秋生)との再会に心がときめきっぱなしだった。58歳になった彼が、10年ぶりの来日に携えてきたのは『淪落の人』。香港のみならずアジアやヨーロッパでも高い評価を得たこの作品で、彼は事故で半身不随になり車椅子生活を余儀なくされた初老の男に扮し、渾身の演技を披露している。
夢も希望も失っていた男が若いフィリピン人のメイドと出会い、彼女の夢の実現をサポートすることで、自分の人生にも光を灯す。隔たりのあったふたりの心がじょじょに交わっていくプロセス。積み重ねるエピソードは小さくてさりげないけ...
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セクシーの代名詞アントニオ・バンデラス、還暦を前に“いぶし銀”の魅力をまとった俳優へと変貌を遂げる!【映画スターに恋して:第9回】
バンデラスファン必見の2作品が公開中
最近とても嬉しいのは、アントニオ・バンデラスの“いぶし銀の名演”が2作続けて味わえたこと。
1作目は、世界最高峰のテノール歌手アンドレア・ボチェッリの半生を描いたイタリア映画『アンドレア・ボチェッリ 奇跡のテノール』。若きアンドレの原石のような才能を、厳しいレッスンで磨きあげるマエストロを演じたバンデラスは、知的で上品で感性豊かなアーティストの風貌。まさに素敵な熟年だ。
そして2作目は、アメリカ映画『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』。ニューヨークで起こった悲しい出来事は、じつはスペインのオリーブ畑に住む一家と深い関わりがあった──という、壮大に...
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知的・寡黙で気むずかしい? “宇宙人ジョーンズ”ことトミー・リー・ジョーンズ、レアな笑顔はじつにキュート!【映画スターに恋して:第8回】
彼の存在が『アド・アストラ』の世界を深くする
ヴェネチア国際映画祭で絶賛され、アカデミー賞の呼び声も高いSF超大作『アド・アストラ』。ブラッド・ピットが初めて宇宙飛行士役に挑戦するのも話題だが、その主人公の父親を演じるのがトミー・リー・ジョーンズというのも魅力的なキャスティングだ。ネタバレは厳禁だが、『地獄の黙示録』を思わせる<闇の世界>、父と息子の葛藤、そしてトミー・リーの存在感が物語をディープにしていることは請け合いだ。
“宇宙人ジョーンズ”はハーバード卒、ルームメイトはゴア元副大統領!
トミー・リー・ジョーンズといえば、日本では、缶コーヒーに登場する<たそがれ宇宙人>でおなじみだろ...
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トム・ハンクスの素顔は“引率の先生”!? 完璧な気遣いとユーモアでまわりを和ませる大スター【映画スターに恋して:第7回】
『トイ・ストーリー4』でも変わらぬ話芸を披露
いまとなっては、トム・ハンクスはハリウッドが誇る演技派の大スターだ。なにしろ『フィラデルフィア』(93年)、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94年)と2年連続でアカデミー賞主演男優賞を獲得し、以後も次々にヒット作&話題作に主演しているのだから。
現在、日本の夏を賑わせているアニメ『トイ・ストーリー4』の始まりは、トムがアカデミー賞連続受賞の直後に、主人公のウッディの声を担当した第1弾『トイ・ストーリー』(95年)。あれからじつに20年以上にわたって同じキャラクターを演じ続けてきたことになる。
しかも、そのコミカルで哀愁の漂う話芸は衰えること...
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『初恋のきた道』の可憐さとは裏腹に数々のスキャンダルが囁かれるチャン・ツィイー、その素顔は気遣いが素晴らしい努力家だった!【映画スターに恋して:第6回】
ハリウッド版『ゴジラ』の最新作にも登場
日本発、ハリウッド製作の超大作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』にアイリーン・チェン博士役で出演し“国際派女優、健在!”をアピールしたチャン・ツィイー。
奇しくも日本では、ハリウッドでも名を馳せたジョン・ウー監督の“集大成”と称される歴史超大作『The Crossing -ザ・クロッシング- PartI, II』(14年・15年)が同時期に公開される。中国の苛烈な国共内戦時代に、出征したまま行方不明になった恋人を探すため娼婦にまで身をやつす女性に扮したツィイーは、久しぶりに<中国の至宝>と讃えられる美しさと深い演技力を堪能させてくれて、大満足。...
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アカデミー賞監督アルフォンソ・キュアロン、“おバカでチャラ男”と言われた意外すぎる過去が判明!【映画スターに恋して:第5回】
『ROMA/ローマ』で2度目のアカデミー賞監督賞を受賞
『ゼロ・グラビティ』(13年)に次いで、2度目のアカデミー賞監督賞に輝いたメキシコ人監督アルフォンソ・キュアロン。同時に外国語映画賞・撮影賞も受賞した『ROMA/ローマ』は、半自伝的な物語となっている。メキシコシティ郊外にあるコロニア・ローマに住む医者の一家と家政婦の日常を淡々と追うカメラは、ドキュメンタリーのような味わいをかもし出し、批評家からも絶賛された秀作だ。
宇宙空間に放り出された人間の極限を描く『ゼロ・グラビティ』にも驚かされたけれど、それでもあの作品は観客が大好きなSF・ヒューマン・サスペンスだった。しかし『ROMA/ロ...
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クリスチャン・スレーター完・全・復・活! 漂う“クセ者臭”は良作『天才作家の妻』でも健在【映画スターに恋して:第4回】
胡散臭い役柄に独特の雰囲気がハマる!
グレン・クローズがゴールデン・グローブ賞(ドラマ部門)で主演女優賞を獲得した『天才作家の妻 -40年目の真実-』。アカデミー賞にもノミネートされ、受賞に“王手”をかけた感のある彼女が演じるのは、40年もの間、家庭ばかりか仕事の面でも全身全霊を注いで夫を支え、有名作家に育て上げた初老の妻。映画は、ノーベル賞を受賞することになった夫の同伴者として授賞式の開催地ストックホルムに降り立った彼女の揺れ動く心模様と、衝撃の決断を描いていく。
本作では、一歩下がって夫の後ろを歩く献身的な賢夫人が自我に目覚めて憤懣の塊と化すのだが、クローズのその巧みな変貌プロセスに...
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エル・ファニング『フランケンシュタイン』を生んだ女流作家を熱演! ソフィア・コッポラも認める演技力で若手女優No.1の成長株【映画スターに恋して:第3回】
本格的なベッドシーンや初の母親役にも挑む
『メアリーの総て』は、ゴシック小説の金字塔と賞賛される『フランケンシュタイン』を描いたメアリー・シェリーの物語だ。
時は、男尊女卑の風潮が色濃い19世紀のイギリス。そんな環境の中で、なぜ18歳という若さで“死者の肉体を蘇らせる”という奇想天外なアイディアが生まれたのか? またその“怪物”に、深い愛と哀しみを織り込むことができたのか? そこには自分を産んで亡くなった母への憧憬や罪悪感、愛する男の手ひどい裏切りなどがある。それこそが、世間知らず=イノセントだったメアリーに、深い洞察力と真の強さを与えたのだと思う。
若きメアリーの愛と哀しみ、そして成長...
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美少女から美女へ……エマ・ワトソンは有言実行!『ハリー・ポッター』終了後も女優として快進撃を続行中 【映画スターに恋して:第2回】
“子役あがりは成功しない”なんて言われるけれど……
俳優として長く活躍するのはむずかしい。出演作がヒットしなければ、どんなに演技がうまくてもいわゆる“経済価値”が認められず、次第に活躍の場が限られてしまう。そう、売れてナンボの商売だ。
しかも、その売れ方によっては弊害も種々雑多にある。たとえば、大ヒットした後にヒットがなければ“一発屋”。人気シリーズになったはいいが、同じ役を演じ続ければ“タイプ・プレイヤー”とみなされて、似たような役柄しか回ってこなくなり、飽きられてしまうこともある。そうそう、“子役あがりは成功しない”なんていうジンクスもあるんだよなぁ。
そこで、エマ・ワトソンだ。知っ...