執筆陣
台湾の町はずれの老舗理髪店とその主人を中心にした、心温まる物語『本日公休』
「こういう店、昔あったなあ。町内の集会場みたいになっていて、みんなが何とはなしに近況を交換して……」。
昭和に生まれ育った私には、なんだか親しみ深い世界がこの映画にはあった。しかも、物語に登場する理髪店には、それに加えて「猫」がいて、客を招いているのだ。猫映画として捉えることも可能だろう。
舞台となっているのは、台中にある老舗理髪店。店主のアールイは40年にわたって切り盛りしている文字通りのベテランで、店を訪れる老若男女に対応し、小気味よいハサミさばきをみせる。もっとファッショナブルでトレンディなバーバーショップはほかにもあろうが、アールイの名人芸を求めてやってくる顧客のあとはたたない。...