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『トレインスポッティング』やポン・ジュノを愛する中国の才人が放つ、超スリリングな初監督作『兎たちの暴走』
「次はどうなるのか?」と、ハラハラしながら見入った。2020年の第33回東京国際映画祭のワールドプレミアとして上映されて話題を呼んだ作品が、ついに全国公開されることになったのは大きな喜びだ。監督のシェン・ユーは、中国で最も注目されている気鋭であるときく。彼女が初監督作品の題材としたのは、2011年に起きた事件。母と娘が、娘の同級生を誘拐・殺害するという、「事実は小説より奇なり」を地で行くような事柄をベースとして、ときに冷酷に、ときに物語性豊かに描く。
映画の冒頭は、いわば「現在」。事件の後である。そこから一気に時が戻る。舞台は、重工業が盛んな四川省の攀枝花市。父親、継母、弟と決して豊かと...
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アリ・アスター監督が「ヤン・シュヴァンクマイエルとクエイ兄弟の後継者」と称賛するチリ産コンビの、超絶力作『オオカミの家』
要注目のストップモーション・アニメ作品が8月19日から渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショーされる。クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャのコンビによる初の長編映画『オオカミの家』だ。
“レオン&コシーニャ”は、ここで監督のほかに脚本、美術、撮影、編集も務め、作品の大部分を二人で完成させたという。ピノチェト軍事政権下のチリに実在したコミューン“コロニア・ディグニダ”(ドイツ系移民を中心とした入植地で、元ナチス党員らが設立)にインスパイアされた作品――それだけで一筋縄ではいかなさが漂ってくるではないか。
わけあって集落から脱走した少女“マリア”が主人公だが、彼女がいか...
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「藤竜也」のスクリーンデビュー60周年第2弾。尾道を舞台に、味わい深い親子の姿を描く『高野豆腐店の春』
スクリーンデビューから60周年を迎えた藤竜也の、今年2本目となる主演作だ。麻生久美子との共演は『猫の息子』以来、26年ぶりであるという。監督・脚本は三原光尋。
舞台は、広島県の尾道。そこにある老舗の「高野(たかの)豆腐店」で夜明け前から豆腐づくりにいそしむ高野辰雄(藤竜也)と、娘の春(麻生久美子)が物語の中心だ。辰雄は物事の好き嫌いが激しく、ときにカッとなる性格だが、それは逆に言えば率直ということでもある。残念ながら妻には先立たれてしまったものの、友人には恵まれている。春はそんな父を堅実にサポートしているが、彼女は、いわば“出戻り”であり、辰雄としては今度こそ幸せな結婚をしてほしいと考え...
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酷暑を吹き飛ばす熱気とともにファンが結集。『機動警察パトレイバー the Movie』舞台挨拶付き記念上映会レポート
8月10日は“パトレイバーの日”。そして、パトレイバー35周年、EMOTIONレーベル40周年記念で発売された「機動警察パトレイバー the Movie 1+2 SET Blu-ray」の発売にちなんで、8月10日に東京・新宿ピカデリーで『機動警察パトレイバー the Movie』舞台挨拶付き記念上映会が行なわれた。ここでは、そこでの舞台挨拶の模様をレポートする。
酷暑が続く東京は、日が暮れてもまだまだ暑い。しかし、『機動警察パトレイバー the Movie』の上映が終わったばかりの劇場内はそれ以上の熱気に包まれていた。そんななか、スクリーン前の舞台に司会を行なう天津向さんが登壇し、ゲス...
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男女が出会い、恋をし、別れ、そして他人に。「別れ」を経験したひとを共感させるに違いない一作『もしかしたら私たちは別れたかもしれない』
英語タイトルは「SOMEONE YOU LOVED」。あなたが愛した誰か、という意味だろう。主人公はジュノ(イ・ドンフィ)とアヨン(チョン・ウンチェ)のふたり。美大で出会い、すぐに意気投合をする。芸術に関するセンスも、性格も、何もかも一致していたのだろうし、毎日が楽しくてしようがなかったに違いない。親友から恋人になるには時間がかからなかった。スクリーンから青春の輝きがあふれ出るのが、この時代の二人を描くシーンだ。
が、これ以降の時代が、この映画のほろ苦さだ。美大を出たからといって美術の第一人者になれるとも、そもそもそれで生活できるとも限らない。30代を迎えたジュノは公務員を目指して浪人生...
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タランティーノ引退まであと1作……人にも映画にも愛される彼を追った“ファンミ”さながらの熱いドキュメンタリー映画が公開!【映画スターに恋して:第32回】
イイ奴! 大好き! 関係者たちが嬉しそうに語る素顔のタランティーノ
「長編映画を10作撮ったら、映画監督を引退する」と公言しているクエンティン・タランティーノ。そんな彼の映画人生をたどるドキュメンタリー『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』が制作されたのは、デビュー作『レザボア・ドッグス』(92年)から数えて9作目にあたる『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』と同じ2019年。そして待望の公開は、10作目『The Movie Critic』の撮影準備が始まった今年2023年だ。
このドキュメンタリーを見たら、長年のファンはもとより、例えば黄色いジャージ姿で暴れる『キ...
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“君はひとりじゃないー それは、遥かな星からのメッセージ” ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』が、2024年春に公開決定。ティザーポスターと特報も公開
ウォルト・ディズニー・ジャパンは、2024年春に『星つなぎのエリオ』(原題:Elio)を全国公開する。今回そのティザーポスター&特報が解禁された。
『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『インサイド・ヘッド』『マイ・エレメント』など、イマジネーションあふれる “もしもの物語” を描き、数々の心温まる感動を贈り届けてきたディズニー&ピクサー。『星つなぎのエリオ』は、『リメンバー・ミー』(17)で脚本・共同監督を務めたエイドリアン・モリーナの監督・脚本で贈る最新作だ。
主人公エリオはいつもひとりぼっち。親の期待に応えようと参加したキャンプにも馴染めずにいた。ある日、母との電話が傍受され...