執筆陣
ひとりの頑固老人を通じて、戦後アメリカの姿が見えてくる。名優トム・ハンクスがベストセラーの映画化に臨む『オットーという男』
主人公の老人、オットーはとにかく頑固で堅物。眉間にシワを寄せてムスっとしていて、誰かと接せざるを得ないときは、その人物が去ると“idiot”(この愚か者め、というような意味だろうか)と言い放つ。妻に先立たれてから厭世観が増し、いついかにして死のうかと考えている。
この老人を演じるのは、名優トム・ハンクス。いっぽう、息子のトルーマン・ハンクスが演じる若き日のオットーは、ほがらかで、シャイで、頭脳明晰な好青年だ。なにが彼をこんなふうにしたのか? 年老いたオットーの心からは“かつてのオープン・マインドな姿”は完全に消え去ってしまったのか? 原作は、スウェーデンの作家フレドリック・バックマンの小...