執筆陣
1953年のパリ・モンマルトルで何が起こったか? 重鎮ドパルデューが、「メグレ警視」を快演した『メグレと若い女の死』
1953年のパリ・モンマルトルが舞台。抑えに抑えた色彩は、「これは本当に新作映画なのか?」と不思議になってしまうほどだ。登場する自動車、街並み、ファッションからも、その時代のそれを徹底的に追求した印象を受ける。登場人物のセリフ回しはゆるやか、タメが利いていて、動きのひとつひとつに余剰が感じられない。何十年前のどこかからすっかり消え去ってしまっていた“レス・イズ・モア”という概念をこの作品に思う。
「メグレ」という名前をきくだけでニヤリとするミステリー・ファンは、世界中にいることだろう。1929年から1972年にかけてジョルジュ・シムノンのミステリー小説で大活躍した男こそ「メグレ」警視だ。...