去る7月上旬に東京ビッグサイトで「DESIGN TOKYO」が開催された。“売れるデザイン”をテーマに輸入インテリア等が展示される催しだが、今回はその中のJOLED/アトモフブースに注目した。ここに印刷方式有機ELパネルを使った“デジタル窓”なる製品が出展されるというのだ。これに麻倉さんのレーダーが反応、さっそく同社ブースにお邪魔した。対応いただいたのは、アトモフ株式会社 共同創業者の中野恭兵さんと、株式会社JOLED常務執行役員CTOの竹澤浩義さんだ。(編集部)
画像: 今回参考出品された印刷方式有機ELパネルを搭載した「デジタル窓」。画面サイズは21.6インチで解像度は4K。発売時期や価格は未定とのこと

今回参考出品された印刷方式有機ELパネルを搭載した「デジタル窓」。画面サイズは21.6インチで解像度は4K。発売時期や価格は未定とのこと

麻倉 今日は「DESIGN TOKYO」にお邪魔して、アトモフさんが開発した、有機ELパネルを使った新しいアプリケーションについてお話しをうかがいます。

中野 おいでいただきありがとうございます。弊社はAtmoph Windowと名付けたデジタル窓の開発を手がけています。

麻倉 まずはそのデジタル窓について教えてください。

中野 デジタル窓は、窓のない部屋にも解放感を得られるデバイスがないかということで考えました。フックで壁に掛けて使える、アートのように楽しめるディスプレイです。ここに弊社オリジナルの4Kコンテンツを上映すると、あたかもその場所にいて窓から外を眺めているような気分になれます。

麻倉 なるほど。しかもちゃんと動画で再生されるんですね。私は15年程前に、未来のテレビという原稿を書いたんですが、世界中の景色映像をインターネット経由で窓のように楽しむという提案でした。

中野 そうだったんですね。デジタル窓も、まさに同じ発想から生まれています。

麻倉 製品自体はいつ頃発売されたのでしょう?

中野 開発が4年前にスタートし、製品は2年前から発売しています。世界にはテレビを壁に埋め込んで、サイネージ的なディスプレイを作っているメーカーはありますが、コンテンツとハード、操作用スマホアプリのすべてを準備しているのは、弊社だけです。

麻倉 システム構成としては表示機器があって、ネット経由でコンテンツを送って再生するというもので、考えとしてはそれほど難しいわけではありません。でも実際に競合製品が出てこなかったのは、なぜだったんでしょうか?

中野 専用デバイスを作らなくてはならないのと、コンテンツを配信するネットワークシステム、さらにそれを操作するアプリと、総合的に考えなくてはならないからでしょう。デバイスとネットワーク、アプリのすべてが揃っている会社はなかなかありません。

麻倉 総合力の問題ですね。

中野 弊社はゲーム会社やインターネットサービス会社の出身者も多く、そういった点については多くの経験がありました。

画像: 製品のサイズは380×高さ640×厚さ55mmほど(すべて額縁含む)。映像伝送は無線で行なうので、ケーブルは電源用のみ

製品のサイズは380×高さ640×厚さ55mmほど(すべて額縁含む)。映像伝送は無線で行なうので、ケーブルは電源用のみ

麻倉 具体的な製品の仕様について教えてください。

中野 現在は27インチ液晶パネルを使った製品を発売しています。

麻倉 液晶パネルでは、どうしても黒が浮きますよね。となると窓から外を見ているような生々しさは感じにくい。リアルな映像を楽しみたいとなると、やはり有機ELパネルの方がいい。

中野 おっしゃる通りです。

麻倉 今回はJOLEDさんの印刷方式有機ELパネルを使った試作機も展示されていますが、まさにこのパネルを待っていました、というところですか(笑)。

中野 そうなんです。まずは実機の映像をご覧下さい。

麻倉 ぎらぎら感が少なく、表面もノングレア処理ですから、とても目に優しい印象ですね。

中野 今の時代、みんながテレビやスマホを、しかも四六時中近い距離で凝視しているのはどうなんだろうと思っていました。そうではなく、必要な時に、ちらっと観るだけでいいディスプレイがあってもいいんじゃないかと。

麻倉 表示機器としての存在感が強烈にあるというよりも、佇まいとして自然にそこに存在して、観ていても気持ちいい表示器ということですね。それには有機ELパネルはぴったりです。

中野 デモ映像で京都の風景を写していますが、行った事のある人が、ここ知っていると感じてくれる、そんな映像を目指しています。

麻倉 色のグラデーションがとてもいいです。

中野 黒がしっかり出ていますので、色のコントラストもしっかり再現出来ます。この映像は4Kカメラで撮影したものを、このデバイス用に100Mbpsほどで書き出しています。

麻倉 かなり贅沢ですね。

中野 今回は有機ELパネルのよさを出すために、限界近くまで頑張りました。

画像: DESIGN TOKYOのJOLED/アトモフブースにて。アトモフ株式会社の中野恭兵さんに詳しいお話をたっぷりうかがった

DESIGN TOKYOのJOLED/アトモフブースにて。アトモフ株式会社の中野恭兵さんに詳しいお話をたっぷりうかがった

麻倉 この動画はどのようにして制作されているのでしょう?

中野 世界中に居る提携カメラマンに、撮影をお願いしています。ただし、撮影中にゴミが入ったり、通行人がカメラを観たりといったことはありますから、そういった部分については編集をしています。窓から観た映像として違和感がないように、実は凄く時間をかけているんです。

麻倉 カメラマンは何人くらいいるんですか?

中野 世界中で10名程度います。僕たちからは大体のロケーションを指示するくらいで、実際にどこを取るかはカメラマンの直感に任せています。

麻倉 撮影の取り決めなどはありますか?

中野 デジタル窓で表示するものですから、基本的には立ち上がったときの人の目線の高さを基準にしています。また飾ったときの絵画的な美しさ、縦型に写した時の構図を意識してもらっています。

麻倉 コンテンツ数はどれくらいのペースで増えているんでしょうか?

中野 毎週火曜日に新作を追加していますが、1回で6本くらい増えています。素材は2,000以上ありますので、順次作業を進めている状態です。

麻倉 コンテンツはスマホで購入するんですか?

中野 現在は個別ダウンロードで、1本¥590〜ですが、将来的には定額制などのプランも考えていきたいですね。

麻倉 ダウンロードしたコンテンツはどこに保存するのでしょう?

中野 無線LAN経由で、内蔵ストレージに保存されます。内蔵ストレージはユーザーさんには取り外せないので、入りきれない場合は過去のコンテンツを消して、必要に応じて再度ダウンロードします。これはディスプレイ側で自動的に処理しています。

麻倉 ストレージの容量はどれくらいですか?

中野 現在は32Gバイトと128Gバイトの2機種を準備しています。

※後編に続く

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