執筆陣
宮沢賢治には、こんな父親がいた。直木賞受賞の人気小説を、豪華メンバーで映画化。『銀河鉄道の父』公開へ
天才とて親がいなければ生まれてこない、とはわかっていても、宮沢賢治の軌跡を本人からではなく、その父の側から描くという発想はやはり相当に斬新であり、まず私は着眼点に引きつけられた。そして見る前に――普段はまず、しないのだが――下調べしてしまった。宮沢賢治の父親はかなり裕福な家の育ちで(質屋を継いでいる)、息子が病没してからも40年以上長生きし、宗教活動にも熱心で、政治家にもなった。「あの宮沢賢治の父親」として、相当なヴァリューを誇っていたに違いない。
原作は門井慶喜の第158回直木賞受賞小説。父親・政次郎には、役所広司が扮する。この映画で描かれている賢治は、伝説化されたヒーローではない。不...