ソニー8Kブラビア「KJ-85Z9H」徹底チェックの後編をお届けする。前回は8Kの画質について山本浩司さんにご紹介いただいたが、今回は音質について。KJ-85Z9Hは85インチの8K映像にふさわしい音質を求めて、様々な工夫も施されているのだ。月刊HiVi誌上でも、昨今の薄型テレビの音質に苦言を呈してきた山本さんは、Z9Hの音をどうジャッジしたのだろうか。(編集部)。

※前編はこちら → https://stereosound.platisher.jp/_ct/17345615/

画像: 8K液晶ディスプレイ SONY KJ-85Z9H オープン価格(市場想定価格200万円前後、3月7日発売) ●画面解像度:水平7,680×垂直4,320画素(8K) ●パネル方式:液晶パネル(85型、トリルミナスディスプレイ、X-Wide Angle) ●バックライト:直下型LED部分駆動(バックライトマスタードライブ) ●HDR方式:HDR10、HLG、ドルビービジョン ●搭載スピーカー:2.2ch(トゥイーター×4、ミッドレンジ×8、サブウーファー×4) ●実量最大出力:80W(10W×8) ●無線LAN機能:IEE802.11ac/a/b/g/n ●接続端子:HDMI入力4系統、ビデオ入力1系統、光デジタル音声出力1系統、センタースピーカー入力1系統、ヘッドホン出力1系統、USB端子3系統、LAN端子1系統、他 ●寸法/質量:W1913×H1141×D120mm/73kg(本体)、W1913×H1226×D432mm/75.8kg(スタンド含む) ●消費電力:945W(待機時0.5W)

8K液晶ディスプレイ SONY KJ-85Z9H
オープン価格(市場想定価格200万円前後、3月7日発売)

●画面解像度:水平7,680×垂直4,320画素(8K)
●パネル方式:液晶パネル(85型、トリルミナスディスプレイ、X-Wide Angle)
●バックライト:直下型LED部分駆動(バックライトマスタードライブ)
●HDR方式:HDR10、HLG、ドルビービジョン
●搭載スピーカー:2.2ch(トゥイーター×4、ミッドレンジ×8、サブウーファー×4)
●実量最大出力:80W(10W×8)
●無線LAN機能:IEE802.11ac/a/b/g/n
●接続端子:HDMI入力4系統、ビデオ入力1系統、光デジタル音声出力1系統、センタースピーカー入力1系統、ヘッドホン出力1系統、USB端子3系統、LAN端子1系統、他
●寸法/質量:W1913×H1141×D120mm/73kg(本体)、W1913×H1226×D432mm/75.8kg(スタンド含む)
●消費電力:945W(待機時0.5W)

 8K超絶画質と並んで、KJ-85Z9Hで注目すべきは独自構成のスピーカーシステム「アコースティック マルチオーディオ」だろう。

 上下のフレームにL/Rそれぞれ2基合計4基の2ウェイ・システムをビルトイン、それらを同相駆動することで画面内にファントム音像を定位させるデュアルL/Rシステムが採用されているのである(加えて背面に6cmドライバー×2のサブウーファーユニットをL/Rチャンネルにそれぞれ1基ずつ配置。クロスオーバー周波数は150Hz)。

 現行のソニー製有機ELテレビは、アクチュエーターでパネル前面のガラス板を振動させて発音する「アコースティック サーフェス オーディオ(プラス)」技術を採用しているが、ソニーは液晶テレビにおいても有機ELテレビ同様<画音一致>にこだわっていることが、この「アコースティック マルチオーディオ」の採用でわかる。

画像: KJ-85Z9Hの音質面の特徴は、映像から音が聴こえてくるかのような再現を目指した「アコースティック マルチオーディオ」の搭載と、AVセンターを使ったサラウンドシステムとの組み合わせを可能にした「センタースピーカーモード」のふたつ

KJ-85Z9Hの音質面の特徴は、映像から音が聴こえてくるかのような再現を目指した「アコースティック マルチオーディオ」の搭載と、AVセンターを使ったサラウンドシステムとの組み合わせを可能にした「センタースピーカーモード」のふたつ

 オーディオビジュアル再生においてまず優先されるべきは、「画面に映っている人物がほんとうにしゃべっている、歌っているという実感が得られるかどうか」だと考える筆者は、ソニーのこの方針を断然支持したい。

 エリック・クラプトンのライヴや、映画『アリー/スター誕生』などのブルーレイ/UHDブルーレイを見せてもらったが、テレビ内蔵スピーカーとは思えない本格的なエネルギーバランスで、テレビ内蔵スピーカーでいつも気になる「音痩せ」と「ノイズっぽさ」がないのだ。クラプトン、ガガちゃんのヴォーカルにもしっかりと肉がつき、しかも画面に映し出される口から歌が発せられる強固なイメージが得られるのである。

 本機の音声モードには「ドルビーオーディオ」が用意されている。ドルビーアトモス収録作品の映画コンテンツ『ジュマンジ』等を観たが、音場が立体的に広がり、とてもテレビ内蔵スピーカーの音とは思えないサウンドだった。

独自構成のスピーカーシステム「アコースティック マルチオーディオ」

画像: Z9Hのベゼル部上下は写真のように段差がつけられている。この段差を利用してユニットを配置し、そこに独自のWave Guideを設けることで、音質を変化させることなくスピーカーからの音を前方に放射している

Z9Hのベゼル部上下は写真のように段差がつけられている。この段差を利用してユニットを配置し、そこに独自のWave Guideを設けることで、音質を変化させることなくスピーカーからの音を前方に放射している

画像: 右上が高域用の20mmソフトドーム型トゥイーターで、マグネットにはネオジウムが採用されている。左下は42mmのミッドレンジウーファーで、こちらは各チャンネルに2基ずつ搭載されている

右上が高域用の20mmソフトドーム型トゥイーターで、マグネットにはネオジウムが採用されている。左下は42mmのミッドレンジウーファーで、こちらは各チャンネルに2基ずつ搭載されている

画像: 85Z9Hでは、上側用と下側用に内容積の異なるスピーカーボックスを準備し、左右に各2つ、合計4つを搭載している

85Z9Hでは、上側用と下側用に内容積の異なるスピーカーボックスを準備し、左右に各2つ、合計4つを搭載している

画像: 上側のスピーカーボックスの取り付け位置や方法について、山本さんの質問に応える開発者の萩尾さん

上側のスピーカーボックスの取り付け位置や方法について、山本さんの質問に応える開発者の萩尾さん

 また、このテレビ内蔵スピーカーをサラウンドシステムのセンタースピーカーとして活用できるのも本機の興味深いところ。AVセンターのセンターチャンネル用スピーカー出力端子を本機背面のスピーカー入力端子につなぎ、AVセンターに内蔵されたテストトーンを用いて他チャンネルとレベル合わせを行なうことで、この「センタースピーカー」モードが活用できる。

 ソニーのラボには同社製AVセンター「STR-DN1080」(¥77,800、税別)と同社製スピーカー「SS-CS3」(¥32,000、ペア、税別、L/RとサラウンドL/R)、サブウーファー「SA-CS9」(¥21,000、1本、税別)が用意され、本機内蔵スピーカーをセンター用にした場合と、本機の真下に置いた同社製センタースピーカー「SS-CS8」(¥11,000、1本、税別)を鳴らした場合の比較視聴を行なった。

画像: KJ-85Z9Hはドルビーアトモスのデコード機能も搭載しており、それらを2.2chに変換して再生してくれる。ブルーレイなどのサラウンド音源を、元のニュアンスを残したまま楽しみたい場合は、音質モードで「ドルビーオーディオ」を選ぶといいだろう

KJ-85Z9Hはドルビーアトモスのデコード機能も搭載しており、それらを2.2chに変換して再生してくれる。ブルーレイなどのサラウンド音源を、元のニュアンスを残したまま楽しみたい場合は、音質モードで「ドルビーオーディオ」を選ぶといいだろう

 聴いてすぐわかるのは、本機内蔵スピーカーがSS-CS8に負けない「音質」を備えていること。しかも画面に映し出された人物の口から声が発せられる強固なイメージが得られるのだから、SS-CS8再生よりもはるかに好ましい。SS-CS8はKJ-85Z9H真下の床近くに置かれていたため、映像と音像位置の乖離が甚だしく、違和感が大きいのである。

 また、同一スピーカー4本をL/RとサラウンドL/Rに用いたシステムのチューニングが見事で、改めてSTR-DN1080の魅力を実感させられた。ソニー製AVセンターのニューモデルにしばらくお目にかかれていないが、もう製品開発は行なわないのだろうか。もしそうならほんとうに残念だ。

 王者ソニーが渾身の力を振り絞って開発した最高峰8K液晶テレビKJ-85Z9H。間違いなく今年前半のオーディオビジュアル界最大の目玉だろう。8K放送受信のハードルは高いが「8Kテレビを今買うなら絶対コレ!」の思いは高まるばかり。ぜひ店頭に足を運んで、本機の実力の一端を実感していただきたいと思う。

画像: KJ-85Z9Hのサウンド面を担当した、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(株) TV事業本部 商品設計部門 商品設計2部 萩尾淳二さん。そのこだわりの強さから、人呼んで ”テレビの音作り職人”

KJ-85Z9Hのサウンド面を担当した、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ(株) TV事業本部 商品設計部門 商品設計2部 萩尾淳二さん。そのこだわりの強さから、人呼んで ”テレビの音作り職人”

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