コンパクトなサイズのフルバランスド・ヘッドホンアンプとして高く評価されたイヤーメンのCH-AMPが、USB DAC機能を盛り込んだSignatureとなった。電源部を別体とした構成はそのままに、USB Type Cデジタル入力とBluetooth機能まで盛り込まれている。前世代がDAC単体モデルのTraduttoでUSB入力に対応していたが、本機では単独でUSB接続をサポートした格好だ。DACチップはESSテクノロジー社のES9038だ。
アルミニウム削り出しのコンパクトな筐体は、前作と同様で高剛性に加えて質感も優れる。もちろんヘッドホンアンプ部のフルバランス構成もそのまま継承している。鮮明なOLEDによるディスプレイは音量等の表示に加えてVUメーター表示も備える。また、アルミニウム削り出しのリモコンも付属する。

D/A Convertor / Control Amplifier / Headphone Amplifier
EARMEN
CH-AMP Signature
オープン価格 (実勢価格19万8,000円前後)
●型式 : DAC内蔵コントロールアンプ、ヘッドホンアンプ
●接続端子 : デジタル音声入力1系統(USB Type C)、アナログ音声入力2系統(RCA、4.4mmバランス)、アナログ音声出力1系統(RCA)、ヘッドホン出力2系統(6.35mm標準フォーン、4.4mmバランス)
●Bluetooth対応コーデック : SBC、AAC、aptX、aptX LL、aptX HD
●寸法/質量 : 本体・W150×H30×D150mm/550g、電源・W150×H60×D150mm/1,590g
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微小音を細やかに描くヘッドホン再生。スケールが雄大で質感も優れている
試聴はアステル&ケルンPD10を使用してUSB接続して聴いた。ヘッドホンはセンディーオーディオPeacockで、4.4mmバランス接続としている。フェドセーエフ指揮モスクワ放送響による『チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」』の第3楽章を聴くと、ややテンポ感の速い演奏を軽やかでキビキビと鳴らす。スピード感というか、緩急の差がよく出る再現で、速いテンポだけでなくゆったりとした曲調も優雅に鳴らす。
ドゥダメル指揮ウィーン・フィルによる『ムソルグスキー:組曲<展覧会の絵>』の「鶏の足の上に立つバーバ・ヤーガの小屋」は、厚みのある音でパワー感も十分あり、スリリングな演奏が楽しめた。解像感が高く、細身の感触ながらもひ弱にならず、しかも音が硬くならないのは好感触。微少音が細やかに描かれ、録音場所の天井の高さがわかるような空間感が見事だ。ダイナミックでありながらしなやかな感触の音色は聴き心地がよく、サイズを感じさせないスケールの雄大さがある。
米津玄師と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」などのポップス曲を聴いても、たくさんの音が重なったときの混濁感もなく、特定の高音域が耳に刺さるようなキツさがないなど、質の高さに感心させられた。声は実体感があり、センターに浮かび上がるような定位の良さもきちんとしている。声の質感やきめ細やかさもスムーズで、質感に優れていた。

筐体は電源/本体ともに15cm四方と非常に小型だ。本誌が縦25.7cm、横幅18.2cmだから、そのコンパクトさが想像できるだろう。入力端子はUSB Type Cによりデジタル接続が可能になったほか、RCAアンバランスと4.4mmバランスのアナログ入力2系統を備えている。電源部と本体を繋ぐ給電ケーブルは付属するが、電源部用の電源ケーブルは同梱していない
アナログ入力時の音も優秀。機能面も強化され、利便性が高まる
リンMAJIK DS+フィーオK9 AKMを使ってアナログ入力も試してみたが、再生機器の違いを別にすればデジタル入力と比べてS/N感の差も少なく、なかなか優秀。空間感や微少な音の再現はデジタル入力よりも豊かとさえ感じられる滑らかなもので、立体的なサウンドステージが楽しめた。
小さな筐体にUSB DAC機能を追加したというと、その弊害も気になるところだが、S/N感やディテイルが劣るようなこともなく、前作の音を受け継ぎながら、デジタル入力の追加でより情報量の豊かな音まで楽しめるのが良い。
また、高感度なイヤホンを使用する場合には、ゲインスイッチをオンにすると専用の低ノイズ仕様の回路が動作する。やや音量は下がるが、S/N感が向上し、音の微妙な感触や音場の見通しがより豊かになることが確認できたので、イヤホンやヘッドホンによって使い分けるといいだろう。豊富な入力に対応するほか、機能性の点でも大幅に強化されており、さらに便利に使えるようになっている。
結論
デスクトップ用途にジャストフィット。アクティブスピーカーとも相性良好だ
コンパクトなサイズはデスクトップでの使用に好適だし、プリアウトも備えるので、アンプ内蔵アクティブスピーカーと組み合わせるなど活用の幅も広い。卓上で質の高い音楽鑑賞を楽しみたいなら有力な候補となるだろう。
試聴に使った機器
●デジタルファイルプレーヤー : アステル&ケルンPD10、リンMAJIK DS
●D/Aコンバーター : フィーオK9 AKM
●ヘッドホン : センディーオーディオPeacock(4.4mmバランス接続)
試聴に使ったソフト
●デジタルファイル : 『チャイコフスキー:交響曲 第6番 「悲愴」(自筆譜による世界初録音)/ウラジーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送交響楽団』(176.4kHz/24ビット)、『ムソルグスキー:組曲<展覧会の絵>/グスターボ・ドゥダメル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』(96kHz/24ビット)、「JANE DOE/米津玄師、宇多田ヒカル」(48kHz/24ビット) 以上、Qobuzダウンロード音源で再生

D/A Convertor / Headphone Amplifier
L-AMP MK2
オープン価格 (実勢価格12万1,000円前後)
●型式 : DAC内蔵ポータブルヘッドホンアンプ
●接続端子 : デジタル音声入力1系統(USB Type C)、ヘッドホン端子2系統(3.5mmミニフォーン、4.4mmバランスド)
●寸法/質量 : W67×H17×D95mm/120g
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真空管採用のポータブルアンプ登場。高い駆動力とふくよかな感触が魅力
ESSテクノロジー社のSABRE DACを使用して、PCMなら384kHz/32ビット、DSDは5.6MHz(DoP接続にて)に対応するポータブルヘッドホンアンプ。アナログアンプ部にNOS(ニューオールドストック)ヴィンテージ真空管JAN6418を採用したことが特徴だ。フルバランス構成を採用しており、高い駆動力を備える。低音量時に低音の迫力を増すBASS-Xモードや高感度イヤホン向けのIEMモードなども備える。
ボディからは真空管が見え、電源を入れると温かみのある光が確認できるのがユニーク。音質的には真空管を使ったためか、柔らかくふくよかな感触がある。それでいて、S/N感は良く情報量も十分だ。駆動力は高く、負荷の大きいヘッドホンもしっかりと鳴らす実力がある。『展覧会の絵』のような曲も勢いやスピード感も十分。
衝撃によるノイズ対策や温度管理など動作の安定性にも配慮されており、外出先などでも安心して使える信頼性の高さもありがたい。(鳥居)
>本記事の掲載は『HiVi 2026年春号』

