ソニーPCLでは、Crystal LEDを使った新しい撮影スタジオ「清澄白河BASE」を2月1日にオープン、バーチャルプロダクションの運営を開始している。その清澄白河BASEについては、以前の本連載で担当者インタビューを行い、概要を紹介した(関連リンク参照)。

 麻倉さんからは、インタビューの取材時から清澄白河BASEの現地を見てみたいというリクエストをもらっていたが、新型コロナウィルス感染症などの問題もあり、未定の状態が続いていた。だが今年3月末、ようやく内覧会が実現、麻倉さんと一緒にバーチャルプロダクションスタジオの詳細を拝見できた。

 清澄白河BASEの機材等については速報でリポート済みなので、今回はバーチャルプロダクションの現場を体験した麻倉さんのインプレッションを中心に、その魅力を紹介しよう。(編集部)

清澄白河BASE
東京都江東区石島2-14 Imas RiverSide5F

画像: ソニーPCL「清澄白河BASE」をやっと体験。バーチャルプロダクションだからこそ実現できる、新しい映像表現の可能性を感じた:麻倉怜士のいいもの研究所 レポート75

<主な常設機材>
●使用LED:ソニー「Crystal LED Bシリーズ」(LED画素ピッチ1.58mm)
●解像度:水平9600×垂直3456画素
●天井LED:水平1008×垂直1008画素※メーカー非公開
●カメラ:ソニー デジタルシネマカメラ「VENICE」
●カメラトラッキングシステム:Mo-Sys「Star Tracker」
●送出システム:IC-VFX「Unreal Engine 4」、ソニーPCLのオリジナルメディアプレイヤー「ZOET 3」「ZOET Scaler」(外部入力用)

画像: 清澄白河BASEの平面図。横幅約15mのCrystal LEDを備えたバーチャルプロダクションスタジオを中心に、映像制作のための設備が準備されている。ビルの5Fという立地ながら、車が自走で搬入できる点も特長

清澄白河BASEの平面図。横幅約15mのCrystal LEDを備えたバーチャルプロダクションスタジオを中心に、映像制作のための設備が準備されている。ビルの5Fという立地ながら、車が自走で搬入できる点も特長

 3月末に、やっと清澄白河BASEにうかがうことができました。ソニーPCLのバーチャルプロダクションについては、昨年、東宝スタジオにCrystal LEDを設置した頃からずっと注目していましたが、コロナ禍などの問題でなかなか現地を見ることが叶わなかったのです。

 今回ようやく清澄白河BASEの内部を拝見できたわけですが、ビルの5階にあるとは思えないくらい天井も高く、ひじょうに大きな体積・容積を持った空間で、設置されたCrystal LEDウォールも本当に大きい。バーチャルプロダクションにかける本気度を感じました。

 ソニーPCLでは、これまでも目黒の本社や世田谷の東宝スタジオを使ってバーチャルプロダクションをテスト、運営していましたが、清澄白河BASEはそういった一時的な設備ではなく、恒久的なスタジオとして運営していくんだという意気込みを感じます。

画像: 正面のCrystal LEDに加え、天井一面にLEDがセットされている。こちらは映像を映し出すこともできるし、LED照明のように使うことも可能

正面のCrystal LEDに加え、天井一面にLEDがセットされている。こちらは映像を映し出すこともできるし、LED照明のように使うことも可能

 延べ床面積は1430平方メートルで、Crystal LEDを備えたバーチャルプロダクションスタジオが760平方メートルという広さ。このバーチャルプロダクションスタジオを取り囲むように役者さんの楽屋やメイクアップルーム、ミーティングスペースなども完備されています。

 何よりCrystal LEDの映像が素晴らしい。ソニーが開発したBシリーズと呼ばれる高輝度・高コントラスト・広色域パネルを使っており、これを常設したバーチャルプロダクションは世界でも他に例がないとのことでした(2022年3月末時点)。

 Crystal LEDウォールは横幅15.2×高さ5.4mというサイズを備えています。東宝スタジオなどでの検証からカーブ配置の方が撮影に向いているとのことで、ここでもゆるやかなカーブを描くように配置されています。

画像: Crystal LEDは高輝度、高コントラストで、照明の映り込みの少ないBシリーズを使用。様々な角度からの撮影に配慮し、ゆるやかなカーブを描いて配置されている

Crystal LEDは高輝度、高コントラストで、照明の映り込みの少ないBシリーズを使用。様々な角度からの撮影に配慮し、ゆるやかなカーブを描いて配置されている

 水平9,600×垂直3,456画素、全体で8K相当の解像度を持っているとのことで、これだけ大きな画面でバーチャルプロダクションの撮影ができるというのは凄いことでしょう。Crystal LEDに近寄ってじっくり観察すると、パネルの画素構造はわかりますが、実際に被写体をその前に置いて、カメラで撮影した映像をモニターで見ると、背景がバーチャルだとはまったくわかりません。

 しかも清澄白河BASEでは、赤外線センサーを使ってカメラ(ソニーのデジタルシネマカメラ『VENICE』)がどの位置で撮影しているかを識別、それに応じて背景画像を本来あるべき角度で自動的にレンダリングし直す機能まで備えています。カメラの視点と背景の位置関係がリンクしているわけで、本当に自然な見え方が可能となります。

 つまり、カメラで撮影した時点で従来の合成処理が終わっているということで、撮影の後処理が格段に効率化できるということですね。これはインカメラVFXと呼ばれており、清澄白河BASEの大きな特徴になっています。

画像: 撮影用のカメラはソニーのデジタルシネマカメラ「VENICE」を使用

撮影用のカメラはソニーのデジタルシネマカメラ「VENICE」を使用

画像: モニター部の横にある赤いパーツが赤外線センサー。天井に配置されたトラッキングマーカーと連動してカメラ位置を識別、その情報によりCrystal LEDに表示される映像がリアルタイムでレンダリングされている

モニター部の横にある赤いパーツが赤外線センサー。天井に配置されたトラッキングマーカーと連動してカメラ位置を識別、その情報によりCrystal LEDに表示される映像がリアルタイムでレンダリングされている

 バーチャルプロダクション撮影では、光の反射も素晴らしかった。発表会では、Crystal LEDウォールの前に自動車を置いて撮影のデモが行われましたが、実際にCrystal LEDという発光体からの光が車に映り込んでいるわけで、当たり前ですがとても自然です。

 3DCGで制作された背景映像は、光の反射が自然で、かつカメラの動きとシンクロすることで、とても生々しい映像になると感じました。サイドミラーなどへの写り込みもリアルでしたね。

 高精細な背景映像が自由自在に再現できて、さらに撮影時にはカメラに連動して自然に切り替わってくれる。こんなことは今まで望んでもできなかったわけで、クリエイター、映像作家にとっては夢のような技術です。今後は、初めからバーチャルプロダクションで撮ることを想定した作品づくりも出てくることでしょう。

画像: 隣接する駐車場から、そのままスタジオに入れるアプローチも準備されている

隣接する駐車場から、そのままスタジオに入れるアプローチも準備されている

 ソニーPCLによると、清澄白河BASEには既に問い合わせが殺到していて、空いている時間が少ないそうです。スタジオ使用料は従来に比べると高いようですが、それでもバーチャルプロダクションを使ってみたいという声は多いといいます。

 特にCM撮影が多く、バーチャルプロダクションなら移動時間も少なくて済むし、天候を気にしなくてもいいので、結果としてタレントさんの拘束時間も減って、効率的だそうです。また同じ背景を何度でも再現できるので、Web CMなどでバリエーション違いを作りやすいといった点も人気のようです。

 他にもCrystal LEDの前でライブを行い、それをリアルタイムで配信するといったイベント的な使い方も提案しているそうで、ソニーPCLではリアルとバーチャルのハイブリット空間としても活用していきたいと話していました。

 これまでバーチャルプロダクションはどちらかというと、コロナ禍で集まれない、ロケに行けないといった場合の代替案というイメージが強かったのですが、今回清澄白河BASEを体験して、バーチャルプロダクションだからこその新しい映像表現、映像づくりができるのではないかと思いました。

画像: 取材に協力いただいた方々。麻倉さんの右がソニーPCL株式会社 代表取締役 執行役員社長(取材当時、現同社顧問)の佐藤倫明さんで、左は同 クリエイティブ部門 ビジュアルソリューションビジネス部 統括部長の小林大輔さん

取材に協力いただいた方々。麻倉さんの右がソニーPCL株式会社 代表取締役 執行役員社長(取材当時、現同社顧問)の佐藤倫明さんで、左は同 クリエイティブ部門 ビジュアルソリューションビジネス部 統括部長の小林大輔さん

<ソニーPCLによるバーチャルプロダクション制作実績>

ソニーグループ株式会社「VISION-S02│CONCEPT MOVIE」

画像: BTS “VISION-S 02 | Concept Movie” x VIRTUAL PRODUCTION www.youtube.com

BTS “VISION-S 02 | Concept Movie” x VIRTUAL PRODUCTION

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SixTONES– 共鳴[PLAYLIST※ -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.4]

画像: SixTONES – 共鳴 [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.4] www.youtube.com

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SixTONES – Gum Tape [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.5]

画像: SixTONES – Gum Tape [PLAYLIST -SixTONES YouTube Limited Performance- Day.5] www.youtube.com

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