『IT/イット』の製作陣&彗星のごとく現れた新鋭監督がタッグを組んだ!
米国では1988年の11月に、日本では翌年5月に公開された『チャイルド・プレイ』。やっと買ってもらえたおしゃべり人形が、ナイフをふりかざし襲いかかってくる! 10歳くらいでTVの洋画劇場でコレに出会い、トラウマになったひとも少なくないのではなかろうか。
そんなヒット作が同じタイトルでリブートされた。ホラー映画のいいところは作り手もお客もこのジャンルが大好きだー! ということだけれど、この新作も同様だ。
プロデューサーのデヴィッド・カッツェンバーグ(1983年生まれ)とセス・グレアム・スミス(1976年生まれ)は、製作会社カッツスミス社を率い、『IT/イット“それ”が見えたら、終わり』を大ヒットさせたコンビ。監督のラース・クレヴバーグ(1980年生まれ)はノルウェー出身の新鋭で、日本では奇しくも今回の『チャイルド・プレイ』と同日公開となった『ポラロイド』(2017年)で長篇映画デビューを遂げている。
1972年に発売された名機ポラロイドSX-70。女子高校生のサラが譲り受けたその中古カメラに映った人物が、次々と凄惨な死を遂げる。そのうちの一枚には自分も映っていた。ポラロイドカメラを構える姿が背後のガラス窓に反射して。そして……という一席。
呪いのカメラというありふれたアイディアだけれど、光と影の演出などこれが悪くない。この監督、ヒッチコックの『サイコ』やJホラーが好きだろうな。
2015年製作の自身の短篇『ポラロイド』(16分)を長篇化したもので、こちらはネットにアップされている。母の遺品箱から出てきたカメラ、と話の展開はちがうが、演出作法は似ている。ホラー・ファンは覗いておいて損はないだろう。
子どもの頃チャッキーに出会い、恐ろしすぎて恋をした!
『チャイルド・プレイ』に戻ると、10歳か11歳のときにVHSテープで観たというクレヴバーグ監督を筆頭に、プロデューサーのスミスは12歳で、劇中黒人刑事を演じるブライアン・タイリー・ヘンリー(今後『ジョーカー』『ゴジラVSキングコング』『クワイエット・プレイス2』とおたく系注目作がつづくので知名度がアップするはず)は6歳のときに姉たちから無理矢理ビデオを見せられて、とみな'88年版との出会いをハッキリと覚えている。
本当に怖かったと語るが、彼らは同時に殺人人形チャッキーが大好きになってしまったのだ!
過去にシリーズは『チャイルド・プレイ』(1988年)から『チャイルド・プレイ~チャッキーの狂気病棟~』(2017年)まで計7作が作られてきたが、これまで脚本または監督として全作に関わってきたドン・マンシーニは企画から離れ、まったく新しいリブートになっている。
赤毛、虹色の横縞カットソーに青のサロペットという出で立ちは同じだけれど、今回のチャッキーは凶悪殺人犯の魂が乗り移った人形ではない。(ちょっと『ロボコップ』風に)冒頭CFが流れるハイテク企業カスラン社が発売するAI人形にバージョンアップされているのだ。
このへんはリブートに挑んだ新スタッフと、脚本のタイラー・バートン・スミス(XboxOneの時間SFアクション「クォンタム・ブレイク」のストーリーラインを手がけたゲーム業界出身の新人)が工夫をしたところだろう。
スマホとワイヤレス接続してコントロールし、チャッキーからの視界を楽しむこともできる。最初はまっさらな状態だけれど、会話をつづけ、情報を得ることでスクスクと成長する。
青い瞳のバディ人形、チャッキーはいろ~んなものを見ているのだ。持ち主の少年アンディ(ガブリエル・ベイトマン。『ライト/オフ』でテリーサ・パーマーの弟をやっていた子)を怒鳴りつける母の恋人や、いじめっ子たちを。包丁とまな板の使い方を。TVでかかっている『悪魔のいけにえ2』を。
とくにレザーフェイスはいけません。目の色の変わったチャッキーがニヤリとしてしまうから。
ボイスキャスト、マーク・ハミルの“ダークサイド”を堪能!
旧シリーズでは、人形に乗り移る殺人犯を演じたブラッド・ドゥーリフが以後すべての作品でチャッキーの声を当てる人気者になったけれど、今回は喧伝されているようにマーク・ハミルがAIチャッキーを演じている。
これがもうノリノリ! マーク・ハミルのダークサイド出た(笑)。話をもらった彼は旧作7本すべてに目を通しアフレコに挑んだという。歌まで唄っちゃうんだもんなあ。
近年のマークはアニメでの声優業を積極的にこなしている。どうしてもルーク・スカイウォーカーとの距離に縛られる実写映画より、声優のほうが本人は気楽だし楽しいのかもしれない。
非リア充に寄り添う続篇に期待!
オープニングはベトナムのオモチャ工場での出来事で始まる。そこで黒い雲と稲光が光るのは、似た場面がトレードマークになっていた旧シリーズへのリスペクト。このCGI時代に、パペット(仕掛け人形)でチャッキーを動かすSFX仕様もエライ。血も盛大に吹き出るし、殺し方はそうとうタチが悪いし。
続篇はあるのかな。チャッキーがクラウド経由でドローンを操るイマ風の攻撃に新味はあるけれど、これをやりすぎるとたぶんつまらなくなる。恐怖映画には、襲うほうも襲われるほうも孤独という定石があるからだ。
ノット・リア充。はみだし者カモーン。これがホラー映画の魅力だった。殺すならひとりで殺しまくれ、チャッキー! 燃やされてもバラバラにされても、しぶとく復活しろ、チャッキー! “ボクとキミは永遠に友だちだよね”。今夜も殺人人形チャッキーが行く!
《オマケ》
旧シリーズ7本のなかでは1本目の『チャイルド・プレイ』と、4作目の『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』(1998年)がオススメ。
特に香港から『白髪魔女伝』のロニー・ユーを招いた『~花嫁』は爆裂ホラーの大傑作で、人間時代の恋人だった女の魂が乗り移ったティファニー人形とチャッキーは、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のミッキーとマロニーのように大暴走し、モーテルでセックスをして赤ん坊まで作ってしまう。オープニング曲は『マーダー・ライド・ショー』のロブ・ゾンビ。これが映画界参入の第一歩となった
6作目の『チャイルド・プレイ/誕生の秘密』(2013年)と『チャイルド・プレイ~チャッキーの狂気病棟~』(2017年)には、第1作でアンディ少年を演じたアレックス・ヴィンセントがおっさんになった同役で再登場。シリアス調で勝負したが興行はふるわず、旧シリーズの終止符となった。
『チャイルド・プレイ』
監督:ラース・クレヴバーグ
出演:オーブリー・プラザ/ガブリエル・ベイトマン/ブライアン・タイリー・ヘンリー/マーク・ハミル(声の出演)
原題:CHILD’S PLAY
2019年/アメリカ/英語/90分
配給:東和ピクチャーズ
7月19日(金) 全国ロードショー
(c) 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved.
CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.
『ポラロイド』
監督:ラース・クレヴバーグ
出演:キャサリン・プレスコット/グレイス・ザブリスキー/タイラー・ヤング/サマンサ・ローガン
原題:Polaroid
2017年/アメリカ/英語/88分
配給:ギャガ・プラス
7月19日(金) 全国順次ロードショー
(c) 2019 DPC SUB 1A1, LLC