いまから約35年前、英国で産声を上げたオーディオブランド「Aura」(オーラ)。「シンプル&ミニマル」をコンセプトとし、洗練されたデザインと品質感のあるモノづくりで、世界のオーディオファンから確かな支持を得ている。

 今回の主役は、オーラ初のパワーアンプLCP 1との組合せを想定した、コントロールアンプLCC 1だ。世界に誇る燕三条の金属加工がなし遂げた美しいコスメティックデザインが特徴的だが、オーディオ機器としての評価も高く、世界各国からオーダーが日々舞い込んでいる。

 コントロールアンプとしての実力に並んでLCC 1で私が注目しているのは、MOS FETによるフルバランス構成アンプとして設計されたヘッドホンアンプとしてのパフォーマンスだ。性能を吟味したMOS FETをL/Rチャンネル用に2組ずつ、合計8個のパワーデバイスで駆動するという本格的なディスクリート設計で、コントロールアンプの回路とは完全な別回路として本体内に収められている。

 ヘッドホン端子は6.3mm径の標準フォーン型アンバランス端子と、4.4mm径のバランス端子の2系統とし、2段階のゲイン切替え機能を備える。

画像1: 『オーラ LCC 1 & クロスゾーン CZ-8A』×『ア・フュー・グッドメン』『マイノリティ・リポート』
確かなムービーサウンドを奏でるオーラLCC 1の高い駆動力《厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生術》

Control Amplifier
Aura
LCC 1
¥495,000 税込

●型式:ヘッドホンアンプ内蔵コントロールアンプ
●接続端子:アナログ音声入力3系統(RCA×2、XLR)、フォノ入力(MM)、アナログ音声出力2系統(RCA、XLR)、ヘッドホン出力2系統(6.3mmアンバランス、4.4mmバランス)、他
●寸法/質量 : W430×H71×D332mm/6.5kg
●問合せ先:ユキム ☎03(5743)6202

 

Headphone
Crosszone
CZ-8A
¥231,000(ペア) 税込

●型式:密閉型ダイナミックヘッドホン
●問合せ先:(株)トライオード
☎ 048(940)3852

 

非凡な性能を感じさせる緻密な響きの質感描写

 今回の特集の骨子である、トム・クルーズ映画作品の視聴用として使うヘッドホンは、クロスゾーンCZ-8Aだ。ヘッドホン再生では、どうしても頭の中で音が鳴っている特有の感覚、いわゆる頭内定位という現象が伴なうが、クロスゾーンは、アコースティックな手法でこの問題の軽減に取り組んだ話題作だ。

 「トム・クルーズ映画」の鑑賞前に2ch音源の聴き慣れた音楽曲を2、3再生してみたが、音の骨格を明確に描き上げる分解能の高さを備えているだけでなく、響きの質感が緻密だ。前方に拡がる自然な音場感、音源との距離感の描き分けは、まさにCZ-8Aの持ち味だが、LCC 1を駆動用アンプとして使うことで、声の抑揚、楽器の響きのニュアンスと、より鮮明に感じ取れた印象だ。なお、今回は4.4mmバランスケーブルが手配できなかったため、LCC 1とCZ-8Aは、アンバランス接続で再生している。

骨格まで感じるような声の太さが印象的

 こうなると自ずと映画鑑賞への期待が膨らむ。まずはトム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーアの3大スターの共演で話題を集めた軍法サスペンス『ア・フュー・グッドメン』(1992)のUHDブルーレイから再生していこう。

 弁護人に任命されたダニエル(トム・クルーズ)がジョアン少佐(デミ・ムーア)と一緒に、司令官ネイサン・R・ジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)に屋外のテラスでランチをともにするシーン。背景に海と空が雄大に拡がり、強烈な太陽光が彼らを照りつける緻密なフィルムルックの映像で場面が進行していくが、そこに広がる押さえの効いた色濃いサウンドがしっかりと対等に渡り合う。

 特に凄味が効いて、押し出しが強いジェセップ大佐の声が印象的。体の骨格まで感じさせるような落ち着いた音調は、LCC 1のヘッドホンアンプとしての力量を感じさせる。緊張感漂う会話の背景には、風、波などの細かな音が広がりつつ、さらに小鳥のさえずりや船の汽笛がところどころでフワッと響く。そんな場の雰囲気、気配まで淡々と描き出していく様子も聴き応えがあった。

画像2: 『オーラ LCC 1 & クロスゾーン CZ-8A』×『ア・フュー・グッドメン』『マイノリティ・リポート』
確かなムービーサウンドを奏でるオーラLCC 1の高い駆動力《厳選コンポーネントで挑む「トム・クルーズ映画」感動再生術》

DATA
UHDブルーレイ

『ア・フュー・グッドメン 4K ULTRA HD』
A Few Good Men

(ハピネットMM UHB-14593)¥5,217 税込

●片面2層
●映像:2160p、HDR10
●音声:ドルビーアトモス(英語)、ドルビーデジタル5.1ch(日本語)
●1992年アメリカ
●138分
●スタッフ:監督・ロブ・ライナー、原作・脚本・アーロン・ソーキン
●キャスト:トム・クルーズ、ジャック・ニコルソン、デミ・ムーア、ケヴィン・ベーコン

『ソーシャル・ネットワーク』『スティーブ・ジョブズ』『モリーズ・ゲーム』のアーロン・ソーキン原作・脚本の軍事法廷サスペンス。トム・クルーズとジャック・ニコルソンとの掛け合いを迫力満点に描き大ヒットを遂げた。LD時代からAVファンに愛された名作で、UHDブルーレイは2017年にリリース。HDR映像とドルビーアトモス音声を収録している

 

DATA
BD
『マイノリティ・リポート』
Minority Report

(ハピネットMM/ディズニー FXXJC-20918)¥2,096 税込

●片面2層
●映像:1080p、MPEG4AVC
●音声:DTS-HDMA5.1ch(英語)、DTS5.1ch(日本語)
●2002年アメリカ
●145分
●スタッフ:監督・スティーヴン・スピルバーグ、原作・フィリップ・K・ディック
●キャスト:トム・クルーズ、コリン・ファレル、サマンサ・モートン

日本でもファンの多いフィリップ・K・ディックの短編小説をベースに、スピルバーグ監督がトム・クルーズ主演の大作として製作。銀残し映像とともに、迫力の立体音響でも人気が高い作品だ。2003年にDVDビデオが、2010年にBDがリリースされている。UHDブルーレイは今年2025年12月に米国盤でリリースされる予定だ

 

多彩な音響を的確に描きAV再生の魅力が十分に味わえた

 トム・クルーズがスピルバーグと組んだSF大作『マイノリティ・リポート』(2002)の冒頭を再生。プリコグと呼ばれる予知能力者からの未来情報を得て犯罪者を事前に逮捕する世界を舞台にしたSFアクションかつ陰謀劇だが、オーラ+クロスゾーンでは、多彩かつ複雑な音響設計でも臨場感を盛り上げていく。基本的には刺激を抑えた穏やかな音調であるが、シーンシーンの細かい音響の変化を的確に描き出していく。透明スクリーンに映し出される映像情報をジェスチャーで素早く切り替えていく時の効果音の明瞭度の高いこと。

 また、セリフが頭の中にこびりつくことなく、ふわりと前方に定位し、その背後には音楽、効果音が重層的に拡がっていく様子は、CZ-8Aが得意とする描写といえるが、音離れの良さ、自然な響きの拡がりは、まさにLCC 1の高いドライブ力の恩恵。確かな駆動力を備えつつ、こまで質感の高いムービーサウンドを楽しませてくれるとは……。コントロールアンプ付属のヘッドホンアンプという枠には到底、収まりきれないクォリティ感だ。2chヘッドホンであるが、AV再生の魅力が十分に味わえた取材だった。

リファレンス機器
●8Kプロジェクター:ビクターDLA-V90R
●スクリーン:キクチ Dressty 4K /G2(120インチ/16:9)
●ユニバーサルプレーヤー:マグネターUDP900

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年冬号』

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