昭和の名作曲家、筒美京平の珠玉の未発表楽曲がLP化! アコースティックサウンドが完全アナログ制作で蘇る
筒美京平と聞いて懐かしいと思える人は、昭和歌謡の全盛期を過ごしてきた人だろう。そう、筒美京平はあの時代を彩った数々の名曲を送り出した昭和の名作曲家である。既に鬼籍に入って5年半が過ぎたが、「また逢う日まで」や「魅せられて」といった日本レコード大賞作、「ブルー・ライト・ヨコハマ」や「木綿のハンカチーフ」等、大ヒット曲は数知れず。
しかし、本作に収録された楽曲は、前述したような一般に知られる諸作とは少々趣きが異なる。この『TOKYO SUITETsutsumi Kyohei Presents for TOMA』に収録された主な楽曲は、筒美京平が生前プライベートで活動していたジャズバンドと、そこに参加していたサックス奏者/苫米地義久(TOMA)のために書き下ろされた未発表曲なのである。
本アルバムは、こうして形になるまでに紆余曲折があった。プロデューサーを請け負うこととなった元ビクター音楽産業(現、ビクターエンタテインメント)の川原伸司氏を頼って、かつての上司であった高田英男氏から連絡が入る。その内容は、筒美京平と製作した秘蔵音源を何とか形にしたいという苫米地氏の思いに協力してもらえないかというもの
希代のメロディーメイカーとはいえ、それは歌謡界での顔。ジャズバンドでのキーボード奏者としての筒美京平の顔など、ほぼ誰も知らない。そうしたこともあって、版権や発売に関して大手レコード会社は首を縦には振らなかった。川原氏や高田氏は手弁当に近い形で東奔西走し、最終的には高田氏と懇意のステレオサウンドが製作・販売面を請け負い、アナログレコードと配信でのリリースが決定したのはだいぶ日数が経ってからのことであった。
『TOKYO SUITE Tsutsumi Kyohei Presents for TOMA』
33 1/3回転 LP
(ステレオサウンド SSAR-114)¥8,800 税込
[SIDE A]
1.Tokyo Confidential(Tokyo D)*
作曲:筒美京平
2.Tokyo.exe(Tokyo B)*
作曲:筒美京平
3.Metro Tokyo
作曲:苫米地義久
4.NINGYO
作詞:NOKKO 作曲:筒美京平
[SIDE B]
1.Metropolitan Heartbeat(Tokyo E)*
作曲:筒美京平
2.Memories of Washington Heights(Tokyo C)*
作曲:筒美京平
3.One Night in Kasumicho
作曲:苫米地義久
4.Goodnight Princess
作曲:石塚まみ
5.Epilogue(Tokyo.exe)F.O.Ver.(Tokyo B)*
作曲:筒美京平
全編曲:石塚まみ
*印 苫米地義久が受け取った際、筒美京平自身が付けた仮作品名
●カッティングエンジニア:北村勝敏(ミキサーズラボ)
●サウンドプロデューサー、レコーディングエンジニア:高田英男(ミキサーズラボ)
●制作・発売:株式会社ステレオサウンド
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録音はキングレコードの関口台スタジオにて2025年10月下旬に実施された。録音/ミキシングエンジニアは高田氏で、Studer A827MCHアナログマルチテープレコーダーに16chヘッドアッセンブリーを装着した2インチ/16トラックのマルチトラックレコーダーが使用された。後の11月中旬、同所にて1/2インチ・2トラック/76cm/sのカッティングマスター製作を経て、東京・西麻布のワーナーミュージック・マスタリングにそれを持ち込み、同スタジオのエンジニア北村勝敏氏がラッカーマスターのカッティングを担当した。
高田氏がこだわったのは、全工程のアナログ制作。しかも『究極のアナログサウンド』を目指すことだ。高田氏が考えるそのサウンドの特質は、「中音域の音色感が深く安定する」「音の解像力がよい」「音の立ち上がりに優れてリアル感が増す」というもの。
そうしたセールスポイントを最大限に活かすべく、周辺機器にも気が配られた。
サックスは真空管マイクNeumann U47に、Tube-Tech製マイクプリアンプMP-1A、ピアノにはNeumann M149 Tubeを単一指向性で用い、さらにSchoeps MK 2H無指向性マイクを併用。フレットレスベースにはプリアンプAcoustic 370のライン出力を プリアンプJohn Hardy M-1に接続。ドラム/パーカッションは三研マイクロホンCU-51をメインマイクに使用、という具合だ。ミキシングコンソールはキング関口台第2スタジオのAMS Neve VR Legendを使い、ミックスマスターはStuder A820を用いて録音〜ミックス〜カッティングまで一貫したアナログ工程とした。なお、配信用にはPyramixやPro Toolsを使ってDSD11.2MHz、PCM192kHz/24ビットマスターが制作されていることを付記しておく。
収録された全9曲中、5曲が筒美京平のペンによる未発表曲。他の4曲は苫米地氏の他、筒美京平の生前からバンドのピアニストを務めた石塚まみ(編曲も兼務)氏のオリジナル、そして筒美京平作曲の「NINGYO」である。それでは、筒美京平作曲ナンバーを中心に印象に残った楽曲の演奏と音質を解説していこう。
A-1「Tokyo Confidential」は、アルトサックスの音の抜け、クリアーで繊細なピアノのタッチ等、楽器個々の音の鮮度が抜群に高い。とりわけ印象的なのが、ジャコ・パストリアスの音色を彷彿させるフレットレス・ベースの太くて芯の確かな、それでいて丸みのあるトーン。そのヴィブラートの微細なニュアンスも明瞭に伝わってくる。
A-2「Tokyo.exe」は、哀愁漂うサックスのトーンが印象的なナンバー。ピアノの旋律もメロディアスで、曲の半ばのベースソロのイマジネーション豊かなプレイが素晴らしい。また、終始Lチャンネルから聴こえるシンバル・レガートの鮮明な響きも鮮烈に耳に残る。
苫米地氏作曲のA-3「Metro Tokyo」は、ピアノとの濃密な掛け合いによるデュオ演奏。スピーカー間にバラード調のフレーズがくっきり克明に定位する。
サックスとピアノのデュオ演奏によるA-4「NINGYO」は、元レベッカのNOKKOの1994年のシングル曲。サックスのサブトーンが丁寧に描写され、やや大きめのピアノの音像がそれを後ろから包み込むように展開する、とても慈愛に満ちた曲だ。
B-1「Metropolitan Heartbeat」は、イントロのパーカッションのリズムが美しい。スネアドラムを叩くブラシのリアリティもオーディオファイルのハートをくすぐりそうで、規則正しくリズムを刻む鼓動の如しである。
B-2「Memories of Washington Heights」はややアップテンポなナンバーで、街を闊歩するようなリズミカルな曲調。メロディアスなアルトサックスの後ろで躍動的なピアノのフレーズが展開し、タッチの強弱や響きのトランジェントのよさがストレートに伝わってくる。
アルバム『TOKYO SUITE』は、筒美京平の置土産ではあるが、苫米地氏を始めとした演奏家たち、そして高田氏や川原氏といったスタッフが、それをしっかりと形にしたことで、こうしてここに確かな生命力を宿したのである。
▼タワーレコードでの購入リンク先
筒美京平の未発表ジャズ曲をレコード化|アナログにこだわったレコード制作の舞台裏『TOKYO SUITE(Tsutsumi Kyohei Presents for TOMA)』
www.youtube.com







