名匠ウォルター・サレスが、16年ぶりに祖国ブラジルにカメラを向けた一作。「命」と「平和」を今、問う。『アイム・スティル・ヒア』
映画化してくれたことに感謝したい。というのも、この作品の基になった実話を、私は不勉強にして今の今まで知らなかったからだ。
主人公は元国会議員のルーベンス・パイヴァ(軍事クーデター後、海外に拠点を移していたことがある)と、妻エウニセのふたり。1970年代前半のある日まで、彼らは5人の子供たちとピースフルに暮らしていた。その中のひとりはジョン・レノンに夢中で、ザ・ビートルズゆかりの地のひとつであるロンドンの「アビー・ロード・スタジオ」で記念写真を撮ったほど。旅行中に訪れたレコード店で撮影した写真には、ボビー・ハッチャーソンの『サンフランシスコ』や、ギル・スコット=ヘロンの『ピーシズ・オブ・ア...