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突然、愛娘が消えた――巨大化された誘拐ビジネスに、母はひとり立ち上がる。『母の聖戦』公開へ
つい先ほどまで自分のそばにいたひとが、突然消えてしまった。それが血を分けた自分の子どもだった場合、悲哀はどれほどのものか。
身代金目的の誘拐が、メキシコの一部ではビジネスになっているという。犯罪組織が巧妙かつ、ずるがしこく、事を遂行し、警察に助けを求めたところでどうにもならない。裏でガッチリ手を結んでいるからだ。日本で身代金誘拐といえば、昭和の時代はさておき今では少なくとも銀行強盗と並ぶ「すたれた犯罪」である。が、メキシコの一部ではいまだにヴィヴィッドなのだという。2020年に826件の誘拐事件が報告されたそうだが、これは氷山の一角に違いない。
監督のテオドラ・アナ・ミハイは、ルーマニア...