執筆陣
「恐ろしくスリリングな人物描写」と海外マスコミも称賛。『セッション』のサウンド・クリエイターが実体験をもとに放つ重厚な一作『ノーヴィス』
音(foley)の迫力がすごい。音楽(music)の選択にも耳を奪われる。かなり前衛的なストリングスの音楽と、ブレンダ・リーやコニー・フランシスら“ケネディ大統領暗殺前/ビートルズのアメリカ侵略前”に大人気を集めたシンガーの歌う甘美なアメリカン・ポップ・ソングがほぼ交互に現れてはストーリーにひんやりした感触を加える。主人公の顔は苦痛に歪み、自分も他人もどちらも責める。しかも、すさまじく過酷な練習ぶりでもある。ケガをしたら血が出ることもあるし、怒りがこみあげれば顔に赤みを増すのは人間として当たり前かもしれない。が、この映画の色合いは、しいていえば「薄い蒼」である。
主人公のアレックスは、「...