パナソニックが新型有機ELテレビ「GZ2000」シリーズにDolby Visionを採用したことで、HDRの元祖、Dolby Visionに対して再度、注目が集まっている。
ドルビー研究所は例年、CES季節に別会場でプレス向けのイベントを開催しているのだが、今年は見送られた。そこでドルビー研究所に直撃し、ドルビービジョンの最新動向を聞き出した。
まず話題のパナソニックだが、昨2018年のCESでは、Dolby Vision入りのUHDブルーレイプレーヤーを発表しておきながら、テレビにはDolby Visionを入れず、自らが開発に携わったHDR10+のみを採用していた。
今回のGZ2000シリーズでは、遂にDolby Visionを採用、引き続きのHDR10+、HLGにDolby Visionが加わり、地球上でもっとも多採用のハイ・ダイナミックレンジ・テレビとなった。
パナソニックはDolby Visionをテレビには採用しないだろうと見られていた。Dolby Visionでは、メーカーとしての絵づくりの自由度が制限されることが内部で指摘されていた。また当時は。デバイス的に当時のSoC(集積プロセッサー)が対応していなかった。
それが今回、Dolby Vision採用に踏み切ったのには、理由がある。ひとつが別記事の筒井・テレビ事業部長の発言だ。以下に引用する。
筒井 絵づくりを進めていく中で、「HDR10+」の他にも差別化要因が欲しいと考えていました。去年は「ドルビービジョン」がないといった点をマーケティング的に指摘されましたので、今回はDolby AtmosにあわせてDolby Visionも採用した次第です。
全文はこちら → https://online.stereosound.co.jp/_ct/17242212
MGMグランド・ホテルで開催されたヨーロッパ記者向けのGZ2000発表会では、企画責任者が「われわれは確かにHDR10+を推進していますが、ユーザーさんの手元にはすでにDolby Visionディスクがアーカイブされています。それに対応するのがテレビメーカーの責務です」と言った。
パナソニックを得て、Dolby Visionの勢いが増してきた。最新の採用動向は……
①ソニー、LGエレクトロニクス、パナソニック……など世界の13テレビメーカーに採用。
②UHD BDプレーヤー、セット・トップ・ボックスなどテレビ周辺デバイスは、世界の15メーカーが採用。
③iTunesなどのストリーミングサービスは15以上。
④スタジオなどコンテンツクリエーターは15社以上。
⑤ポストプロダクションハウスは100社以上。
と、嚇々たる成果を上げ、最近、召し捕った大手がパナソニックというわけだ。次にHDR10+の盟友のサムスンエレクトロニクスの動向が気になるところである。
別記事でも述べたが、アメリカの2018年度DEG大賞、Emiel N. Petrone Innovation in Entertainment Technology AwardがDolby Visionに贈られたことでも、ハリウッドコミュニティでDolby Visionがいかに高く評価されているかを知れる。