執筆陣
時をかける人型ロボットのエモーショナルな一篇。ヒューマンドラマ、SF、過去、未来の境界線が溶けてゆく力作『アフター・ヤン』
草原や樹木の美しさ、自然光の暖かさ、ゆっくりした会話のテンポ、画面も展開も極めてアコースティックでオーガニックだ。なのにこれは確実に未来の話なのである。そうだなあ、今の社会の進み具合、荒れ具合から考えると、この映画のようなストーリーが実際のエピソードとして人々の間に登場するのは、あと100年ぐらい先になるのかもしれない。とにかく映画の舞台は未来世界なのだ。
この未来世界では、「テクノ」と呼ばれる人型ロボットが普及していた。見かけはまるで人間、言葉も見事にあやつる。知識も豊富だ。人柄(機械柄)も実に穏やか。このロボットを「所有」しているのは、茶葉の販売店を営むジェイクという男。彼と妻のカイ...