執筆陣
学問の道にゴールなし。世代・立場を超えて育まれた心の交流を描く、必見の力作『不思議の国の数学者』
春風のように気持ちよく、心あたたまる作品に出会った。学びには限りがないこと、そしてその面白さに取りつかれたら人生に光がさすことを改めて教わったような気分だ。
お金持ちのエリート子息が通う名門校になんとか入学できたものの、他の生徒とは家柄も違うし、成績も冴えない。そんな男子高校生が、とあることをきっかけに、ニコリともしない夜間警備員と親しくなっていく。そして、いろんな過程を経て、数学を教わるようになる。警備員の数学の講座は、学校の先生のそれとはまったく違っていた。公式をただ暗記のために覚えさせるのではなく、より根本的な、私の解釈したところでは「数学の中にひそむ人間性をとことんまで提示する」...