4年前のCES2019では、シャープがブースを出展、アメリカ再参入を訴えた。当時、副社長だった石田佳久氏にインタビューした。石田氏は「CESには4年ぶりのブース出展になります。弊社はアメリカのビジネスではB to Bが中心ですが、商品も揃ってきましたので、このあたりできちんとアメリカの皆様にも、シャープがどんなことをやっているかを訴求しようと思いました」と言っていた。

画像: ウィン・ラスベガスホテルのボールルーム「Petrus」のシャープ・スゥイート

ウィン・ラスベガスホテルのボールルーム「Petrus」のシャープ・スゥイート

 ところがこの試みはその後、コロナ禍などもあり、実際にはわずかな試験販売で終わっていた。盛りあがったテレビ需要も急減し、なかなか入るタイミングを失っていた。でも、アメリカ市場を担当する吉田宏之氏(シャープ スマートディスプレイシステム事業本部 欧米TV事業部長兼米州事業推進部長)は、「われわれは需要の退潮は底を打ったとみています。今がチャンスですよ」。

 シャープは、北米から撤退し、ハイセンスにブランド使用権を売っていた時期が2年ほどあったが、「ハイセンスさんは、 “シャープ” を前に打ちだし、 “AQUOS” ブランドはあまり使っておられませんでした。なので今回の “AQUOS” での再参入では、登場感と久しぶり感をユーザーさんがお持ちのようです。昨年12月に一部地域で、65型のテスト販売を行ったところ、AQUOSが戻ってきたと評判でした」(吉田氏)。

画像: 世界最大級のミニLEDバックライト搭載120型モデル

世界最大級のミニLEDバックライト搭載120型モデル

 そこでふたつの正面作戦を採用する。ひとつが高級イメージの醸成。ミニLEDバックライトを搭載した液晶テレビ「AQUOS XLED」シリーズを、2023年春に発売。2022年11月に日本国内でリリースした「EP1」シリーズをベースに、アメリカ仕様に変えたものだ。75型、70型、65型の3サイズだ。日本では55型、60型も販売しているが、大画面指向のアメリカは大型サイズに特化した。

 ミニLEDバックライトは、2,000以上のエリア分割数という。さらにミニLEDバックライト搭載の液晶ディスプレイとして世界最大級の120型モデルも出展している。ひじょうに高価だが、購入者の出現が期待される。

画像: 【麻倉怜士のCES2023レポート02】 “SHARP is Back AGAIN” シャープが「AQUOS XLED」でアメリカに再参入。ミニLEDバックライト搭載液晶テレビで高級イメージをアピール
画像: Roku OSに期待

Roku OSに期待

 もうひとつが「大衆作戦」だ。ミニLEDバックライト液晶テレビ「AQUOS XLED」でイメージを獲得し、実際のビジネスは、それより安価な液晶テレビと、アメリカ仕様の有機ELテレビでいただくという作戦。液晶は75型、65型、55型、50型、有機ELは65型、55型だ。

 ポイントはアメリカでたいへん人気のあるスマートテレビOSの「Roku」を搭載したこと。Rokuは使い易さから、他のOSに比して強いポジションを持つ。2019年秋に先行して再参入したメキシコ市場でRoku TVが売れており、その実績から、アメリカへの展開を決定した。

 シャープは、AQUOS XLEDにはグーグルテレビOSを採用しているが、Roku OSは戦略的にたいへん重要だ。Rokuの担当者によると、すでに1,700万のテレビに搭載され、ユーザーはひとり当たり、1日に3時間以上使っているという。液晶テレビにはRokuは似合うが、今回の注目は有機ELテレビにも搭載することだ。

画像: Roku搭載の有機ELテレビ

Roku搭載の有機ELテレビ

 実はRoku側は他社の有機ELテレビとの関係を作りたかったが、SoC(システム・オン・チップ)調達の問題などから、有機ELテレビメーカーにはことごとく断られていた。そこでシャープに提携話を持ち込んだところ、シャープにとっては “渡りに船” だったのだ。

 吉田氏は「アメリカにおいて、AQUOSブランドのテレビの価値を、改めて認識していただきたい。フルラインナップ展開によって、2025年度までには、かつての販売台数シェアにまで回復させたい。まずは数パーセントが目標です」と意気込む。ぜひ日本ブランドの代表として、頑張って欲しい。

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