執筆陣
南部ニューオリンズを舞台にした、あまりにも幻想的でデカダンな物語。謎の女性<モナ・リザ>の行く末は?
奇想天外と断言したくなる物語なのに、妙なリアリティがある。スケールの大きな物語だが、人間の持つバイタリティが通奏低音の役割を果たしているように思えた。
主人公となるアジア系女性、その名も〈モナ・リザ〉は、12年もの間、精神病院で毎日を過ごしていた。が、赤い満月に照らされた夜、突如として特殊能力に目覚め、ニューオリンズにたどり着く。アメリカ南部の港町、アフリカ系文化とフランス系文化の「るつぼ」のような土地で、彼女は文字通りの「魔女」となって、ときに新しい仲間と連れ立ちながら、異様なパワーを発揮する。警官とのやりとりには「エクストリームな追いかけっこ」的な趣があり、少年となんとも味わい深い愛...
執筆陣
天才芸術家の世界にようこそ! 「ダリの世界」に足を踏み入れた美術青年が見たものとは? 『ウェルカム トゥ ダリ』公開
興味の尽きない芸術家、サルバドール・ダリを、おそらくかつてない角度から描いたドラマ映画が公開される。主な舞台は1974年のニューヨーク。ダリと妻のガラに気に入られた青年ジェームスの視点を中心に、物語が繰り広げられてゆく。
ジェームスがいかにしてダリ夫妻と知り合ったかは本編にガッチリ描かれているので割愛するが、なにしろダリとガラのキャラクターが超強烈なので、見ているうちに「ジェームス、大変だったろうな」と感情移入してしまうのは私だけではないはずだ。ダリはもう“晩年”、すでにエスタブリッシュメントの域になって久しく、年上妻のガラも老いが目立ち始めた。なのだがガラは、たいして才能があるとも思わ...
執筆陣
宮沢賢治には、こんな父親がいた。直木賞受賞の人気小説を、豪華メンバーで映画化。『銀河鉄道の父』公開へ
天才とて親がいなければ生まれてこない、とはわかっていても、宮沢賢治の軌跡を本人からではなく、その父の側から描くという発想はやはり相当に斬新であり、まず私は着眼点に引きつけられた。そして見る前に――普段はまず、しないのだが――下調べしてしまった。宮沢賢治の父親はかなり裕福な家の育ちで(質屋を継いでいる)、息子が病没してからも40年以上長生きし、宗教活動にも熱心で、政治家にもなった。「あの宮沢賢治の父親」として、相当なヴァリューを誇っていたに違いない。
原作は門井慶喜の第158回直木賞受賞小説。父親・政次郎には、役所広司が扮する。この映画で描かれている賢治は、伝説化されたヒーローではない。不...