ネットワークオーディオプレーヤー分野で着実に人気を高めている、Pixel Magic Systems Limited社のLUMIN(ルーミン)。先頃登場したフラッグシッププレーヤーX1がどれほどのパフォーマンスに達しているのかを徹底テストする。テスターは、同社プレーヤーを愛用する土方さん。今回は光LAN接続という新提案の効能についてもじっくり確認してもらった。(編集部)
画像1: 圧倒的進化を遂げたルーミンの旗艦機X1。光LAN接続も大いに効果あり

LUMIN
X1
¥2,000,000(シルバー)+税

●接続端子:アナログ音声出力2系統(XLR、RCA)、デジタル音声出力2系統(BNC、USBタイプA)、LAN 2系統(RJ45、SFP) 他
●寸法/質量:本体・W350×H60×D345mm/8kg、電源・W106×H60×D334mm/4kg
●特徴:TIDAL、Qobuz対応、MQAデコード対応、最高PCM384kHz/24ビットおよびDSD11.2MHz/1ビットまでのアップサンプリング対応
●カラリング:シルバー(写真)、ブラック(¥2,200,000+税)あり ●問合せ先:㈱ブライトーン☎03(6869)0516

対応ファイル形式

画像2: 圧倒的進化を遂げたルーミンの旗艦機X1。光LAN接続も大いに効果あり

 

 

 2013年、優れたユーザビリティを備えたネットワークオーディオプレーヤー、A1で衝撃のデビューを飾ったブランド、ルーミン。同社の新たなフラッグシッププレーヤーがここで紹介するX1だ。実は、筆者は前フラッグシップモデルのS1を導入しているので、X1の試聴が楽しみでならなかったのだが、結論からお伝えすると、3年にもおよぶ開発期間を費やしたというX1は、驚くほどの進化を遂げていた。

 ボディはS1同様のアルミニウム削り出し。新たに採用されたコンピューター制御ケーシングによって切削精度が上がり細部の造形品質が向上したのは嬉しい。内部構成も一新された。左右チャンネルを構造的に分離したデュアルモノーラルデザインを採用したうえに、DACチップにES9038PROを左右ひとつずつ採用、さらにFPGA(プログラム可能なゲートアレイ)によるフェムトクロックを搭載する。

 評判の高かったS1の仕様も引き継がれており、ルンダール社製オーディオ用トランス、LL7401を採用。ルーミンのアイデンティティのひとつ、別筐体式の電源部も引き続き採用された。電源部はデジタル部とアナログ部が入念にアイソレートされ、低ノイズのリニアレギュレーターを採用する新設計だ。さらにケースも新たにアルミニウム削り出しとなった。

 再生可能なファイルフォーマットもS1から大きく進化した。DSDはなんと22.5MHz、PCMは768kHz/32ビット、MQAのフルデコーダーも内蔵する。もはや再生不可能なデジタル楽曲ファイルは存在しないだろう。

画像: アナログ音声出力はアンバランスとバランスを1系統ずつ搭載。DAC素子は、ESSテクノロジー製最高峰チップ、ES9038PROを2基用いる。デジタル音声出力端子も備えており、USBタイプA端子からは、PCMで最高768kHz/32ビット、DSDで最高22.5MHzまでの高度な信号出力が可能。つまり外部DACとの連携で、ネットワークトランスポートとしても使用できる点も特徴だ

アナログ音声出力はアンバランスとバランスを1系統ずつ搭載。DAC素子は、ESSテクノロジー製最高峰チップ、ES9038PROを2基用いる。デジタル音声出力端子も備えており、USBタイプA端子からは、PCMで最高768kHz/32ビット、DSDで最高22.5MHzまでの高度な信号出力が可能。つまり外部DACとの連携で、ネットワークトランスポートとしても使用できる点も特徴だ

 

 当然対応ソースはNASからのネットワーク再生、USBメモリー等のストレージ、Roon、さらにTIDALやQobuz、スポティファイ、AirPlayにインターネットラジオも聴取可能。進化の速いデジタル再生に全方位対応するスペックで、これだけでも驚くべき多機能ぶりである。

画像: ネットワークプレーヤーの再生ファイル対応はひじょうに幅広く、DSDは22.5MHzまで対応している。写真はDSD11.2MHz音源を再生しているところ。スムーズかつレスポンスも良好だ

ネットワークプレーヤーの再生ファイル対応はひじょうに幅広く、DSDは22.5MHzまで対応している。写真はDSD11.2MHz音源を再生しているところ。スムーズかつレスポンスも良好だ

 

 さらに驚かされたのが、ネットワークインターフェイスだ。通常の有線LANで使われるRJ45端子の他に、光ネットワーク(LAN)接続に対応したSFP(Small Form Factor Pluggable)ポートも装備、光ファイバーケーブルによるLAN通信をサポートした。光LAN伝送によるメリットは、LANケーブルを通じて機器間に流れるノイズ、あるいはLANケーブルがアンテナとなってプレーヤーに伝わるRFI(無線周波数妨害)やEMI(電磁波妨害)ノイズ等を物理的、電気的に遮断できることにある。

 ルーミンの優れた部分である、折り紙付きの操作性のよさは引き継がれている。音源を選び再生するまでのユーザーインターフェイスに長けた専用アプリ「LUMIN App」が使えることは、ルーミン製品のアドバンテージ。快適なネットワーク再生を担保してくれる。

画像: 多機能かつ操作性に優れた純正の「ルーミン」アプリを用意している。メニュー等の日本語表示や、わかりやすい操作メニューなどの特徴を備えた快適なコントロールアプリだ

多機能かつ操作性に優れた純正の「ルーミン」アプリを用意している。メニュー等の日本語表示や、わかりやすい操作メニューなどの特徴を備えた快適なコントロールアプリだ

 

圧倒的な進化を遂げた音。艷やかな声に聴き惚れた

 今回は、X1のパフォーマンスチェックを行ないつつ、小型のネットワークプレーヤーなどを発売するSOtM(ソム)ブランドのSFPポート搭載オーディオ用ハブ、sNH10Gとマスタークロックジェネレーター、sCLK-OCX10を使いながら、光ネットワーク接続の効果がいかほどであるのか試した。

 まずは、接続図①のように一般的なハブを用いるスタンダードな構成で試聴した。DSD11.2MHz音源『バッハ:無伴奏チェロ組曲/シュタルケル』を再生すると、チェロの実体感や現場の空気感の再現性がとても高く、音楽性も抜群。レニー・クラヴィッツの楽曲では、帯域の広さ、S/Nの高さ、ダイナミックレンジの大きさなどの本質的な音のよさに加え、躍動感のあるバスドラムと艶やかなヴォーカルに聴き惚れた。これらの表現力はいわゆるハイエンドオーディオの領域に達するほどの音だと思う。思わず「凄い音だ」と声に出したほどだった。S1ユーザーとしては「まさか、ここまで音質を上げてくるとは」と心の中で苦笑いしてしまった。

 

接続①

X-1の基本音質チェック

スタンダードと言えるネットワーク構成だが、X1の素性のよさをベースとする高音質で再生できた。シュタルケルのチェロの響きにはアコースティック楽器らしい生々しさとリアリティがあり、音が出てから消えるまでの空気感の表現が秀逸。レニー・クラヴィッツは情報量が多く、キックドラムの立ち上がりや重量感も良好だ(土方、以下同)

画像: まず、X1の基本音質を確認するため、視聴室リファレンスの機材を用いてさまざまなハイレゾファイルを再生、アンバランス接続とバランス接続の違いを含めてチェックした

まず、X1の基本音質を確認するため、視聴室リファレンスの機材を用いてさまざまなハイレゾファイルを再生、アンバランス接続とバランス接続の違いを含めてチェックした

画像: アンバランスとバランスの音声出力端子による違いを確認した。今回の環境ではバランス出力のほうが好印象だった

アンバランスとバランスの音声出力端子による違いを確認した。今回の環境ではバランス出力のほうが好印象だった

 

接続②

sNH-10G+X-1の基本音質チェック

ハブをsNH-10Gに変更すると、聴感上のSN比が上がり、空間の見通しがよくなった。レニー・クラヴィッツの音色は少々ブライトに感じたが、シュタルケルでは冒頭の静寂から雰囲気が変わり、チェロの音の彫りがより深くなる。本作のようなハイスペックな音源ではハブの音質向上効果を明快に感じ取ることができよう

画像: 次にハブをSOtM(ソム)のオーディオ用ハブ、sNH-10Gと交換。オーディオ用として開発されたハブを使った場合の効果を確認した

次にハブをSOtM(ソム)のオーディオ用ハブ、sNH-10Gと交換。オーディオ用として開発されたハブを使った場合の効果を確認した

画像: 接続②では、エイム製LANケーブルを使って、sNH-10Gとフィダータのミュージックサーバー(HFAS1-S10)およびX1を接続した

接続②では、エイム製LANケーブルを使って、sNH-10Gとフィダータのミュージックサーバー(HFAS1-S10)およびX1を接続した

 

HUB
SOtM
sNH-10G
¥200,000+税(リクロック+クロック入力機能付き仕様)

画像3: 圧倒的進化を遂げたルーミンの旗艦機X1。光LAN接続も大いに効果あり
画像: ルーミンの日本正規代理店が取り扱っているSOtM(ソム)のオーディオ用ハブ。一般的なLAN端子(=RJ45端子)を8系統、光端子(=SFP端子)を2系統搭載。リクロック機能およびクロック入力端子搭載などの違いで3つの仕様で市販されている

ルーミンの日本正規代理店が取り扱っているSOtM(ソム)のオーディオ用ハブ。一般的なLAN端子(=RJ45端子)を8系統、光端子(=SFP端子)を2系統搭載。リクロック機能およびクロック入力端子搭載などの違いで3つの仕様で市販されている

●接続端子:LAN 10系統(RJ45×8、SFP×2)、10MHzクロック入力1系統(BNC)
●寸法/質量:W296×H50×D211mm/2kg
●ラインナップ:通常仕様(¥160,000+税)、リクロック機能付き仕様(¥180,000+税)
●備考:電源は6.5V、9V、12Vの仕様あり。9V仕様のみACアダプター同梱
●問合せ先:㈱ブライトーン ☎ 03(6869)0516

 

 

リアリティと立体感が凄い!光LANの音質向上効果に驚く

 続いて、sNH10Gを用いた光ケーブルによる光LAN接続を試す。2本の光ファイバーを使用するデュアルLCコネクターを採用した光ケーブルを使用し、その両端にSFPモジュールを取り付け、ネットワークプレーヤーとハブそれぞれのSFPポートに接続している。今回は図③から図⑥まで、さまざまな方法での接続を試したが、その効果は想像以上で、どんどん音質を突き詰めていくことができた。

 それぞれの接続時のインプレッションは各コラムにて述べている通りだが、その中でも、もっとも優れた音質だったのが、接続図⑤だ。チェロのリアリティや音場空間の立体感は、あまり聴いたことのないレベルに達しており、光LAN接続やクロックの投入でここまで音質が向上するのかと驚いた。

 また光LAN接続は、接続③〜⑥まで、どの部分に用いても、程度の違いはあれ、音質が上がることが確認できた。光LAN接続によるノイズ遮断効果は予想以上に大きいことを実感したのだ。

 X1は、光LAN接続でなくとも、いわゆるスーパーハイエンドに準ずるような高音質を備えている。筆者は愛用のS1の音質や機能にある程度満足していたが、ここまで音質が上がるとなると、リプレイスを考えなくてはいけない。まさに「やってくれたぜ」と言いたくなるような最強のネットワークプレーヤーをルーミンは誕生させたのである。それに、光LAN接続による大きな音質向上効果を確認できたことも、今回のテストの大きな収穫であった。

 

接続③

sNH-10G+X-1の光LAN入力時の音質チェック

ベールが1枚剥がれたような鮮烈な音。まるで高性能なLANアイソレーター/ターミネーターを用いてネットワーク環境をチューニングした時に感じる音質向上効果がある。シュタルケルのチェロの実体感は大きく向上、レニー・クラヴィッツもエッジ感や刺激感はないのに、音像がひじょうにリアルになる

画像: X1とsNH-10Gは、業務用で使われる光LAN端子(SFP)を搭載、光LAN信号で伝送することでノイズなどの点で音質上、有利になるという。ここではその効能をチェックすべく、両機を光LANケーブルで直結した

X1とsNH-10Gは、業務用で使われる光LAN端子(SFP)を搭載、光LAN信号で伝送することでノイズなどの点で音質上、有利になるという。ここではその効能をチェックすべく、両機を光LANケーブルで直結した

画像: X1は一般的なRJ45端子によるLAN端子のほか、SFPと呼ばれる光LAN端子を装備。これを活用した格好だ

X1は一般的なRJ45端子によるLAN端子のほか、SFPと呼ばれる光LAN端子を装備。これを活用した格好だ

画像: 今回使用した光ケーブル。2本の光ケーブルを使ったもので、SFP端子接続用モジュールを両端に装着して機器とつなぐ。信頼性を重視する業務用で使われているアイテムだ。ノイズ耐性が強く、オーディオ用あるいはAV用としてにわかに注目を集めている

今回使用した光ケーブル。2本の光ケーブルを使ったもので、SFP端子接続用モジュールを両端に装着して機器とつなぐ。信頼性を重視する業務用で使われているアイテムだ。ノイズ耐性が強く、オーディオ用あるいはAV用としてにわかに注目を集めている

画像: 接続③では、sNH-10Gと一般的なRJ45によるLAN端子でフィダータとつなぎ、さらに光LAN端子でX-1と接続している

接続③では、sNH-10Gと一般的なRJ45によるLAN端子でフィダータとつなぎ、さらに光LAN端子でX-1と接続している

 

接続④

NASとX1の直結時の音質チェック

ふたつのLAN入力端子を持つX1の特徴を活かした接続方式。音のシャープさやスピード感は接続3に若干劣るものの、レニー・クラヴィッツのキックドラムには力感がある。チェロやヴォーカルなど中域が少しふくよかな表現になり、バランスのよい音だ。音色/音調や好みに合わせてこの構成を選んでもよさそう

画像: X1はRJ45のLAN端子と、SFPの光LAN端子の2系統を搭載しており、その両方を同時に使うことも可能。そこで、前者をフィダータS10と、後者をSOtMのsNH-10Gとそれぞれ直結してみた

X1はRJ45のLAN端子と、SFPの光LAN端子の2系統を搭載しており、その両方を同時に使うことも可能。そこで、前者をフィダータS10と、後者をSOtMのsNH-10Gとそれぞれ直結してみた

 

接続⑤

sNH-10Gにクロック追加時の音質チェック

今回の試聴で一番音がよかったのが、接続3にSOtMのクロックを追加した接続5だ。シュタルケルでは空間の奥行が明らかに深くなり、そこにリアリティが増したチェロの音像がしっかりと定位する。クロック追加の効果は歴然とあった。しかしクロックの動作がハブの表示で判別できないのは、改善を求めたいところ

画像: SOtMのsNH-10Gは、「マスタークロック入力が可能」というマニアックな仕様もラインナップする、オーディオ的なこだわりに満ちたハブだ

SOtMのsNH-10Gは、「マスタークロック入力が可能」というマニアックな仕様もラインナップする、オーディオ的なこだわりに満ちたハブだ

画像: 今回は、SOtMのsCLK-OCX10という10MHzによる純粋なアナログ正弦波を生成するクロックを使った。BNC端子から4系統のマスタークロック出力が可能な製品で、価格は50万円+税(電源別)

今回は、SOtMのsCLK-OCX10という10MHzによる純粋なアナログ正弦波を生成するクロックを使った。BNC端子から4系統のマスタークロック出力が可能な製品で、価格は50万円+税(電源別)

 

接続⑥

メディアコンバーターを介してNASを光LAN接続

RJ45を使った一般的なLANケーブルを、光LANに変換するメディアコンバーターを使用。わざわざ変換を行なう、この方式の音質向上効果には懐疑的だったが、レニー・クラヴィッツのキックドラムのリアリティが増すなど、音質は間違いなく向上した。一定グレードの製品を使うことが前提だろうが、光LAN接続におけるノイズ遮断効果は明確に存在する

画像: ここまでの取材で光LAN接続の音質改善効果が明確だったので、ハブとサーバー間を光LAN接続にして高品位化が図れるのかをチェックした。ミュージックサーバーで光LAN端子を備えている製品は存在しないので、メディアコンバーターという電気/光変換器を用いて、フィダータS10とsNH-10Gを光LAN接続した

ここまでの取材で光LAN接続の音質改善効果が明確だったので、ハブとサーバー間を光LAN接続にして高品位化が図れるのかをチェックした。ミュージックサーバーで光LAN端子を備えている製品は存在しないので、メディアコンバーターという電気/光変換器を用いて、フィダータS10とsNH-10Gを光LAN接続した

画像: RJ45端子をSFP(光LAN)端子に変換する目的で、業務用ネットワーク系ブランドのTP LinkのMC220Lという機器を使った

RJ45端子をSFP(光LAN)端子に変換する目的で、業務用ネットワーク系ブランドのTP LinkのMC220Lという機器を使った

 

リファレンス機器
●ミュージックサーバー:フィダータHFAS1-S10
●ハブ:バッファローBS-GS2016/A
●プリメインアンプ:デノンPMA-SX
●スピーカーシステム:モニターオーディオPL300II

試聴ソフト
『Raise Vibration / Lenny Kravitz』(44.1kHz/24ビット/FLAC)、『LOVE IS HERE TO STAY / Tony Bennett & Diana Krall』、『ブライニクル/柴田淳』(以上、96kHz/24ビット/FLAC)、『String Quartets vol IV / Engegard Quartet』(352.8kHz/24ビット/MQA)、『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲/ヤーノシュ・シュタルケル』(11.2MHz/1ビット/DSF)、『The Greatest Showman: Reimagined』(Qubozストリーミング、44.1kHz/16ビット/FLAC)、ほか

 

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