文=鈴木 裕/Photo:Akio Shimazu
10V型へと大画面化を遂げたストラーダFシリーズ
このモデルの音の良さについては後で詳しく述べるとしては、まずはその大きな特徴である大画面のDYNABIGスイングディスプレイについて紹介してみよう。
ちょっと見るとクルマごとの2DINの場所が違うために装着できる車種が限られそうだが、本体に対してそのディスプレイ自体の位置の上下スライドや前後チルト、奥行調整(取付時のみ)の他、左右にそれぞれ15度の角度でスイングできる機能を搭載。エアコンの吹き出し口やシフトレバーを避けつつ、操作のしやすい、見やすい位置にセットアップできる。車種専用パネルといったものを使わず、400車種以上のクルマに取り付けられるのも合理的だ。
また、ディスプレイ自体もかなり見やすくなっている。これは従来のモデルではパネルと液晶の面の間に空気層があり、太陽の光などが斜めから差し込んだ時に、それぞれが微妙に乱反射して白っぽく見えたのに対し、まずパネル表面には反射を抑制するAGAR低反射フィルムを、空気層だった部分には透明なボンディング材が入っており、明るさや見やすさを向上させている。実際に車載状態で確認したが、外光の反射や映り込みが驚くほど気にならない。
実際にそのディスプレイの位置などを動かしてみるとしっかりとした造りであることが伝わってくるし、動かすのに必要な力の入れ具合いがうまく調整されている。調節機能もそうだし、CDやブルーレイのディスクを出し入れする時に、ディスプレイを手前に引きながら倒して、本体のディスクメカにアクセスするが、その時のディスプレイの手応えがちょうどいいように感じる。
その手応えを生み出している要素のひとつとして、外装フレームには凹みや変形に強く軽量なマグネシウム合金を採用。狭額縁の構造でも必要な強度を確保するための選択だ。マットブラックのカラーだが電着塗装した上にヘアライン処理が施されており、高級感のある質感を表現している。
“スタジオマスターサウンド”を実現させる「音の匠」と
こだわり抜いたデバイスの採用
ストラーダのサウンドが目指しているのは”スタジオマスターサウンド”。いかにスタジオで作られている原音のままに、クルマの中で音楽を再生できるか。そのひとつのプロセスとして、音のプロ集団であるミキサーズ・ラボによるチューニング、”音の匠”の各モードがある。
しかし、CN-F1X10BDでは基礎体力とも言える部分での向上も大きい。
パワーアンプ部のデバイスは、ストラーダ専用のカスタム品を新たに開発。MOS-FETのトランジスターでAB級の回路を構成している。このトランジスターの出来がいい。内部のレイアウトやその配線にまでこだわり、電源とグラウンドラインの流れなどを改善。インピーダンスを下げている。数値で表現すると、歪み率は従来機の2倍へ向上、チャンネルセパレーションは2.5倍の向上を果たしているという。
またデジタル信号をアナログ信号に変換するパートの大きな特徴としてはバーブラウンのDACデバイスを採用。これはマルチビット型の力強さとワンビット型の繊細さ、この両方の良さを持ったアドバンスド・セグメント方式の32bit対応のもの。これによって、SDカードやUSBメモリなどに保存したFLACやWAVのハイレゾ音源、192kHz/24bitまでをダウンコンバートすることなしに楽しむことができる。それだけでなくCDの44.1kHz/16bitのデータや、48kHz、96kHzといったデジタルデータをDSPのサンプリングレート・コンバーターによって192kHz/24bitにアップコンバート。そこからアナログ信号に変換する方式を取っている。
この他、コンデンサや抵抗、電子ボリュウム、DSP、クロックなど高いクォリティのパーツを投入して音の良さにこだわったAVナビだ。
ハイファイ性能に優れた「TAKUMIマスターサウンド」モード
引き締まった音像で各楽器の演奏を描き出す
イーグルスの1994年のアンプラグドのライヴ『ヘル・フリーゼズ・オーヴァー』、クリヤ・マコトのピアノ、納浩一のウッドベース、則竹裕之のドラムスという編成によるジャズの『アコースティック・ウェザー・リポート2』、そしてルイージ指揮フィルハーモニア・チューリッヒスイスよる『ワーグナー: 前奏曲と間奏曲集』。これらをいろいろと設定を買えながら聴いていった。それらの各モードにおける音の印象を総合的にまとめてみよう。
まずもっともハイファイ性能が高かったのが”音の匠”の「TAKUMIマスターサウンド」だ。「高音質モード」の設定でまず聴いてみた。
2ウェイなどのきちんとしたスピーカーシステムを想定しているようだが、音像がきれいに引き締まり、各楽器の演奏が見事に再現される。まさにブルーレイの映像のように、高精細でヴィヴィッドな音だ。録音現場にあった楽器ごとの役割が緻密に、繊細に再現される。音像を描く線は細めで、全体にキメの細かい、しなやかなトーン。たとえばイーグルスのライヴでは、会場の空気感が出てきて、オーディエンスの熱気までも伝わってくる。アコースティック・ギターの繊細な響きやタイコの低音の立ち上がりなども素晴らしい。ジャズでは納浩一のは実際はウッドベースなのにその弾き方によってウッドにもエレクトリック・ベースのような音色にも聞こえるコントロールや、3人のアンサンブルの音楽の推進力を見事に楽しませてくれる。オーケストラでは音数の多さとサウンドステージの遠近感がきちんと出てきて、スケール感も秀逸。締まっていていながらきちんと駆動されている低音が気持ちいい。
「KIWAMI 高域強調」はフルレンジやコアキシャルのスピーカーを想定している。言葉としては、「高域」の「強調」だが、単にその帯域の音圧を上げたという感じではなく、高域の音が立っている感覚が強くなる。低域は若干タイトに感じる。音楽によってはキビキビした感じとか、炸裂感の要素を演出してくれる感じもあって、好みで使える。
「NAGOMI会話重視」は、いい意味で音楽をBGMとして聴かせてくれる。車室内の会話の周波数と再生音が被らないように、チューニング。たしかにそういうシチュエーションは少なくない。
望外な聴き応えが得られた「騒音適応モード」
興味深いのは「騒音適応モード」だ。“車内の走行騒音に連動して最適なイコライジングを行い、オーディオの音量や音質を自動的に補正”しているという。これは「TAKUMIマスターサウンド」でも設定できるのだが、サンプリング周波数を48kHzにして、緻密さやこまやかな階調表現という方向性を、より骨格感のある、太い感じの音にしてくれる。試聴室でのテストなので走行音などはない中で聴いているが、「TAKUMIマスターサウンド」+「高音質モード」の時の、しなやかできめ細かい高精細な音とは対照的に、「TAKUMIマスターサウンド」+「騒音適応モード」ではナチュラルな音の質感があり、やや太めの線で描いたようなイラストに感じられる。音の色彩感もきれいに出ている。これはこれで聴きたい音のひとつだ。
いずれにもしても、パワーアンプ部の駆動力が上がり、より積極的に音楽を聴かせる能力が上がっていることを前提に、クルマの中で音楽をどう聴かせるか。そのさまざまな状況に合わせて懐の深い音楽再生能力を持たせられているように感じた。
Interview
Strada CN-F1X10BD開発エンジニアに聞いた
<パナソニック(株)オートモーティブ社 インフォテインメントシステムズ事業部 市販・用品ビジネスユニット 音響設計担当 田食寛之氏/同 市販事業推進部 川原正明氏>
――さまざまな進化を感じるストラーダですが、苦労された点は?
田食:現行のディスプレイ部のまま10インチを実現するためには狭額縁にする必要がありました。ディスプレイを構成している様々な部品サプライヤーと執拗な打ち合わせをして狭額縁10インチを実現しました。
川原:マグネシウム合金という素材も大きいですね。ディスプレイ本体のサイズは同じですが、デザイン的に薄く見せるように進化させています。
田食:通常モジュールで調達する液晶を各パーツごと全てカスタマイズして調達して、他の部品と一体化するなど、独自の技術で狭額縁のディスプレイを開発しました。
――音についてはいかがですか。
田食:2017年から検討していたカスタムパワーアンプを新たに搭載していますが、新しいMOSFETのパワートランジスタの存在が大きいですね。製造してもらっているメーカーに乗り込みまして、ここでも密接なやりとりをした結果、納得のいくものが出来ました。歪み率やチャンネルセパレーションの特性が2倍とか2.5倍という数値で向上しています。ただし、数値をよくしようとして開発したのではなく、音のいいものを追求していった結果、特性の数字も良くなったということでご理解いただけると幸いです。いろいろと試行錯誤する中でやっと完成させることが出来ました。
――スピーカーに対する駆動力も明確に上がっていましたね。
田食:特に低域の駆動力ですね。音の拡がりや力強さなども上がっています。「音の匠」モードの設定等を詰めていく時にも作業を進めやすかったと思います。
――アップサンプリングしてからのD/A変換もうまくまとまっています。
田食:アップサンプリングすることによっで補完するデータの量も増えますので、効果的でいい結果を生んでいると考えています。
――ディスプレイの画面が明るくなりましたが、音的には関係あるんですか。
田食:10インチHDパネルを採用し、より映像を見やすくするためにバックライトの電流量を増やしてます。そのままではノイズの要因になります。基板の設計を適正化することによってノイズを受けにくくしています。
――基板の設計の具体的なポイントはありますか。
田食:電気的なグラウンドをバックライト用とオーディオ用で切り離しています。そういった細かい部分もずいぶん詰めました。
川原:マグネシウム合金の採用に際しては部品サプライヤと先行検討を重ね、プレス加工による成形と電着塗装により、従来の鋳造品では難しかったマグネシウム素材本来の金属感を実現したとと技術担当から聞いています。
安全・安心支援を装備し現代AVナビに求められるモデルへ
一時停止や制限速度を知らせる「安全・安心運転サポート」機能や、前後に2カメラを設置できるドライブレコーダー連携機能を持たせた点。あるいは、高速道路や有料道路での逆走検知、警告を強化するなど、昨今のさまざまな問題にも対応。
その音声メディアの高音質については検証したが、それと共にブルーレイや地デジを10V型大画面のディスプレイの高精細なHD画質で楽しめるなど、AVナビとして総合的な魅力を高めている印象のCN-F1X10BDだ。すこぶる出来はいい。
パナソニックCN-F1X10BDの主な仕様
●画面パネル:10V型HD/LED液晶静電タッチパネル
●再生ソース:BD、BD-R/RE、DVD-Video、DVD ± R/RW、CD、CD-R/RW(MP3/WMA/AAC)、SDメモリーカード(MP3/WMA/AAC/FLAC/WAV)、地上デジタル TV、AM/FM ラジオ、iPod/iPhone(接続ケーブル別売)、USBメモリー(MP3/WMA/AAC/FLAC/WAV)、Bluetoothオーディオ
●ハイレゾファイル:最大PCM192kHz/24bit対応
●サンプリングレートコンバーター:192kHzにアップコンバート
●サウンドチューン機能:音の匠(TAKUMIマスターサウンド/KIWAMI高域強調/NAGOMI会話重視)
●DSP機能:タイムアライメント、サブウーファー設定、グラフィック EQ
●内蔵アンプ:定格出力18W×4(最大出力50W×4)
●D/Aコンバーター:アドバンスドセグメント方式32bitDAC
●HDMI入出力端子1系統装備
●Android Auto対応
●外形寸法:W178×H100×D170mm(ナビゲーションユニット)、W240×H141×D19mm(ディスプレイユニット)
●重量:約2.6kg(ナビゲーションユニット)、約1kg(ディスプレイユニット)
●備考:TVアンテナ(フィルムアンテナ4枚)、GPSアンテナ、ハンズフリー通話用マイク付属
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