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ロンドンを舞台にした人気ミュージカル作品が、最高峰のキャストで映画化。『トゥモロー・モーニング』
日本では2013年に石井一孝、島田歌穂、田代万里生、新妻聖子の上演で話題を集めた『トゥモロー・モーニング』が、ここに映画化された。監督はこの作品の初演を演出し、15周年公演も手掛けるはずだった(残念ながらコロナ禍で流れてしまったが)ニック・ウィンストン。彼の強力なコネクションによって『レ・ミゼラブル』『シカゴ』『アナと雪の女王』のサマンサ・バークス、『オペラ座の怪人』『レ・ミゼラブル』『エビータ』のラミン・カリムルーのスクリーン上での共演が実現した。卓越したミュージカル俳優のふたりであるだけに、思いっきり歌い、ハモリ、コール&レスポンスを繰り広げる。テムズ川など英国の美しい風景を随所で見...
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約40分の中に、容赦ないリアルが盛り込まれている。「明日は我が身」と、ひりひりした。映画『ストレージマン』公開
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022で観客賞受賞、福岡インディペンデント映画祭2022でグランプリに輝いた萬野達郎監督作『ストレージマン』が、12月16日から18日まで池袋HUMAXシネマズにて先行上映される。
主人公の森下は、かつては一流企業に勤めていて、後輩からも慕われる存在であったが、コロナ禍で生活が一変。義理の父の意向もあって、妻や娘からも切り離されてしまった。そんな彼がトランクルームでの生活を始めてからが、この映画のメインテーマとなる。本来は物を置くための部屋であり、人間の寝泊まりはもちろん飲食も厳禁のトランクルームで、衣食住をしていくわけである。ぼくは「いつかバレるんじゃ...
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映画『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』でプロデューサーを担った「櫻川ヒロ」にインタビュー。「アナログ特撮のすごさを実感しました」
「アナログ特撮を守っていきたい、後世に伝えたい」。原作・監督・脚本を担当する石井良和の気概あふれる快作(怪作)、『特撮喜劇 大木勇造 人生最大の決戦』が12月9日(金)から上映される。先に米国のカンザスシティ・アンダーグラウンドフィルムフェスティバルで上映され、最優秀長編映画 審査員賞に輝いた一作だ。
主人公の大木勇造は、大手企業からリストラされた元サラリーマン。謎の企業「ギャラクシー商会」に再就職するものの、そこに勤めるのは銭ゲバ社長、会員数ゼロのフィットネス講師、廃品回収とは名ばかりのゴミ泥棒、ギャンブル狂の営業担当、着ぐるみの中に引きこもる男など、濃すぎる面々ばかり。
今回、インタ...
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「True Colors Festival THE CONCERT 2022」開催。障害・性・世代・言語・国籍を超えて個性豊かなアーティストが集まった奇跡の2デイズ
『HiVi』誌の取材で2019年の「True Colors Festival(トゥルーカラーズフェスティバル)-超ダイバーシティ芸術祭-」を訪れたことが忘れられない。大人も子供も誰も彼も一緒、音楽間のジャンルの壁はもちろん、音楽と絵画とか、音楽とダンスとかの境目もなかった。外が大雨だったことも鮮明に覚えているが、そこだけはカラッと明るく、人間と人間のふれあいがあった。
それからはや3年を経た11月19日と20 日、「True Colors Festival THE CONCERT 2022」が東京ガーデンシアターで開催された。主催の日本財団は、50 年以上にわたって国内外の障害者支援を行...
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カンヌ国際映画祭のACID部門に日本映画として初選出。16ミリフィルムで撮影された、深い余韻を残す一作『やまぶき』
今年5月に行なわれたカンヌ国際映画祭のACID部門に日本映画として初選出。農業と映画製作の両方を続ける山﨑樹一郎監督の長編第三作『やまぶき』が、11月5日(土)よりユーロスペース、11月12日(土)よりシネ・ヌーヴォ、京都みなみ会館、元町映画館にて公開される。
やまぶきとは、祷キララ演じる女子高校生“早川山吹”の名前、そして陽の当たりづらい場所に咲く野生の花「山吹」のことでもある。
主人公は、韓国人男性のチャンス(カン・ユンス)。かつては乗馬競技のホープであったが、父親の会社が倒産したため多額の負債を背負うことになり、岡山県真庭市でヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で...
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スペインの鬼才アルモドバル監督の最新作『パラレル・マザーズ』が日本上陸。主演はペネロペ・クルス
『オール・アバウト・マイ・マザー』や『トーク・トゥ・ハー』で知られるスペインの名監督、ペドロ・アルモドバルの最新作『パラレル・マザーズ』が11月3日(木・祝)からヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ、新宿シネマカリテ他で公開される。
「同じ日に母となった二人の女性の人生と交流」、1936年に起こりピカソ『ゲルニカ』の題材にもなった「スペイン内戦(市民戦争)」、さらに「DNA鑑定」、マイルス・デイヴィス「枯葉」(キャノンボール・アダレイのアルバムより)やジャニス・ジョプリン「サマータイム」といった伝説的名演などなど------これら、一見ばらばらな要素がいかに結び...
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時をかける人型ロボットのエモーショナルな一篇。ヒューマンドラマ、SF、過去、未来の境界線が溶けてゆく力作『アフター・ヤン』
草原や樹木の美しさ、自然光の暖かさ、ゆっくりした会話のテンポ、画面も展開も極めてアコースティックでオーガニックだ。なのにこれは確実に未来の話なのである。そうだなあ、今の社会の進み具合、荒れ具合から考えると、この映画のようなストーリーが実際のエピソードとして人々の間に登場するのは、あと100年ぐらい先になるのかもしれない。とにかく映画の舞台は未来世界なのだ。
この未来世界では、「テクノ」と呼ばれる人型ロボットが普及していた。見かけはまるで人間、言葉も見事にあやつる。知識も豊富だ。人柄(機械柄)も実に穏やか。このロボットを「所有」しているのは、茶葉の販売店を営むジェイクという男。彼と妻のカイ...
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英国セレブの屋敷に、米国の映画スターたちがやってきた! 映画史上、音楽史上に残る激動の「1928年」が舞台
テレビシリーズがエミー賞、ゴールデングローブ賞ら数々のアワードを獲得。英国貴族の屋敷を舞台にした人気シリーズ、『ダウントン・アビー』の映画版第二弾が9月30日から全国ロードショーされる。今回も第一弾同様、その上質なユーモアで多くの観客を引き込むことだろう。加えて、ハラハラさせられるような恋の展開もある。
舞台は1928年。映画撮影のためにハリウッドのスターが、この邸宅に来ることになった。この「1928年」がポイントだ。無声映画に替わってトーキー(トーキング・ピクチャー)が急速に広まりつつあった頃で、たとえルックスが良くても、訛りがひどいとか声が悪いとか、そういった俳優は別のひとに声の吹き...
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アフリカ・サバンナでの手に汗握る戦い。ユニバーサル・スタジオがおくる、スリル体験型サバイバルアクション『ビースト』
モンスターパニックの傑作『ジョーズ』、『ジュラシック・ワールド』でおなじみ、ユニバーサル・スタジオの最新作。それだけでド迫力は保証されたも同然だろう。観る者にしっかり恐怖や不安をもたらすなかに、豊かなストーリー展開があり、選りすぐりの俳優たちがアクションも交えながら快演する。しかも舞台はアフリカの広大なサバンナなのだ。そんないわくつきの作品『ビースト』が、この9月9日から全国公開される。
監督はバルタザール・コルマウクル、主人公ネイト・ダニエルズ医師にはイドリス・エルバ(『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』等)が扮する。撮影は南アフリカのリンポポ州、北ケープ州のケープタウンで敢行された...
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フランスの名優、ジャン=ポール・ベルモンドの死去から1年。「ベルモンド傑作選」の第3弾が、9月2日からスタート
昨年9月6日の死去から、はや1年。フランスの名優、ジャン=ポール・ベルモンドの特集シリーズが今年も行なわれる。題して「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」、9月2日より東京・新宿武蔵野館からスタートする。
今回のラインナップは、次の通り。
『華麗なる大泥棒』
アンリ・ヴェルヌイユ監督の1971年作品。国内未ソフト化(フランス語完全版)、HDリマスター版による51年ぶりの劇場公開
『ラ・スクムーン』
ジョゼ・ジョヴァンニ監督の1972年作品。未ブルーレイ化、HDリマスター版による49年ぶりの劇場公開
『勝負(かた)をつけろ』
ジャン・ベッケル監督の1961年作品。未DVD&ブルーレイ化、H...
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視覚を失った女性がその先に感じたものとは? 途方もなく現代感覚にあふれるサスペンス作品『シーフォーミー』
こういうアプローチがあるのか、と、唸らされた。「こういう」とは即ち、ストーリー、キャラクター設定、カメラワーク、音響、過去←→現在←→未来の交差などを示す。タイトルに出てくる“シーフォーミー”とは、視覚障がい者サポートアプリのこと。ほか、「FPSゲームの現実化」というしかない場面もたっぷり含まれる。
アグレッシヴな展開が多いにしても、鑑賞後、「現代の映画を観た」というすがすがしい気持ちになった。セリフも興味深く、「googlin’」(ググる、という感じか)という英単語があることを筆者はここで初めて知った。
主人公のソフィはオリンピック出場の夢を持っていたスキーヤー。だが、志なかばで視力を...
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アジア映画のイメージを一新した珠玉の5作が、鬼才監督みずからの監修で4Kレストア化
才人監督みずから、往年の名作に新たな息吹を注ぎ込む。当時を知らないひとはあまりにもスタイリッシュな画面展開に感銘を受け、当時を知る人は彼の先見性を改めて思い知ることになるだろう。
ウォン・カーウァイ監督の5作品が、4Kレストアで蘇る。ラインナップは『恋する惑星』(1994年)、『天使の涙』(1995年)、『ブエノスアイレス』(1997年)、『花様年華』(2000年 第53回カンヌ国際映画祭にてトニー・レオンが主演男優賞を受賞)、『2046』(2004年)。
新たな上映素材について、監督は「『恋する惑星』と『花様年華』は私のお気に入りのアスペクト比1.66:1で撮影され劇場公開されましたが...